一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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クワイの葉脈の種類

質問者:   中学生   さんご
登録番号5999   登録日:2024-08-19
クワイは、平行脈でしょうか?
それとも単子葉類だけど、網状脈なのでしょうか?
さんご 様

みんなのひろば 植物Q&A に質問をいただきありがとうございます。
この質問コーナーに、その昔、さんごさんの質問に似た質問が来ましたので、回答しました。登録番号1613番です。日付を見てびっくりしました。2008年の5月です。以下はこの回答の一部を少し書き換えたものです。

葉脈の走り方(脈理、脈系)には、平行脈と網状脈、それに二叉脈系があります。平行脈は単子葉植物、網状脈は双子葉植物に見られ、二叉脈はイチョウなどで見られます。と、これまでの教科書には書いてありました。

しかし、遺伝子のデータの解析や、アムボレラという原始的な植物の発見によって、被子植物のまとめ方についての理解が進み、図鑑や大学の教科書は大幅に書き換えられつつあります。たとえば、被子植物は単子葉植物と双子葉植物は大きく二つに分かれるのではなく、ひとまとまりのグループです。そして、単子葉植物は、原始的な被子植物である、アムボレラ、コショウ、シキミ、クスノキ、モクレン、スイレンなどとともに出現し、その後に、キンポウゲや、バラ、キク、マメの仲間などのさまざまな植物(真正双子葉類)が出現したとされます。

平行脈は、たとえば原始的被子植物のドクダミや、真正双子葉類のオオバコの仲間などにも見られますし、単子葉植物のサトイモ、サルトリイバラ、そしてさんごさんの観察したクワイの葉脈は網状脈系です。ですから、脈系は、「双子葉植物と単子葉植物の進化によって網状脈と平行脈に分かれた」という一般化は、もはや間違いと言っていいでしょう。

一方、一般に平行脈といわれるイネ科の葉にも平行に走る葉脈の間をつなぐ細い葉脈(結合脈)があります。そういう意味では網状であるともいえるかもしれません。しかし、葉脈がどのようにできるのかをきちんと見ると、典型的な平行脈をもつイネ科やアヤメ科などの結合脈はきれいな四角のパターンを作ります。網状脈系の一番太い葉脈を一次脈、それから枝分かれする葉脈を二次脈、三次脈・・・とよびます。これらの高次脈が相互に結合して網状の脈系ができます。したがって細い脈によって囲まれた最終区画がきれいな四角になることは稀です。というわけで葉脈のでき方を観察すると、平行脈系と網状脈系を区別することができます。

さんごさんの質問はたいへん「的を射た」ものです。是非、クワイの若い葉や成熟した葉をよく観察して、どのようなパターンで網目ができるのかを調べてみてください。
寺島 一郎(専門は植物生態学 葉の光合成の研究をしています)(JSPPサイエンスアドバイザー)
回答日:2024-08-31