一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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リンゴの保存とエチレンについて

質問者:   一般   向日葵
登録番号6001   登録日:2024-08-20
 リンゴの保存方法について書かれている本を読んでいると、家庭でリンゴを保存するには、新聞紙などで包み、ポリ袋に入れ冷蔵庫で保存すれば良いとの事でしたが、一つ疑問に思い質問させて頂きました。
 ポリ袋に入れ保存するのは、リンゴから発生するエチレンガスにより、他の野菜や果物が傷むのを防ぐためであると思いますが、ポリ袋に入れ密閉する事によりリンゴは、自身のエチレンガスにより追熟してしまわないのでしょうか?冷蔵庫に入れる事により、リンゴの呼吸が抑えられて、エチレンガスの生成も抑えられるとは思いますが、追熟のためにはエチレンの濃度は低い濃度(〜1ppm前後)で充分であるそうです。そうなるとリンゴ自身は、大丈夫なのでしょうか?入れる袋の材質なども関係あるのでしょうか?不思議に思い質問させて頂きました。どうぞよろしくお願いいたします。
向日葵 様

日本植物生理学会、みんなのひろば、植物Q&Aのコーナーへご質問いただきありがとうございました。また回答をお待ちいただきありがとうございます。ご質問への回答は、エチレンの生合成などがご専門の名古屋大学 大学院生命農学研究科 名誉教授 森仁志先生にお願いいたしました。

【森先生からの回答】
リンゴ果実は室温でも常にエチレンを発生して追熟は進みます。リンゴ果実をポリ袋に入れて密閉すると、ポリ袋の中のエチレン濃度は増加しますが、冷蔵庫(低温)の中ではリンゴ果実から発生するエチレンの量も下がりますし、追熟がさらに進むとは思えません。一般的に市販されているリンゴは十分に追熟されています。冷蔵庫に入れたためにリンゴの追熟が足らないという状況にはなりません。一方、エチレンの効果を抑制する1-MCPという農薬があります。1-MCPはエチレンに化学構造がよく似ています。エチレンの受容体に結合しエチレンの効果を抑えています。市販されているリンゴがすべて処理されているとは限りませんが、1-MCP処理されたリンゴはそれ以上追熟しないので長く保存できます。1-MCPに関しては、みんなのひろば植物Q&A 登録番号5976でも説明しています。参考にしてください。
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以上、ご参考になりましたでしょうか。Q&Aコーナーでは「検索窓」があります。ここに”果物”、”エチレン”などの単語を入れていただくとこれまでのQ&Aのやり取りを見ていただけます。果実のことは多くの方が関心を持たれていますので向日葵さんが興味を持たれるような他の疑問を解決してくれるやり取りも見つけていただけるかもしれません。ぜひご利用ください。
森 仁志(名古屋大学名誉教授)
JSPP広報委員長
藤田 知道
回答日:2024-09-02