質問者:
会社員
ねこたん
登録番号6002
登録日:2024-08-21
紫蘇ジュースを作るべく、葉の裏表ともにキッチリ紫になっている赤紫蘇を収穫しました。すぐに作れなかったので、ジップロックに入れ、空気もあまり入っていない状態にして密閉しておきました。みんなのひろば
赤紫蘇を収穫しておいたら緑に変色してしまいました。
半日ほど経ってから見たところ、葉がほとんど緑色になってしまっていました。
それでもと紫蘇ジュースを作ったのですが、煮出した汁は薄い褐色で、レモン汁を加えても色の変化はありませんでした。
紫色はどこに行ってしまったのでしょうか。
ねこたん 様
植物Q&Aに質問をお寄せいただき、ありがとうございます。回答が遅れて申し訳ありません。スーパーなどで赤シソが入った大きな袋を何度か見かけているので、半日で緑になることがあるのか、と興味を持ちました。
すでに旬を過ぎている赤シソですが、京都市大原にある土井志ば漬本舗様に相談したところ、収穫後に残っていた赤シソを分けていただけました。早速ビニール袋に密封して日光に当ててみたのですが、残念ながらシソが萎れてしまい、途中で紫色が薄れる様子は観察されたものの、緑色というより茶色になってしまいました。一方、冷蔵庫に入れたものは枯れることもなく紫色もほぼそのままでした。ねこたん様が経験したことを再現するには、もう少し色々な条件を試してみる必要がありそうです。
さて、以上を踏まえた上でご質問に回答したいと思います。まず赤シソが紫色なのは、アントシアニンという色素を含むからです。アントシアニンは植物に広く見られる抗酸化作用をもつ色素です。「植物Q&A」でも過去にたくさんのやり取りがされていますので、興味があれば「アントシアニン」で記事を検索してください。
これまでのQ&Aにもあるように、アントシアニンは比較的分解しやすい物質で、細胞の中の液胞というpHが低い(酸性の)区画で保護されています。細胞が死ぬと液胞は破壊され、周囲の好ましくない環境にさらされたアントシアニンは、酸化されて無色の物質に変わります。これを防ぐには、pHを低く保つ、光を遮断する、分解に働く酵素を高温処理で失活させる、などが有効とされています。
一方、ねこたん様が目撃された「緑色になる」という過程では、生きた細胞が積極的にアントシアニンを分解した可能性があります。文献によれば、熱や強光などのストレスを受けた植物細胞では、生きた状態で液胞内のアントシアニンを分解(酸化)し、それによってストレスを緩和し生き延びようとすることが報告されています。ねこたん様の場合、細胞が死ぬほどではないがアントシアニン分解を誘導するのに十分なストレスがかかったのかもしれません。
さて、アントシアニンがどこへいったか?という点ですが、生きた細胞が積極的にアントシアニンを「分解」する場合でも、あるいは細胞が破壊されアントシアニンが「分解」される場合でも、アントシアニン分子が即座に二酸化炭素と水分子に変わるわけではなく、酸化されて無色の物質に変化したと考えらます。ただし、一度酸化されたアントシアニンは、pHを酸性にしても色は戻りませんし、抗酸化作用も失っているので健康上の利点もなくなると思われます。
植物Q&Aに質問をお寄せいただき、ありがとうございます。回答が遅れて申し訳ありません。スーパーなどで赤シソが入った大きな袋を何度か見かけているので、半日で緑になることがあるのか、と興味を持ちました。
すでに旬を過ぎている赤シソですが、京都市大原にある土井志ば漬本舗様に相談したところ、収穫後に残っていた赤シソを分けていただけました。早速ビニール袋に密封して日光に当ててみたのですが、残念ながらシソが萎れてしまい、途中で紫色が薄れる様子は観察されたものの、緑色というより茶色になってしまいました。一方、冷蔵庫に入れたものは枯れることもなく紫色もほぼそのままでした。ねこたん様が経験したことを再現するには、もう少し色々な条件を試してみる必要がありそうです。
さて、以上を踏まえた上でご質問に回答したいと思います。まず赤シソが紫色なのは、アントシアニンという色素を含むからです。アントシアニンは植物に広く見られる抗酸化作用をもつ色素です。「植物Q&A」でも過去にたくさんのやり取りがされていますので、興味があれば「アントシアニン」で記事を検索してください。
これまでのQ&Aにもあるように、アントシアニンは比較的分解しやすい物質で、細胞の中の液胞というpHが低い(酸性の)区画で保護されています。細胞が死ぬと液胞は破壊され、周囲の好ましくない環境にさらされたアントシアニンは、酸化されて無色の物質に変わります。これを防ぐには、pHを低く保つ、光を遮断する、分解に働く酵素を高温処理で失活させる、などが有効とされています。
一方、ねこたん様が目撃された「緑色になる」という過程では、生きた細胞が積極的にアントシアニンを分解した可能性があります。文献によれば、熱や強光などのストレスを受けた植物細胞では、生きた状態で液胞内のアントシアニンを分解(酸化)し、それによってストレスを緩和し生き延びようとすることが報告されています。ねこたん様の場合、細胞が死ぬほどではないがアントシアニン分解を誘導するのに十分なストレスがかかったのかもしれません。
さて、アントシアニンがどこへいったか?という点ですが、生きた細胞が積極的にアントシアニンを「分解」する場合でも、あるいは細胞が破壊されアントシアニンが「分解」される場合でも、アントシアニン分子が即座に二酸化炭素と水分子に変わるわけではなく、酸化されて無色の物質に変化したと考えらます。ただし、一度酸化されたアントシアニンは、pHを酸性にしても色は戻りませんし、抗酸化作用も失っているので健康上の利点もなくなると思われます。
長谷 あきら(JSPPサイエンスアドバイザー)
回答日:2024-09-02