一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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みつば【光好性種子】の発芽について

質問者:   会社員   ツバキ
登録番号5978   登録日:2024-07-29
みつばの発芽について、
みつばの種子は種子に発芽抑制物質が存在しており、発芽しにくいので、一度あく抜き工程【流水で1日浸漬後】1日程日の光に当てて風乾燥させ、0~5℃の冷蔵庫にいれてから播種を行います。
播種を行ってからは、暗黒状態で2~3日程で発芽するのですが、みつばは光発芽種子なのになぜ暗闇で発芽するのだろうかと疑問に思いました。

勝手な解釈なのですが、あく抜き工程を経て日の光に当てて乾燥させているので、その際に赤色光が当たり、胚にフィトクロムが蓄積しジベレリンが合成され休眠が打破されているのかと思ったのですが、この考え方は正しいでしょうか?
ツバキ 様

植物Q&Aに質問をお寄せいただき、ありがとうございます。回答が遅れて申し訳ありません。

本件、ツバキさんの解釈で間違っていないと思われます。一般に、光発芽種子のフィトクロムは吸水により速やかに光応答性を獲得すると言われており、あく抜き行程や乾燥行程の間にPfr型への変換がおきたと想像されます。この間に発芽に十分な量のジベレリンが蓄積できたかどうかはやや微妙ですが、種子が湿った状態で1日以上明所に置かれていたとすれば、おそらく十分だったと思われます。

フィトクロムと光発芽の関係については、本コーナーの過去の回答の中にも参考になるものが色々とありますので、そちらにも目を通されると参考になるかと思います(登録番号0847, 1183, 1912, 2022など)。

さて、登録番号1183の回答にありますように、種子が登熟する過程でできたPfrが吸水時まである程度残り発芽を促進する場合があるとされています。そのことを考えると、ツバキさんの場合も、あくぬき/乾燥中にできたPfrが播種時の再吸水によって活動を再開し、その後にジベレリン合成を誘導した、という第二の可能性も考えられます。

おそらく第一の可能性が高いと考えられますが、どちらの可能性が正しいかは実験的に調べることができます。播種直前に遠赤色光を照射し、それが発芽を阻害するかどうかを確かめます。もし効果が無いようであれば、播種の時点でPfr型のフィトクロムがもはや必要ないことになり、第一の可能性が高いことになります。一方、阻害効果が出た場合は、播種時に存在していたPfrが発芽を誘導したことになるので、第二の可能性が高いことを意味します。
長谷 あきら(JSPPサイエンスアドバイザー)
回答日:2024-08-08