一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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ポトスの気根の生理的機能について

質問者:   その他   TAN57
登録番号6016   登録日:2024-09-12
 ポトスはつる茎を伸ばして伸長しますが、樹幹に伸びているポトスのつる茎の節から気根が伸長していることがあります。つる茎そのものは、付着根によって樹幹にしっかり定着しており、気根がポトスの植物体を支持しているように見えませんので、気根には何らかの生理的機能があるのではないかと思っています。
 ポトスの気根は空気中の水蒸気から水分などを吸収するような働きはあるのでしょうか。ポトスで水分吸収機能が明らかにされていない場合、他のサトイモ科植物などでそのような事例は知られているでしょうか。知られている場合、できれば学名もご教示いただければと思います。いずれにつきましても、出典についてもご教示いただければ幸いです。よろしくお願いします。
TAN57 様

本コーナーへの質問、ありがとうございました。植物の形態学や分類学をご専門としています日本女子大学の今市涼子先生から、下記の回答を頂きました。

【今市先生の回答】
若い、小形の株のポトスを観察すると、茎に形成される気根には、やはり2種類があります。(1)節から出て、下方に伸びる(向地性を示す)1本の太めの根と、(2)節間に1列に並ぶ数本の細い根です。ご質問の中にある「付着根」は後者(2)に相当し、ご質問の中の「茎の節から伸長している気根」は(1)の根だと推測いたします。(1)の節から出る太い根は、小型の株では、皆、下方に伸びて地面に着くと地中に入り、根として伸長しています。したがって、少なくとも、若い株では、ご質問の、節から出て下方に伸びる気根は、空気中の水蒸気の吸収の役割というより、本来の根として、体の固定、栄養吸収の器官として役立っていると考えられま
す。他のサトイモ科植物においても、ポトスのような2種類の異形根性が見られることは、植物形態学、植物器官学では古くから知られています (Syngonium podophyllum シンゴニウムの図が使われています) が、同じ解釈です。

ただ、大きく成長した株で、節から出た気根が地面まで到着することが無い場合、それらの根が空気中の水分吸収機能を全くもたないかどうかは、わかりません。しかし、少なくとも積極的な水分吸収機能をもつことを示す研究を私は存じ上げません。
今市 涼子(日本女子大学理事長)
JSPPサイエンスアドバイザー
山谷 知行
回答日:2024-09-20