一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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樹木の幹の成長について

質問者:   高校生   ピピ
登録番号5942   登録日:2024-07-04
いつも興味深く拝見しています。
樹木の幹についた傷が、年数が経過すると樹木の成長とともに上に移動したり、横幅が広がったりするのを見たことがあります。
そこで、質問なのですが、例えばある程度成長した樹木の幹に胸高ぐらいの高さに正方形の傷をつけた場合、年数がたつと
正方形の形や最初の位置からどのように変化するのでしょうか。
ご回答よろしくお願いいたします。

ピピ 様

みんなのひろば「植物Q&A」に質問を投稿くださり有り難うございます。大変回答が遅くなってしまい申し訳ありません。頭が夏休み状態でなかなか気の利いた回答を思いつかなかったのです。

・回答
「ある程度」成長した樹木、という点がミソだと思います。

森に入って、樹木がどの程度成長しているのかを調査する際には、胸の高さで直径を測ります(胸高直径)。同じ木を、毎年同じ季節の同じような天候条件で測定すると、樹木が太っていくのがよくわかります。樹木は、雨が降ると太く、晴れると細くなりますので、同じ季節の同じような天候で測定するというのが良いデータをとるコツです。

その際に毎年同じ木の同じ高さを測定するために、コの字型の針でビニルテープをとめます。ガンタッカーという「ホチキスの親方のような」やつを使います。こうして数年間測定をつづけるのですが、地面から1.3 mに設定したテープの高さは変化しません。毎年同じ高さで測定できます。というわけで正方形の上辺と底辺の位置は変わらないのではないでしょうか?よほど若い芽生などなら、上に移動することもあると思いますが「ある程度」成長した樹木ということですので・・・。一方、左辺と右辺の間の距離は樹木の成長につれて徐々に大きくなっていくはずです。ガンタッカーでテープを止める際に長年テープの位置を確認できるようにするためには、テープの片側だけにコの字型のホチキス針を縦に打ち込むのが秘訣です。テープの両端を止めたり、針を横に打ったりすると、樹木の太りに追いつかないでテープが落ちてしまいます。樹皮の盛り上がりにつれて針は樹皮に埋め込まれますが、丈夫なテープはきちんと判別できます。

余談ですが、街路樹などにテープが打ち付けてあることがありますね。調査している人が玄人か素人かはテープの止め方でわかります。
寺島 一郎(植物生理生態学が専門、森林の野外実習も担当していました)(JSPPサイエンスアドバイザー)
回答日:2024-08-05