質問者:
中学生
るんるん
登録番号5994
登録日:2024-08-16
私は現在中学2年生で植物の勉強をしています。そこで行った実験で植物の気孔がどこに多くあるのかを調べるために、葉の表にワセリンを塗った植物、葉の裏にワセリンを塗った植物、葉の表裏どちらともワセリンを塗った植物(茎は塗っていない)、葉をとって茎にもワセリンを塗った植物、の計4つの植物を用意して、食紅で染めた赤い水に茎を入れ水の減り具合を見るという対照実験を行いました。その実験自体はうまく結果が出た(葉の表にワセリンを塗った植物が一番水が少なくなった)のですが、その植物たちを食紅で染めた水に浸したまま2週間ほど放置していたら、葉をとって茎にもワセリンを塗ったものの水が透明になり、食紅だけが植物内に取り込まれ、水は全く減っていませんでした。さらに2週間ほど放置していると、気孔が塞がれた順に水が透明になっていきました。ここでなぜこの現象が起こったのかが知りたく、質問させていただきました。みんなのひろば
植物は外部から色素を何らかの理由で摂取するか
私がネットなどで調べたことをもとに立てた仮説としては、気孔が塞がれたため空気の出入りがなくなり、光合成ができなくなった、つまりクロロフィルが不活性になったため、葉を外部の光から守ろうとして、水から吸収した食紅を葉の細胞内に取り込んだと考えました。しかしながら、使用した食紅は赤色102号であり、植物が生成するアントシアンは含まれていないため、植物はどういう条件下で外部から色素を摂取するのか知りたいです。(食紅以外の実験をしていないので、色素、栄養分以外の成分も摂取するのかは分かりません)
ネットから調べた拙い知識で仮説を立てているので大きな間違いがあるかもしれません。回答よろしくお願いします。
るんるん君
Q&Aコーナーへようこそ。歓迎いたします。
植物から蒸発する(蒸散と言います)水分を茎の切り口から吸い上げられる水の量で計り、気孔の数の多さを(分布密度)を推定しようとしたのですね。発想は悪くありませんが。実験の組み立て方をもう一寸考えた方がよかったですね。あるいは質問にはくわしく書いてないのかもしれませんが。
1.まず、使用した植物は何ですか。植物の種類によっては葉の裏表で分布にあまり差がないものや、面の方が裏より多いものもあります。普通は裏面の方が多い。
2.使用した植物はどれも同じ成長条件のものでしたか。葉の数は同じで、葉面積がほぼ同じでしたか。
3.実験をした場所はどんなところでしたか。温度、光の条件(気候の開閉に影響します)、空気の流れは? 気孔の周辺の空気の流れがスムースなほど蒸散もスムースです。
4.対照実験をしたと書いてありますが、どれが対照となっているのですか。この実験の場合対照はワセリンを塗らないままの材料だとおもいます。このままの実験なら「比較実験」と言った方がいいかもしれません。
5.葉をとって茎にワセリンを塗ったとありますが、これは茎の気孔のことを念頭においたのでしょうが、葉を全部とるということは実験材料を茎だけにするということで、他の葉のある材料との比較にはふさわしくありません。正しくは葉の裏表、茎も全部ワセリンを塗ったものが必要です。
そこで、もう学んでいるかもしれませんが、次に、水が茎の切り口からどの様にして吸い上げられて気孔から蒸散するのかという事を簡単に説明しておきます。植物体の中の水(水に溶けているいろいろな物資も)の通路は道管/仮道管と呼ばれる管です。道管は植物の種類によっても違いますが、長さは0.14mm〜1.25mmの死んだ細胞が縦に繋がった管で、直径は10μm〜500μm (1μmは1mmの1/1000)の毛細管です。毛細管の先を水に入れると、水が管の中を上昇します(毛細管現象)。管が細いほど高く昇りますが、限度があります、植物の道管は気孔まで繋がっていて、水で満たされています。気候が開いて水分が蒸発すると、そこに負の圧力が生じ、水が管の下部から引っ張り上げられます。ストローで水を吸う時と同じ原理です。つまり、道管の中の水の移動は物理的な現象です。水の中に溶けている物資は植物体が生命活動をするのに必要なものは道管に接する他の生きた細胞へと移されます。しかし、不要なものや、分子量が大きいものなどは道管内に沈着してしまうことがあります。るんるん君が使った食紅(赤色102号)は化学合成された天然でない物質です。102号はニューコクシンというひかくてき大きな分子(分子量604.48)の化合物です。ちなみにこの物質は日本では食用に広く使われていますが、欧米では使用が禁止されています。
さて、るんる君の疑問に答えましょう。植物が地中で根から水やいろいろな物質を道管内に吸収するのとちがって、茎の切り口から水を吸わせるのは上で説明した様に物理的な現象です。
したがって、色素(あるいは他の溶けている物質も)はただ水と一緒に移動して使われないまま道管内に残されただけの話です。植物が積極的にあるいは選択的に茎の切り口から色素や他の物質を吸い上げるわけではありません。
ではなぜ、るんるん君が観察したようなことが起こったのでしょうか。それは「茎をつけている水の中で色素が分解されてしまったのでしょう。」どんな場合でも、たとえば切花でも、茎を水に長い間浸けておくと茎の組織は死にます。2週間も放っておけばそうなる可能性は高いです。もちろん水温も関係するでしょうが。特に、葉を除去し、ワセリンを塗った茎は呼吸もできないので、生命活動を長く続けることは無理です。
茎の組織が死ぬということは、水の中には微生物が繁殖しているわけです。おそらくこれらの微生物によって色素は分解されたと思われます。市販の食品の中に「ショウガの刻み漬け」がありあすが、これは通常102号色素で着色されています。ところがこの着色された色が薄くなったり、消えたり(褪色)したりすることがあります。この現象を調べた研究報告では、その原因はある種のバクテリアと酵母菌の繁殖によるものであることが分かりました。
以上の通り、るんるん君の仮説は適切ではないというのが結論です。でも、観察したことを無視しないで、考えるということはとても大切な態度です。
「蒸散」の問題は、るんるん君のようなワセリン実験をふくめて、沢山の質問が本コーナーに寄せられています。難しい内容のもありますが、いくつか開いてみて勉強してみてください。
Q&Aコーナーへようこそ。歓迎いたします。
植物から蒸発する(蒸散と言います)水分を茎の切り口から吸い上げられる水の量で計り、気孔の数の多さを(分布密度)を推定しようとしたのですね。発想は悪くありませんが。実験の組み立て方をもう一寸考えた方がよかったですね。あるいは質問にはくわしく書いてないのかもしれませんが。
1.まず、使用した植物は何ですか。植物の種類によっては葉の裏表で分布にあまり差がないものや、面の方が裏より多いものもあります。普通は裏面の方が多い。
2.使用した植物はどれも同じ成長条件のものでしたか。葉の数は同じで、葉面積がほぼ同じでしたか。
3.実験をした場所はどんなところでしたか。温度、光の条件(気候の開閉に影響します)、空気の流れは? 気孔の周辺の空気の流れがスムースなほど蒸散もスムースです。
4.対照実験をしたと書いてありますが、どれが対照となっているのですか。この実験の場合対照はワセリンを塗らないままの材料だとおもいます。このままの実験なら「比較実験」と言った方がいいかもしれません。
5.葉をとって茎にワセリンを塗ったとありますが、これは茎の気孔のことを念頭においたのでしょうが、葉を全部とるということは実験材料を茎だけにするということで、他の葉のある材料との比較にはふさわしくありません。正しくは葉の裏表、茎も全部ワセリンを塗ったものが必要です。
そこで、もう学んでいるかもしれませんが、次に、水が茎の切り口からどの様にして吸い上げられて気孔から蒸散するのかという事を簡単に説明しておきます。植物体の中の水(水に溶けているいろいろな物資も)の通路は道管/仮道管と呼ばれる管です。道管は植物の種類によっても違いますが、長さは0.14mm〜1.25mmの死んだ細胞が縦に繋がった管で、直径は10μm〜500μm (1μmは1mmの1/1000)の毛細管です。毛細管の先を水に入れると、水が管の中を上昇します(毛細管現象)。管が細いほど高く昇りますが、限度があります、植物の道管は気孔まで繋がっていて、水で満たされています。気候が開いて水分が蒸発すると、そこに負の圧力が生じ、水が管の下部から引っ張り上げられます。ストローで水を吸う時と同じ原理です。つまり、道管の中の水の移動は物理的な現象です。水の中に溶けている物資は植物体が生命活動をするのに必要なものは道管に接する他の生きた細胞へと移されます。しかし、不要なものや、分子量が大きいものなどは道管内に沈着してしまうことがあります。るんるん君が使った食紅(赤色102号)は化学合成された天然でない物質です。102号はニューコクシンというひかくてき大きな分子(分子量604.48)の化合物です。ちなみにこの物質は日本では食用に広く使われていますが、欧米では使用が禁止されています。
さて、るんる君の疑問に答えましょう。植物が地中で根から水やいろいろな物質を道管内に吸収するのとちがって、茎の切り口から水を吸わせるのは上で説明した様に物理的な現象です。
したがって、色素(あるいは他の溶けている物質も)はただ水と一緒に移動して使われないまま道管内に残されただけの話です。植物が積極的にあるいは選択的に茎の切り口から色素や他の物質を吸い上げるわけではありません。
ではなぜ、るんるん君が観察したようなことが起こったのでしょうか。それは「茎をつけている水の中で色素が分解されてしまったのでしょう。」どんな場合でも、たとえば切花でも、茎を水に長い間浸けておくと茎の組織は死にます。2週間も放っておけばそうなる可能性は高いです。もちろん水温も関係するでしょうが。特に、葉を除去し、ワセリンを塗った茎は呼吸もできないので、生命活動を長く続けることは無理です。
茎の組織が死ぬということは、水の中には微生物が繁殖しているわけです。おそらくこれらの微生物によって色素は分解されたと思われます。市販の食品の中に「ショウガの刻み漬け」がありあすが、これは通常102号色素で着色されています。ところがこの着色された色が薄くなったり、消えたり(褪色)したりすることがあります。この現象を調べた研究報告では、その原因はある種のバクテリアと酵母菌の繁殖によるものであることが分かりました。
以上の通り、るんるん君の仮説は適切ではないというのが結論です。でも、観察したことを無視しないで、考えるということはとても大切な態度です。
「蒸散」の問題は、るんるん君のようなワセリン実験をふくめて、沢山の質問が本コーナーに寄せられています。難しい内容のもありますが、いくつか開いてみて勉強してみてください。
勝見 允行(JSPPサイエンスアドバイザー)
回答日:2024-08-19