一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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発芽大豆について

質問者:   その他   Park
登録番号0599   登録日:2006-04-21
はじめまして。
発芽大豆で豆腐を作る実験をしています。

一般的に大豆を発芽させれば遊離アミノ酸、GABA、ビタミンC などの含量が増加して味がよくなることで分かっています。
ところで、芽が少し出るように発芽させて豆腐を作れば硬さが非発芽に比べて低くなることを分かります。
もし、タンパク質がアミノ酸に変化されてタンパク質の含量が減少して豆腐の硬さが低下されることはないですか。

私の考えではタンパク質がアミノ酸で分解になっても全体タンパク質の含量は変化がないことと考えになりますが、 (何故ならばアミノ酸も窒素化合物なので) ご助言をお願いします。
Park さん:

「芽が少し出るように発芽」させたダイズを原料として作る豆腐の品質についての御質問と思います。ご存じのように豆腐はダイズタンパク質を「にがり」などタンパク質凝固剤で凝固させ型箱などで形を整えた食品です。主成分はダイズタンパク質(グリシニンとコングリシニンと呼ばれるグロブリン)ですが凝固過程で可溶性成分も巻き込みますのでいろいろな可溶性栄養成分も含まれ豆腐独特の味がでてきます。豆腐品質は味、舌触りのほか「固さ」(豆腐破断力)が重要な要素になっています。一定濃度の凝固剤(豆腐製造では「にがり」以外にその成分である硫酸カルシウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウムなどが使われ、0.25〜0.3%)を使うと豆腐の固さは豆乳のタンパク質濃度の高い方がより固くなることが分かっています。
発芽ダイズにはいろいろな代謝産物が含まれているので栄養価値が高くなると言われていますが、発芽過程で子葉のタンパク質は胚(植物本体)成長の栄養源になりますから減少します。ダイズの場合、吸水開始2日目頃(温度により違いますが)にはまず根が出始めます(この時点を発芽と呼んでいます)。子葉のタンパク質量は4日目までは余り変化しませんが、4日目以降は急激に減少し12日から13日後にはほぼ完全に子葉内貯蔵タンパク質はなくなります。豆腐原料に使う「発芽ダイズ」が「芽が少し出るように発芽」した頃(吸水開始4日以内)ではタンパク質含量は豆腐の固さに影響するほど変化しているとは考えられません。しかし、タンパク質凝固にはフィチン酸などタンパク質濃度以外の成分も影響します。種子発芽は劇的な代謝変化がある過程ですからいろいろな成分が新たに合成され、これらが凝固過程に抑制的であれば柔らかい固さの豆腐になってしまいます。フィチン酸は抑制的に働きますのでこれが多くなれば固さの充分でない豆腐になります。
このように豆腐の品質(味、栄養価、固さ、舌触りなど)は製造方法(豆腐の種類による違い)、原料ダイズの品種(タンパク質含量、グリシニン/コングリシニン量比、ミネラル含量などの違い)凝固剤の濃度/種類などによって微妙に影響されることが分かっていますし、現在なお豆腐加工適正に関係するダイズ種子成分の特性についての研究が活発に行われています。したがってそれぞれの目的に応じて独自に研究、調査することが必要と思います。
JSPPサイエンスアドバイザー
今関 英雅
回答日:2006-04-25
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