一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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カルビン回路でのNADPHの役割

質問者:   高校生   オガワコ
登録番号6010   登録日:2024-08-27
光合成について勉強していて、NADPHの素性が知れず、色々調べてもわからなかったので、質問させていただきます。基礎知識がなく、至らない質問ですが、お答えいただけるとありがたいです……。

カルビン回路内での反応で、NADPHが、還元力が強い⇔電子を放出しやすい、というのは何の役に立つのですか?イオン化エネルギーを考えると、NADPHが電子を放出するのは吸エルゴン的で、むしろエネルギーを消費してしまうだけではと思います。(カルビン回路でのATP→ADP+Piも同様にエネルギーの浪費なのではないでしょうか……?)

また、NADPHは還元力が強いのはなぜですか。光化学系iから電子を受け取っておきながら、カルビン回路では電子を放出するというのは、不思議なように感じます。

以上です!よろしくお願いします。
オガワコ様

みんなのひろば 植物Q&Aへようこそ、質問を歓迎します。
登録番号6010, 6011, 6012の3件の質問は互いに関連していますので、それに対する回答は1つに統合して扱います。
回答を園池公毅博士(理学)、(早稲田大学教育・総合科学学術院教授)にお願いしました。

【園池先生の回答】
ATPがどのように反応を進めるかは、様々な場合があります。一般的に説明すると、エネルギー的に、化学反応には放っておいて進む(自発的な)反応と、単独では進まない反応がありますが、単独では進まない反応も、自発的に進む反応と組み合わせることにより、進めることが可能です。このあたりは「生物基礎」で学ぶと思います。二酸化炭素を有機物に変えるカルビン回路の反応は自発的には進みませんが、ATPが加水分解してADPになる反応は自発的に進む反応なので、両者を組み合わせると、カルビン回路の反応も進めることができます。
他方、二酸化炭素を有機物にする反応は、有機物が燃焼して酸化し二酸化炭素になる反応の逆ですから、有機物をつくる反応には、反応を進めるエネルギーだけでなく、二酸化炭素を還元する必要があります。そのための還元剤がNADPHです。

すなわち、ATPが反応を進めるためのエネルギーを供給し、NADPHが還元する力を供給することによって、カルビン回路の反応が進められています。

なお、このあたりについては、講談社ブルーバックスの『光合成とはなにか』をお読みいただけると、もう少し全体像を理解できるかもしれません。
園池 公毅(早稲田大学教育・総合科学学術院)
JSPPサイエンスアドバイザー
櫻井 英博
回答日:2024-09-02