質問者:
その他
ダダリアン
登録番号5952
登録日:2024-07-10
こんにちは。みんなのひろば
ダリアの2色咲きについて
現在、実家の庭に咲いているダリア(鉢植え)の中に、よく見てみたら1輪の花びらから黄色とオレンジ色の2色に分かれて咲いている花が見つかりました。他の鉢にもダリアを育てていますが、なぜかこのタイプは今まで見たこともなかったので不思議に思い、どういった種類なのか疑問に思ったため、こちらに投稿させて頂きました。
ネットで調べてみてもダリアの2色咲きに関して詳細な画像等がなく、こちらの『みんなのひろば』で以前投稿された“ 菊の花が2色になる理由”と同じキメラの可能性があるのか気になり今回問い合わせた次第です。どういった理由でこのようなダリアが咲いたのか教えて頂けると幸いです。写真も何枚か撮ってあるのでご希望でしたらご連絡下さい。
ダダリアン様
こんにちは。日本植物生理学会の植物Q&Aコーナーに寄せられたあなたのご質問「ダリアの2色咲きについて」にお答えします。
このダリアの2色咲きは、すでにご覧になった『みんなのひろば』Q&Aコーナー登録番号4274の“ 菊の花が2色になる理由”で扱われている2色のキクと同じようなキメラであろうと思われます。このダリアの場合は、株全部の花(頭花)ではなく、一つの花だけで見られた変化のようですので、トランスポゾンによるキメラの可能性が高いです。他の花はオレンジ色のようですので、この株の花は本来オレンジ色で、この一花の一部(頭花を構成する小花の一部)だけが黄色に変化したのでしょう。ダリアの花色をつくる主要な色素は赤色系を発色するアントシアニンと、黄色系のフラボンおよびカルコンです。アントシアニンによる赤色とフラボン・カルコンによる黄色が一緒になってオレンジ色になると思われますので、黄色くなった部分はアントシアニンによる赤色が無くなったのでしょう。アントシアニン生合成経路の中のどれかの遺伝子か、その遺伝子の発現を制御する遺伝子にトランスポゾンの挿入による変異が起こったものと思われます。
キメラやトランスポゾンの詳細については本Q&Aコーナー登録番号0465, 0941, 3835, 4108などをごらんください。
さて、この2色咲きのダリアにおける花色変化がトランスポゾンの働きによるものだとしても、その花色変化が一つの頭花の半分の小花だけで起きる仕組みが分からなければ、2色咲きのキメラになることを説明できません。これは難しい問題です。だいぶ調べましたが適切な資料を見つけることが出来ませんでした。私も同じような2色咲きのキクやシモツケ(赤白のキメラが頻繁に見られます)の花を見て常々疑問に思っていたことでもあります。似たような現象に花の咲き分けや斑入りがありますので(登録番号2186などをご覧ください)、これがヒントになりそうです。例えば、赤い花がトランスポゾンの働きで白い花になった植物で、トランスポゾンが抜けることで白地に赤いセクターができて斑入りになった花が咲くことがあります。これは、花が形成される初期に花原基の一つの細胞がトランスポゾンが抜けることで赤い細胞に変わったとすると、花の生長の過程でその細胞も分裂を繰り返して増殖してゆきますが、それらの細胞は色素を合成出来るので、その部分が赤いセクターになると説明されています。ダリアの2色咲きも同じように説明できるかもしれません。ダリアを含むキク科の花は頭状花序で、花床の上にたくさんの小花が規則正しい順序で形成されていって形作られます。この発生過程の初期の段階で、花床の一部の細胞で花色が黄色になる変異が起こり、この変異した細胞が増殖した部分で形成される小花が黄色くなったのでしょう。ただ、そうであったとしても、変異した細胞が増殖しながら花床の中で一定のパターン(頭花を二分する形)を形成してゆく過程が分かりません。
締めくくりの場面が分かりませんという内容になってしまいましたが、取り敢えず現状での回答とさせて頂きます。
こんにちは。日本植物生理学会の植物Q&Aコーナーに寄せられたあなたのご質問「ダリアの2色咲きについて」にお答えします。
このダリアの2色咲きは、すでにご覧になった『みんなのひろば』Q&Aコーナー登録番号4274の“ 菊の花が2色になる理由”で扱われている2色のキクと同じようなキメラであろうと思われます。このダリアの場合は、株全部の花(頭花)ではなく、一つの花だけで見られた変化のようですので、トランスポゾンによるキメラの可能性が高いです。他の花はオレンジ色のようですので、この株の花は本来オレンジ色で、この一花の一部(頭花を構成する小花の一部)だけが黄色に変化したのでしょう。ダリアの花色をつくる主要な色素は赤色系を発色するアントシアニンと、黄色系のフラボンおよびカルコンです。アントシアニンによる赤色とフラボン・カルコンによる黄色が一緒になってオレンジ色になると思われますので、黄色くなった部分はアントシアニンによる赤色が無くなったのでしょう。アントシアニン生合成経路の中のどれかの遺伝子か、その遺伝子の発現を制御する遺伝子にトランスポゾンの挿入による変異が起こったものと思われます。
キメラやトランスポゾンの詳細については本Q&Aコーナー登録番号0465, 0941, 3835, 4108などをごらんください。
さて、この2色咲きのダリアにおける花色変化がトランスポゾンの働きによるものだとしても、その花色変化が一つの頭花の半分の小花だけで起きる仕組みが分からなければ、2色咲きのキメラになることを説明できません。これは難しい問題です。だいぶ調べましたが適切な資料を見つけることが出来ませんでした。私も同じような2色咲きのキクやシモツケ(赤白のキメラが頻繁に見られます)の花を見て常々疑問に思っていたことでもあります。似たような現象に花の咲き分けや斑入りがありますので(登録番号2186などをご覧ください)、これがヒントになりそうです。例えば、赤い花がトランスポゾンの働きで白い花になった植物で、トランスポゾンが抜けることで白地に赤いセクターができて斑入りになった花が咲くことがあります。これは、花が形成される初期に花原基の一つの細胞がトランスポゾンが抜けることで赤い細胞に変わったとすると、花の生長の過程でその細胞も分裂を繰り返して増殖してゆきますが、それらの細胞は色素を合成出来るので、その部分が赤いセクターになると説明されています。ダリアの2色咲きも同じように説明できるかもしれません。ダリアを含むキク科の花は頭状花序で、花床の上にたくさんの小花が規則正しい順序で形成されていって形作られます。この発生過程の初期の段階で、花床の一部の細胞で花色が黄色になる変異が起こり、この変異した細胞が増殖した部分で形成される小花が黄色くなったのでしょう。ただ、そうであったとしても、変異した細胞が増殖しながら花床の中で一定のパターン(頭花を二分する形)を形成してゆく過程が分かりません。
締めくくりの場面が分かりませんという内容になってしまいましたが、取り敢えず現状での回答とさせて頂きます。
竹能 清俊(JSPPサイエンスアドバイザー)
回答日:2024-07-25