質問者:
小学生
まさはる
登録番号5968
登録日:2024-07-25
母が代筆しております。みんなのひろば
光合成で二酸化炭素が減ると気温が下がるのか。
四年生の子供が自由研究をしています。二酸化炭素が温暖化の原因なら、光合成により二酸化炭素を減らすことが出来れば気温が下がるのというのは本当か実験で確かめたいそうです。
約、10cm✖️20cm✖️30✖️cmほどの蓋つきの容器に、一つは土とパセリの株を3つ植え、蓋をして日当たりの良い窓辺に置きます。もう一つは土のみ入れ、同じ条件で置きます。蓋を開けなくても温度計が見えるように設置して、朝昼晩3回気温を計り比べています。
結果はさほど変わらず、予想と違うそうです。光合成により二酸化炭素を減らして気温を下げることを立証するには、どのようにしたら良いのか、また、この実験では変化はないという実験結果の理由が知りたいそうです。
お力添えをお願い致します。
まさはる 様
二酸化炭素による温室効果と光合成による二酸化炭素の吸収を結びつけ、それを実験で確かめようという発想や、そのための実験を色々と工夫しながら進めていることなど、大変感銘を受けました。特に、パセリありとなしの条件を比較している点など、実験の組み立て方も大変よく考えられていると思います。
さて、それではなぜ予想通りの効果がでないのでしょうか?少し長くなりますが、読んでもらえるとうれしいです。分からない言葉などがあったら、お母さんに説明してもらってください。
そもそも、地球規模の現象となると、たとえその原因や仕組みがわかっていても、机の上で再現するのはとてもむずかしいことが多いです。例えば台風や地震を箱の中で再現できれば面白いと思うのですが、どうしたら良いかわかりません。温暖化についても同じようなことが言えます。
二酸化炭素による地球温暖化についてもう少しくわしく説明します。現在の二酸化炭素の濃度(0.04%)が2倍になると平均気温は2℃ほど上ると言われています。しかしながらこの予想は、大地、大気、その外にある真空の宇宙空間の間のエネルギー(赤外線)のやりとりについて複雑な計算をして求めたもので、実験室の中で調べたわけではありません(くわしくは地球環境研究センターのホームページなどを参照ください)。このような大きなスケールで起こる複雑な現象を小さな容器で再現することはとてもむずかしいのです。
さて、二酸化炭素が温室効果ガスと言われる理由は、赤外線を吸収するからです。地球の温暖化はともかく、二酸化炭素のこの性質を調べられないでしょうか。例えば純度100%の二酸化炭素を詰めたペットボトルに赤外線を当てて温度を測るような実験をインターネットで見つけました。しかし、このような実験で観察される温度差はせいぜい数℃程度で、0.04%の二酸化炭素が減少したことを、容器内の温度の差として測定するのはとても無理だと思われます。
密封容器で光合成をさせることにも問題があります。もし箱が完全に密封されていたとすると、はじめは光合成により二酸化炭素が減少するでしょうが、やがて容器内が二酸化炭素不足になり植物に大きなストレスがかかります。このような状態では、光合成が停止するだけでなく、呼吸が高まり二酸化炭素の濃度が思うように下がらなくなるかもしれません。
以上説明したように、まさはる君の実験は、目の付け所はすばらしいですが、目的の結果を得るのはとてもむずかしいと思います。もし植物と環境の関係に興味があるなら、もう少し別のテーマを考えてはどうでしょうか。例えば「ヒートアイランド現象」という言葉を聞いたことがないでしょうか。これは、都市部で緑が失われアスファルトやコンクリートで地面がおおわれてしまうことで気温が上がってしまう現象です(詳しくはインターネットなどで調べてみてください)。
さて、この現象についてどのような自由研究ができるでしょうか。一つは、身近な場所で、朝、昼、晩に気温を測ってみることです。森、公園、草原、駐車場、エアコンの室外機の近く、など色々な場所で結果を比較してみると面白いと思います。ここでひとつ注意があります。それは気温の測り方です。教科書にあるように、1)温度計に直射日光をあてない、2)風通しをよくする、3)高さは1.2~1.5m、というような注意事項を守る必要があります。なお、気温を測るときは、温度計の値が安定するまで待つ(普通の温度計では10分以上)ことも忘れないでください。
実は直射日光が当たるような場所で気温を正確に測るのは意外とむずかしいです。そこで、「強制通風式」の気温計を自作してみると面白いかもしれません。例えばインターネットで「通風式温度計、自作」などのキーワードで検索をすると色々な例がでてきます。これらはいわばプロ仕様なので、そのまま小学生が自作するのは無理ですが、携帯用ファンなどを利用して段ボールなどで似たものが作ってみてはどうでしょうか。実際、簡易通風気温計を自作して自宅のまわりで気温を比べてみたところ、場所によって1~2℃くらいの差がありました。
ヒートアイランド現象は、コンクリートやアスファルトが熱くなることで起こります。アスファルトなどの温度を正確に測るには「放射温度計」というものを使うのが一番よいのですが(比較的安価で小型のもので十分です)、普通の温度計でもおおよその様子はわかります。もしかすると、気温を測るよりやさしいかもしれません。
地面やコンクリートの表面温度を普通の温度計で測る方法を説明します。調べたい場所になるべく密着するように温度計を置き、日光で温度計自体が温まることを防ぐためアルミフォイルなどでおおいます。気温の場合と同様、温度が安定するのを待って(通常10分以上)温度を読み取ってください。また、表面温度は日の当たり方が変わるとすぐに上下しますので、測定中、条件がなるべく一定になるよう気をつけてください。
もう一つ、放射温度計が使えるならば、蒸散による葉の温度低下をかなり正確に測ることができます。直射日光が当たっている葉の表面と近くにある石やコンクリートなどの表面温度を比べると、植物がもつ体を冷やす効果を実感できると思います。種類の異なる植物や様々な光条件で結果を比較すると面白いでしょう。
さて、ヒートアイランド現象に興味をもってもらえたでしょうか?植物と環境の関わりということに限っても、この他にまだ面白いテーマが色々とあるかもしれません。ぜひ、良いテーマをみつけて挑戦してみてください。
二酸化炭素による温室効果と光合成による二酸化炭素の吸収を結びつけ、それを実験で確かめようという発想や、そのための実験を色々と工夫しながら進めていることなど、大変感銘を受けました。特に、パセリありとなしの条件を比較している点など、実験の組み立て方も大変よく考えられていると思います。
さて、それではなぜ予想通りの効果がでないのでしょうか?少し長くなりますが、読んでもらえるとうれしいです。分からない言葉などがあったら、お母さんに説明してもらってください。
そもそも、地球規模の現象となると、たとえその原因や仕組みがわかっていても、机の上で再現するのはとてもむずかしいことが多いです。例えば台風や地震を箱の中で再現できれば面白いと思うのですが、どうしたら良いかわかりません。温暖化についても同じようなことが言えます。
二酸化炭素による地球温暖化についてもう少しくわしく説明します。現在の二酸化炭素の濃度(0.04%)が2倍になると平均気温は2℃ほど上ると言われています。しかしながらこの予想は、大地、大気、その外にある真空の宇宙空間の間のエネルギー(赤外線)のやりとりについて複雑な計算をして求めたもので、実験室の中で調べたわけではありません(くわしくは地球環境研究センターのホームページなどを参照ください)。このような大きなスケールで起こる複雑な現象を小さな容器で再現することはとてもむずかしいのです。
さて、二酸化炭素が温室効果ガスと言われる理由は、赤外線を吸収するからです。地球の温暖化はともかく、二酸化炭素のこの性質を調べられないでしょうか。例えば純度100%の二酸化炭素を詰めたペットボトルに赤外線を当てて温度を測るような実験をインターネットで見つけました。しかし、このような実験で観察される温度差はせいぜい数℃程度で、0.04%の二酸化炭素が減少したことを、容器内の温度の差として測定するのはとても無理だと思われます。
密封容器で光合成をさせることにも問題があります。もし箱が完全に密封されていたとすると、はじめは光合成により二酸化炭素が減少するでしょうが、やがて容器内が二酸化炭素不足になり植物に大きなストレスがかかります。このような状態では、光合成が停止するだけでなく、呼吸が高まり二酸化炭素の濃度が思うように下がらなくなるかもしれません。
以上説明したように、まさはる君の実験は、目の付け所はすばらしいですが、目的の結果を得るのはとてもむずかしいと思います。もし植物と環境の関係に興味があるなら、もう少し別のテーマを考えてはどうでしょうか。例えば「ヒートアイランド現象」という言葉を聞いたことがないでしょうか。これは、都市部で緑が失われアスファルトやコンクリートで地面がおおわれてしまうことで気温が上がってしまう現象です(詳しくはインターネットなどで調べてみてください)。
さて、この現象についてどのような自由研究ができるでしょうか。一つは、身近な場所で、朝、昼、晩に気温を測ってみることです。森、公園、草原、駐車場、エアコンの室外機の近く、など色々な場所で結果を比較してみると面白いと思います。ここでひとつ注意があります。それは気温の測り方です。教科書にあるように、1)温度計に直射日光をあてない、2)風通しをよくする、3)高さは1.2~1.5m、というような注意事項を守る必要があります。なお、気温を測るときは、温度計の値が安定するまで待つ(普通の温度計では10分以上)ことも忘れないでください。
実は直射日光が当たるような場所で気温を正確に測るのは意外とむずかしいです。そこで、「強制通風式」の気温計を自作してみると面白いかもしれません。例えばインターネットで「通風式温度計、自作」などのキーワードで検索をすると色々な例がでてきます。これらはいわばプロ仕様なので、そのまま小学生が自作するのは無理ですが、携帯用ファンなどを利用して段ボールなどで似たものが作ってみてはどうでしょうか。実際、簡易通風気温計を自作して自宅のまわりで気温を比べてみたところ、場所によって1~2℃くらいの差がありました。
ヒートアイランド現象は、コンクリートやアスファルトが熱くなることで起こります。アスファルトなどの温度を正確に測るには「放射温度計」というものを使うのが一番よいのですが(比較的安価で小型のもので十分です)、普通の温度計でもおおよその様子はわかります。もしかすると、気温を測るよりやさしいかもしれません。
地面やコンクリートの表面温度を普通の温度計で測る方法を説明します。調べたい場所になるべく密着するように温度計を置き、日光で温度計自体が温まることを防ぐためアルミフォイルなどでおおいます。気温の場合と同様、温度が安定するのを待って(通常10分以上)温度を読み取ってください。また、表面温度は日の当たり方が変わるとすぐに上下しますので、測定中、条件がなるべく一定になるよう気をつけてください。
もう一つ、放射温度計が使えるならば、蒸散による葉の温度低下をかなり正確に測ることができます。直射日光が当たっている葉の表面と近くにある石やコンクリートなどの表面温度を比べると、植物がもつ体を冷やす効果を実感できると思います。種類の異なる植物や様々な光条件で結果を比較すると面白いでしょう。
さて、ヒートアイランド現象に興味をもってもらえたでしょうか?植物と環境の関わりということに限っても、この他にまだ面白いテーマが色々とあるかもしれません。ぜひ、良いテーマをみつけて挑戦してみてください。
長谷 あきら(JSPPサイエンスアドバイザー)
回答日:2024-08-01