質問者:
一般
パインロック
登録番号5980
登録日:2024-08-02
Googleで初めて知ったことですが、さかき(神道でよく飾られる)には毒性は有りませんが、お仏壇のほうの「しきび(しきみ)」にはもともと毒性があり、小さな子供たちが誤って口にしたりしないような注意が必要とのこと。みんなのひろば
しきびの毒抜き品種改良は可能?
果物などではよく、種無しのブドウやスイカといった、昭和生まれからすれば、何だか便利になったなぁという変化も有るわけです。
先祖供養に、真面目なご家族で、万が一にもそのような、しきびの毒性による事故が起こらない為にも、スーパーで見かける、しきびなどからは、将来的には、毒なしのものになったりしないものでしょうか?
(植物には素人で、思いつきで、質問してみていることをお許し下さい。しかし、詳しい方々が、関心をもって頂ければ、なんらかの改善があるやもしれません。…と期待しています。)
パインロック 様
日本植物生理学会、みんなのひろば、植物Q&Aのコーナーへご質問いただきありがとうございました。ご質問への回答は、植物が持つ多様な代謝物の合成や機能などの研究がご専門の京都大学 生存圏研究所 名誉教授 矢崎一史先生にお願いいたしました。
【矢崎先生からの回答】
シキミの名は「悪しき実」から付けられたという説もあり、毒性があることはよく知られていて、代表的な有毒成分はアニサチンです。神経毒と消化器に対する毒性を持っていますので、中毒するとめまいや嘔吐などを引き起こし、死亡例すらあります。
毒を含まない品種改良を考えるとするならば、交配などによる従来の育種と、ゲノム編集などを使った先端的な手法が考えられます。シキミの仲間は世界に40種ほどが知られ、有名な近縁植物にトウシキミ(ダイウイキョウ、八角、スターアニス)がありますが、こちらは中華の食材でもよく使うスパイスで、有毒成分をほとんど含んでいません。従来育種を考えるのであれば、ダイウイキョウのような毒性を持たない近縁種との交配が可能かをまず調べることから始める必要があります。なお、この2種の植物は星の形をした果実が互いに似ているため、間違えて中毒事件となった例が国内外で数多く報告されています。
一方、ゲノム編集などの技術を応用するならば、まず毒成分のアニサチンがどのようにシキミの細胞中で作られるのか、その生合成経路を明らかにする必要があります。アニサチンはセスキテルペン類ですので、FPPという前駆体から何ステップかを経て作られます。具体的にどの遺伝子/酵素によって作られるかを明らかにできれば、その遺伝子のどれかをゲノム編集で壊してやることで、毒を持たないシキミはできるかもしれません。
うまくいくかどうかは、やってみないと分からない部分はありますが、どちらにしても大変に時間のかかる研究開発になることでしょう。
===
以上、ご参考になりましたでしょうか。1つの期待する品種を作り出すことは大変ですね。
本コーナーでは植物のふしぎに関する質問を受け付けております。また不思議に思われたことがありましたらQ&Aコーナーをお訪ねください。
日本植物生理学会、みんなのひろば、植物Q&Aのコーナーへご質問いただきありがとうございました。ご質問への回答は、植物が持つ多様な代謝物の合成や機能などの研究がご専門の京都大学 生存圏研究所 名誉教授 矢崎一史先生にお願いいたしました。
【矢崎先生からの回答】
シキミの名は「悪しき実」から付けられたという説もあり、毒性があることはよく知られていて、代表的な有毒成分はアニサチンです。神経毒と消化器に対する毒性を持っていますので、中毒するとめまいや嘔吐などを引き起こし、死亡例すらあります。
毒を含まない品種改良を考えるとするならば、交配などによる従来の育種と、ゲノム編集などを使った先端的な手法が考えられます。シキミの仲間は世界に40種ほどが知られ、有名な近縁植物にトウシキミ(ダイウイキョウ、八角、スターアニス)がありますが、こちらは中華の食材でもよく使うスパイスで、有毒成分をほとんど含んでいません。従来育種を考えるのであれば、ダイウイキョウのような毒性を持たない近縁種との交配が可能かをまず調べることから始める必要があります。なお、この2種の植物は星の形をした果実が互いに似ているため、間違えて中毒事件となった例が国内外で数多く報告されています。
一方、ゲノム編集などの技術を応用するならば、まず毒成分のアニサチンがどのようにシキミの細胞中で作られるのか、その生合成経路を明らかにする必要があります。アニサチンはセスキテルペン類ですので、FPPという前駆体から何ステップかを経て作られます。具体的にどの遺伝子/酵素によって作られるかを明らかにできれば、その遺伝子のどれかをゲノム編集で壊してやることで、毒を持たないシキミはできるかもしれません。
うまくいくかどうかは、やってみないと分からない部分はありますが、どちらにしても大変に時間のかかる研究開発になることでしょう。
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以上、ご参考になりましたでしょうか。1つの期待する品種を作り出すことは大変ですね。
本コーナーでは植物のふしぎに関する質問を受け付けております。また不思議に思われたことがありましたらQ&Aコーナーをお訪ねください。
矢崎 一史(京都大学 生存圏研究所)
JSPP広報委員長
藤田 知道
回答日:2024-08-17
藤田 知道
回答日:2024-08-17