一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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多肉植物の再分化について

質問者:   高校生   こうよう
登録番号6008   登録日:2024-08-25
私は、高校の課題研究で多肉植物について研究をしています。
今回、その研究の一環として、多肉植物のカルスのオーキシンとサイトカイニンのバランスを調整し、葉挿しのように根や芽の分化を促す実験をしたいと考えています。この実験をするのは初めてなので、実験方法で参考になるものはないかと思い多肉植物のホルモンについての論文等を探してみたのですが、参考文献が全く見つからず困っていました。
そんな時にこちらのサイトの登録番号4918の回答を拝見させていただいたところ、以下のような記述がありました。

「外からオーキシン、サイトカイニンを投与した研究から、多肉葉の内生オーキシンが発根及び不定芽の形成に関与していることが明らかにされています。」
「オーキシンとサイトカイニンを加えた培地においた場合には根、芽がおきることでも植物ホルモンが働いていることは明らかです。」

こちらで言及されている研究の引用元の論文等を教えていただくことは可能でしょうか。また、多肉植物の芽や根を分化させるのに最適なオーキシンとサイトカイニンの具体的な濃度比もわからない状態です。それについても、何か知っていることがあれば教えていただけないでしょうか。
よろしくお願いします。
こうようさん

Q&Aコーナーへようこそ。歓迎致します。しかし、ご希望の論文を特定することは、登録番号4918の回答者は故人となられましたのでお聞きすることができず、直ぐにはできかねます。ご質問の内容からすると、こうようさんが必要としているのは多肉植物のカルスから不定根と不定芽を形成させるための適切なオーキシン/サイトカイニンの濃度比であるのではないかと思います。しがって、上記の専門的な論文(英語で書かれていると思います)を読んでも、あまり役には立たないのではないでしょうか。もちろん基本的な事柄の勉強にはなるでしょうが。
 ところで、多肉植物ということですが、登録番号4918にも書かれている様に、多肉植物は何科(Cactaceae:サボテン科 or Crassulaceae:ベンケイソウ科)のなんという種の植物を使うのですか。植物の種類によっては植物ホルモンの条件は必ずしも同一ではありません。また、実験はすでに作られているカルス組織を使って、それから器官形成をするということでしょうか。
 実験について質問をなさる時は、行おうとしている条件をできるかぎる詳しく書いていただくと、より適切なアドバイスができます。
 カルス組織や普通の組織からの不定根/不定芽誘導におけるオーキシン/サイトカイニンの関わりについては、たいていの植物生理学関連の教科書には基本的なことが書かれています。多肉植物に特定したケースを知りたいときはWEB上で「植物組織培養多肉植物」で検索していただくとたくさんの項目が出てきますので、それらをご覧になった方が実際的であるとおもいます。一般に、不定根形成にはオーキシン>サイトカイニンの濃度比が、不定芽形成にはサイトカイニン>オーキシンの濃度比が適用されます。具体的な値は植物の種類や実験条件で異なります。WEBに掲載されている多肉植物の組織培養のどれかの例(植物材料は異なるかもしれませんが)を参考に試みて、その上で、いろいろな濃度の組みわせを使って、最適の(至適)濃度比を決めるのがいいでしょう。それが、まだ試みられていない材料を使う時の常套手段です。
植物の組織培養をするにあたっては、次のような文献は役に立つでしょう。

『植物の組織培養』基礎生物学選書11 竹内正幸著 裳華房(1987)
『絵とき植物組織培養入門』 清水 碩 他著 オーム社(1992)
勝見 允行(JSPPサイエンスアドバイザー)
回答日:2024-08-28