質問者:
大学生
中野
登録番号6027
登録日:2024-10-05
バナナは切るとすぐに黒くなるのに、バナナフラワー(まだ青いバナナを皮ごと乾燥させた後に、粉末にしたもの)はどうして黒くならないのでしょうか?バナナ、特に皮の部分にはポリフェノール酸化酵素とポリフェノールの双方が豊富にあり、それが理由で切るとすぐ黒く変色するするということですが、バナナフラワーは薄黄色の白っぽい粉末です。水に入れて撹拌して飲む時にも黒くなっている様子はありません。これはどうしてでしょうか。ポリフェノール酸化酵素もしくはポリフェノールが乾燥や粉末化の過程で失われているのでしょうか。
みんなのひろば
どうしてバナナフラワーは黒くならないのですか?
中野様
植物Q&Aへの質問ありがとうございます。回答が大変遅くなり申し訳ありませんでした。バナナフラワーのことはあまりよく知らなかったので文献を調べてみました。
まずバナナの「褐変」は、中野様がご指摘の通り、細胞が破壊されることで細胞質にあったポリフェノール酸化酵素と液胞にあったポリフェノールが混ざることにより起こります(植物Q&A過去回答 登録番号2176, 3046など)。バナナフラワーの原料となる未成熟のバナナのポリフェノール量は、熟したバナナと比較してやや少ないようですが、ポリフェノール酸化酵素の活性はむしろ高い場合もあり、熟したバナナが褐変しやすいのは、主に組織が柔らかくなり細胞が壊れやすくなるためと思われます。
バナナフラワーは、薄くスライスしたバナナの実を乾燥し破砕することにより製造されることはご存じの通りです。その工程を示す写真を見ると、乾燥後のバナナの皮の部分は黒く変色していますが果肉の部分は比較的白いままです。なお、乾燥時の褐変を防ぐためクエン酸や二亜硫酸ナトリウムなどの薬剤が加えられることもあるようです。さらに、粉の性質を改善するため加熱押し出し加工が行われる場合もあり、加工中の熱によりさらに褐色化が進みますが、それでも色は小麦粉の代替品として利用可能な範囲にとどまります。
さて、以上のような製造工程でポリフェノール類やポリフェノール酸化酵素はどうなるのでしょうか?実際にバナナフラワーでフェノール類を測定した文献をいくつか見ましたが、オーブン乾燥や加熱押し出し加工によってポリフェノールの量が激減するということは無いようです。一方、ポリフェノール酸化酵素の活性を調べた論文を見つけることはできなかったのですが、乾燥や加熱押し出し加工の温度(50℃以上の温度で行うことが多いようです)を考えると、失活あるいは大きく活性が低下している可能性が高いと思います。また、いくらか活性が残っており水添加により反応が開始されたとしても、短時間で黒くなるほどの反応量ではないのかもしれません。
以上、肝心のところで曖昧なところが残りますが、熟したバナナの果肉をつぶした時に見られる激しい褐変が水を添加したバナナフラワーで見られないのは、主にポリフェノール酸化酵素が失活しているためと考えて良さそうです。バナナフラワーは、食物繊維やレジスタントスターチを多く含み、おまけにグルテンフリーということで注目を集め、近年様々な研究が行われているようです。ご興味があるようでしたら色々調べてみると面白いかと思います。
植物Q&Aへの質問ありがとうございます。回答が大変遅くなり申し訳ありませんでした。バナナフラワーのことはあまりよく知らなかったので文献を調べてみました。
まずバナナの「褐変」は、中野様がご指摘の通り、細胞が破壊されることで細胞質にあったポリフェノール酸化酵素と液胞にあったポリフェノールが混ざることにより起こります(植物Q&A過去回答 登録番号2176, 3046など)。バナナフラワーの原料となる未成熟のバナナのポリフェノール量は、熟したバナナと比較してやや少ないようですが、ポリフェノール酸化酵素の活性はむしろ高い場合もあり、熟したバナナが褐変しやすいのは、主に組織が柔らかくなり細胞が壊れやすくなるためと思われます。
バナナフラワーは、薄くスライスしたバナナの実を乾燥し破砕することにより製造されることはご存じの通りです。その工程を示す写真を見ると、乾燥後のバナナの皮の部分は黒く変色していますが果肉の部分は比較的白いままです。なお、乾燥時の褐変を防ぐためクエン酸や二亜硫酸ナトリウムなどの薬剤が加えられることもあるようです。さらに、粉の性質を改善するため加熱押し出し加工が行われる場合もあり、加工中の熱によりさらに褐色化が進みますが、それでも色は小麦粉の代替品として利用可能な範囲にとどまります。
さて、以上のような製造工程でポリフェノール類やポリフェノール酸化酵素はどうなるのでしょうか?実際にバナナフラワーでフェノール類を測定した文献をいくつか見ましたが、オーブン乾燥や加熱押し出し加工によってポリフェノールの量が激減するということは無いようです。一方、ポリフェノール酸化酵素の活性を調べた論文を見つけることはできなかったのですが、乾燥や加熱押し出し加工の温度(50℃以上の温度で行うことが多いようです)を考えると、失活あるいは大きく活性が低下している可能性が高いと思います。また、いくらか活性が残っており水添加により反応が開始されたとしても、短時間で黒くなるほどの反応量ではないのかもしれません。
以上、肝心のところで曖昧なところが残りますが、熟したバナナの果肉をつぶした時に見られる激しい褐変が水を添加したバナナフラワーで見られないのは、主にポリフェノール酸化酵素が失活しているためと考えて良さそうです。バナナフラワーは、食物繊維やレジスタントスターチを多く含み、おまけにグルテンフリーということで注目を集め、近年様々な研究が行われているようです。ご興味があるようでしたら色々調べてみると面白いかと思います。
長谷 あきら(JSPPサイエンスアドバイザー)
回答日:2024-11-05