質問者:
一般
かぉり
登録番号6009
登録日:2024-08-27
私はスーパーでアボカドを買うと、種を水耕栽培するのが趣味です。みんなのひろば
アボカドのアルビノ?
かぉり様
Q&Aコーナーへようこそ。歓迎いたします。はじめ、子葉がたまたま開いたのかなと思いましたが、送っていただいた写真ではっきりしました。答えはご想像の通りアルビノの葉です。
植物のアルビノ体は葉緑素を作れない突然変異体なので、芽生えてもやがて死にます(登録番号5100参照)。しかし、ご覧のように、アヴォカドの子葉は非常に大きいので、養分はたくさん蓄積されています。幼植物は光合成ができなくても、それを使い尽くすまでは成長できるので、しばらくはそのままで生きつづけられるでしょうが、もし、その後、緑葉がつくられなければ、育てることはできません。
アルビノ現象を示すものの中には、初め白いがそのうち緑色になっていく様な変わり種もあって、このような様式を「ヴィレッセント」と呼んでいます(登録番号1177, 5100を読んでください)。岡山大学資源植物科学研究所教授の坂本 亘先生に伺いました所、このアボガドは生育が回復することから「ヴィレッセント」と考えてよさそうだということです。写真にあるアヴォカドの白い葉は茎に互生で作られていますので、正常葉のアルビノ変形だと思います。しかし、このアルビノはいわゆる突然変異体ではなくて、種子が形成される時にたまたまおきる異常なのかもしれません。
アヴォカドの種子は大きいですが大部分は栄養分を蓄えた子葉です。中心下部に小さな幼植物体が入っています。幼植物体は発芽と共に、根に成長していく幼根とその上部に地上に伸びていく茎葉(上杯軸と言います)の幼芽があります。幼芽の先端は茎頂といって、ここで将来の葉となる葉原基が分化します。かぉりさんが育てているアヴォカドは、おそらく種子の発達のある時期に、幼植物体ですでに分化が始まっていた葉原基が正常に出来上がらなかったのではないかと思います。
調べてみると、かぉりさんのアヴォカドと同様の写真がいくつかネット上でも掲載されていますね。アヴォカドのこの様な現象は特に珍しいことではない様です。日本ではアヴォカドの栽培はほとんど行われていませんので、アヴォカドの生育に関する研究はアメリカなど外国で昔から盛んです。カリフォルニア大学リヴァーサイド校の研究所(the University of California Citrus Experiment Station, Riverside, California)の研究者が 、1956年に『アヴォカド実生(芽生え)のアルビノ現象と異常発生』という題で書いている報告があります*。それによると、この様な現象は夙に1917年に発見されていました。当初から1956年まで、その原因は「sun-blotch」というアヴォカドのウイルスの影響だと考えられていた様です。しかし、ウオーレスとドレイクの研究によってウイルス説は否定され、この様な異常な実生は、成熟のある段階より以前に収穫した果実の種子から発芽するものに最も多く見られるということが分かりました。しかし、中には完全成熟した果実の種子からの実生にも見られることがあるが、それはおそらくアルビノ化の因子が成熟後もたまたま残っているからであろうと結論しています。残念ながら、その後、詳しいメカニズムについての研究報告は見当たりません。
ヴィレッセントは成長が遅れるそうですが、アヴォカド種子は前述のように養分を多量に蓄えた子葉がありますので、アルビノのまま成長がゆっくり進んでいる間に葉緑体(素)を形成する機能が回復して来るのではないかと思います。アルビノ葉はやがて脱離するでしょうが、それからはそのまま緑の葉をつけ続けると思います。
* J.M. Wallace and R.J. Drake albinism and abnormal development of avocado seedlings California Avocado Society 1956 Yearbook 40: 156~164
Q&Aコーナーへようこそ。歓迎いたします。はじめ、子葉がたまたま開いたのかなと思いましたが、送っていただいた写真ではっきりしました。答えはご想像の通りアルビノの葉です。
植物のアルビノ体は葉緑素を作れない突然変異体なので、芽生えてもやがて死にます(登録番号5100参照)。しかし、ご覧のように、アヴォカドの子葉は非常に大きいので、養分はたくさん蓄積されています。幼植物は光合成ができなくても、それを使い尽くすまでは成長できるので、しばらくはそのままで生きつづけられるでしょうが、もし、その後、緑葉がつくられなければ、育てることはできません。
アルビノ現象を示すものの中には、初め白いがそのうち緑色になっていく様な変わり種もあって、このような様式を「ヴィレッセント」と呼んでいます(登録番号1177, 5100を読んでください)。岡山大学資源植物科学研究所教授の坂本 亘先生に伺いました所、このアボガドは生育が回復することから「ヴィレッセント」と考えてよさそうだということです。写真にあるアヴォカドの白い葉は茎に互生で作られていますので、正常葉のアルビノ変形だと思います。しかし、このアルビノはいわゆる突然変異体ではなくて、種子が形成される時にたまたまおきる異常なのかもしれません。
アヴォカドの種子は大きいですが大部分は栄養分を蓄えた子葉です。中心下部に小さな幼植物体が入っています。幼植物体は発芽と共に、根に成長していく幼根とその上部に地上に伸びていく茎葉(上杯軸と言います)の幼芽があります。幼芽の先端は茎頂といって、ここで将来の葉となる葉原基が分化します。かぉりさんが育てているアヴォカドは、おそらく種子の発達のある時期に、幼植物体ですでに分化が始まっていた葉原基が正常に出来上がらなかったのではないかと思います。
調べてみると、かぉりさんのアヴォカドと同様の写真がいくつかネット上でも掲載されていますね。アヴォカドのこの様な現象は特に珍しいことではない様です。日本ではアヴォカドの栽培はほとんど行われていませんので、アヴォカドの生育に関する研究はアメリカなど外国で昔から盛んです。カリフォルニア大学リヴァーサイド校の研究所(the University of California Citrus Experiment Station, Riverside, California)の研究者が 、1956年に『アヴォカド実生(芽生え)のアルビノ現象と異常発生』という題で書いている報告があります*。それによると、この様な現象は夙に1917年に発見されていました。当初から1956年まで、その原因は「sun-blotch」というアヴォカドのウイルスの影響だと考えられていた様です。しかし、ウオーレスとドレイクの研究によってウイルス説は否定され、この様な異常な実生は、成熟のある段階より以前に収穫した果実の種子から発芽するものに最も多く見られるということが分かりました。しかし、中には完全成熟した果実の種子からの実生にも見られることがあるが、それはおそらくアルビノ化の因子が成熟後もたまたま残っているからであろうと結論しています。残念ながら、その後、詳しいメカニズムについての研究報告は見当たりません。
ヴィレッセントは成長が遅れるそうですが、アヴォカド種子は前述のように養分を多量に蓄えた子葉がありますので、アルビノのまま成長がゆっくり進んでいる間に葉緑体(素)を形成する機能が回復して来るのではないかと思います。アルビノ葉はやがて脱離するでしょうが、それからはそのまま緑の葉をつけ続けると思います。
* J.M. Wallace and R.J. Drake albinism and abnormal development of avocado seedlings California Avocado Society 1956 Yearbook 40: 156~164
勝見 允行(JSPPサイエンスアドバイザー)
回答日:2024-09-02