一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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かいわれ大根の育ち方

質問者:   小学生   makoto
登録番号5982   登録日:2024-08-04
こんにちは。
夏休みの自由研究で、かいわれ大根の種子の育ち方を調べました。
具体的には、重曹、キッチン泡ハイター、液体肥料(窒素:リン酸:カリ=6:10:5)など、身の回りの物の重さを変えて水に溶かし、濃度10%、5%、2.5%、1%の水溶液を作りました。キッチンペーパーを敷いたフードパックに、キッチンペーパーが十分に湿るように水溶液を20g入れ、種子を20粒、等間隔にまきました。5日間、毎日観察し、発芽数・くきや根の育ち方を記録し、水だけで育てたものと比べました。
その結果、
・重曹で育てた種子は黒く変色してしまう理由。
・重曹は全く発芽しないのに、同じアルカリ性のキッチンハイターは水だけで育てたものよりも発芽数が多い理由。
・キッチンハイターは、何度実験してもくきがまっすぐに伸びずに曲がったまま育つ理由。
・液体肥料2.5%で育てたものは、くきや葉は正常に育つが根はほぼない理由(2.5%より濃いものは発芽せず、1%のものは根も正常に育ちました)。
など、調べてもよくわからない点が出てきました。
これらの点には何か原因があるのでしょうか。
makoto 様

ご質問、有り難うございました。
身の回りにあるものとして、重曹、キッチン泡ハイター、液体肥料を使って、かいわれ大根の発芽に対する影響を見たのですね。良く観察されたと思います。

さて、種子の発芽には、基本的には水だけ(温度もですが)が必要で、発芽後しばらくの成長を支える栄養などの成分は十分にあります。重曹はご承知のように、水に溶かすとアルカリ性になります。濃度が最低でも1%ということで、実験に使うには高すぎたかもしれません。黒くなって発芽しなかったのは、重曹に含まれるナトリウム濃度が高すぎて、ストレスに強くなる黒い物質(ポリフェノールなど)が蓄積した結果だと思われます。海水のナトリウム濃度は3.1-3.8%と言われていますので、海水に近い濃度を与えてしまったということになります。キッチンハイターは、難しいと思いますが、次亜塩素酸ナトリウムという細菌やウイルスを除去する物質が含まれています。発芽できたのは、泡ハイターだったので、結果的に薄めな成分を与えたのかもしれません。曲がった茎(正確には胚軸だと思われます)の原因は、泡を作るための石けん成分が入っていたため、かいわれ大根の細胞の表面にある膜(脂肪でできています)がダメージを受けていたのだと思われます。液体肥料も、全体的に濃度が濃くて、2.5%以上では発芽出来なかったと思われます。また、発芽しても根が発達しなかったのは、すでに根の周りに栄養が十分にあり、根を伸ばして薄い栄養を吸収する必要がないからだと思われます。

 この発表をするときは、まいた20粒の種子のなかで、何粒発芽したとか、何個体が水と同じくらいに成長したとか、詳しい記録も一緒に書いた方がいいと思います。それから、この回答を参考にされるときは、植物Q&Aの内容を明記するようにお願い致します。今後も、植物の観察を続けて下さい。
山谷 知行(JSPPサイエンスアドバイザー)
回答日:2024-08-05