一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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ビワの取り木部位による成長の違い

質問者:   会社員   樹
登録番号6014   登録日:2024-09-11
こんにちは、私はビワを趣味で育てています。
職場にとても甘いビワの木があり取り木をさせて貰って2本苗を作って育てています。
1本は結実経験のある高い部分の枝、1本は下の方から胴吹きしていた枝から作りました。
高い部分の枝は翌年から実をつけて毎年収穫が出来るのですが、胴吹きから作った苗は成長はとても良いですが一度も花を咲かせた事がありません。

植物は栄養成長と生殖成長があるのは分かりますが既に結実経験がある同じ木から取った枝なのでどの部分でも同じ様に成長するかと思っていました。

このような結果になると言うことは同一個体でも枝の出た部位によって性質が変わるのでしょうか?
どの様に決まっているのかとても気になります。
育てている環境としてはどちらも同じですが毎年結実する方は背が低く、結実経験がない方は他の物が花芽を出す時期も葉芽を出すので背が高くなっています。

どんな仕組みで性質が決まるのかもしも分かる方がいらっしゃいましたら教えていただきたいと思います。
よろしくお願いします。
樹様

Q&Aコーナーへようこそ。歓迎いたします。ビワは種子から育てると時間がかかりますね。私の庭には、食べて残した茂木ビワの種子から育てた樹が1本大きくなっています。結実するまでに10年近くかかりました。早く果実を成らせるには苗を買うか、挿木(取り木)で育てるかするといいようですね。ところで、ご質問の内容はビワの栽培に関係する果樹園芸関係の事柄でもありますが、植物の成長という観点から考えてみます。
植物体における「芽」の形成は、普通は定まった場所で見られます。つまり、葉(葉柄)の基部とそれが付いている茎(幹)との上側の間にできます。これらの芽は側芽(腋芽)といい、側芽が伸びると枝になるのです。しかし、形成される側芽の全部が伸びて(成長して)枝に成るわけではありません。側芽の成長については、本コーナーで「側芽」あるいは「頂芽優勢」の語句で検索していただくと、いくつか関連した質問がありますので、読んでください。
このように決まった様式で作られる芽は「定芽」ですが、癒傷(ゆしょう)組織や、培養組織で形成される芽は「不定芽」といいます。因みに、挿木で茎の切り口やその周辺からできてくる根は「不定根」い言います。
茎(幹)の下の方で葉のないところから新しい芽が伸びてくることがしばしば見られます。ご質問の中にある「胴吹き」です。これはどういう芽なのでしょうか。これはもともと定芽として作られたものが、何かの都合でちゃんとした芽として成長できず、他の組織の中にに埋没してしまったもので、「潜伏芽」とよばれています。潜伏芽は樹が弱ったり、上部が伐採されたりするなど、さまざまな外的・内定要因で発芽してくることが多いです。そして勢いよく伸びていきます。潜伏芽については登録番号1928,3600,4399,4781を、胴吹きは登録番号4588を読んでください。
潜伏芽は、いわば、植物体がまだ若い時に形成された芽がそのまま動かないで残っていたようなものですから、樹の年齢と同じではないと言えます。
したがって、ビワでは胴吹きの枝を取り木すると、勢いよく成長するが、花はつかないことが予想されます。「果実枝」からの取り木のようには行かなくても不思議はないと思います。もちろん、桜のように種によって胴吹きでも花をつける植物もあります。
勝見 允行(JSPPサイエンスアドバイザー)
回答日:2024-09-13