一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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プロトンポンプのプロトン

質問者:   その他   坂上桂太
登録番号0060   登録日:2004-05-09
水素伝達系に関しての質問ですが,NAD・H2はミトコンドリア内のマトリクスからクリステへ膜を通して通過するとき,プロトンと電子に分離され,さらにプロトンポンプによってプロトンがATP合成酵素を通過するときに,ATPが合成される。と学びました。

しかし,プロトンがプロトンであるためには核反応程度の莫大なエネルギーが必要であるとも何かで読んだこともあります。

果たして,植物細胞内で水素がプロトンになるほどのエネルギーが得られるのでしょうか?あるいは種々の酵素によって活性化エネルギーが小さくなることが期待できるのでしょうか?
坂上 桂太さま

 日本植物生理学会のホームページにご興味をお持ちいただき有り難うございました。
 
 ご質問についてですが、ご存知のように水は純水状態でも、ある一定の割合で常にH+とOH-に解離しています(いわゆるpHの考え方です)。但し、プロトンは水溶液中では必ず水分子に付加してヒドロニウムイオン(H3O+)になっているとされています。酸あるいは塩基という対になるイオンが存在すれば、さらにその種類に応じて、存在するH+やOH-の濃度は増加します。通常、中性条件では、H+とOH-のいずれもが10^-7Mで存在しますが、プロトンポンプが輸送するプロトンはこの解離しているH+と理解することができます。
 実際、電子伝達系が作り出すエネルギーやATPの加水分解エネルギーでプロトンを運ぶことができることは、物理化学的にも計算することができます。
 植物には、ミトコンドリア以外に、葉緑体にもATP合成に機能するプロトンポンプが存在しますし、細胞膜や液胞膜には、ATPやPPiの加水分解エネルギーを利用してプロトンを運ぶことができるポンプも存在します。
 尚、酵素によって小さくできる活性化エネルギーは、反応の途中に必要とされるエネルギー障壁のことで、反応の初期状態と最終状態で決まる平衡条件を変えることができるわけではありません。
神戸大
 三村 徹郎
回答日:2006-10-23
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