一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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ミニひまわりの帯化

質問者:   高校生   m
登録番号6029   登録日:2024-10-06
私は高校の授業の一環で植物の帯化について調べています。
こちらの質問コーナーの「帯化について」という質問で帯化はサイトカイニンとオーキシンという植物ホルモンで起こすことができるとのご回答があり、実際に様々な条件で帯化を人為的に起こすことができるのかという実験をミニひまわりを用いて行いました。
すると、添付した画像のようになったものがありました。こちらは成長点に傷をつけサイトカイニンとオーキシンを塗布したものです。
これは帯化といっていいのでしょうか?
お答えいただければ幸いです。よろしくお願い致します。

m 様

この度は、日本植物生理学会、みんなのひろばへのご質問をありがとうございました。また回答までお時間がかかりましてすみませんでした。
さて、いただきましたご質問に対する回答を植物の発生や形態形成を専門にご研究の熊本大学 大学院先端科学研究部 相田 光宏 教授にお願いいたしました。

【相田先生の回答】
帯化は茎や根が太くなり、まるでリボンのような平たい形になる現象です。この現象は、成長点(植物が伸びる先端にある細胞がたくさん分裂する部分)にある分裂組織が横方向に肥大することで起こります。

帯化の特徴は、茎を上の方(成長点がある方)へたどっても、帯状の形が続くことです。場合によっては帯が分岐することもありますが、それでもリボン状の形が維持されます。試しに「帯化」や「fasciation」(帯化に相当する英単語)で画像検索してみてください。いろいろな例が見つかる思います。

一方、茎と茎や根と根が融合して平たく見える場合があります。これは「合着(がっちゃく)」と呼ばれますが、帯化とは異なり、もともと分かれていた茎や根がくっついた状態です。この場合、成長点は正常なので、分岐点より先端側の形も正常になります。

送っていただいたヒマワリの写真についても、まずはこれらの観察ポイントを確認してみてください。その際、処理していない植物(対照実験)も一緒に観察して、どこが異なるか比べることが大切です。また、サイトカイニンの投与、オーキシンの投与、成長点への傷、という三つの処理を行っていますが、これらのうち一つだけを除いたものや、二つを除いたものと比べると、何が原因なのかが突き止めやすくなると思います。

また、写真を見る限り、葉の形に異常があるようにも思います。特に、維管束の密度が通常より高く、主脈が太くなっているようです。オーキシンには維管束の分化を誘導する作用があるため、その影響が出ている可能性があります。

成長点に傷をつけるという方法も興味深いですね。分裂組織には再生能力があるため、傷のつけ方次第では茎が二股に分かれることも考えられます。ただし、成長点は非常に小さく、芽の奥に隠れているので、傷をつけるのは難しいかもしれません。傷をつける位置や方法を工夫してみると良いでしょう。
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以上、ご参考になりましたでしょうか。
季節はあっという間に進みクリスマスになりましたね。その後ミニひまわりはどのようになりましたでしょうか。
植物のふしぎに関する疑問がありましたらぜひまたご利用ください。
相田 光宏(熊本大学大学院先端科学研究部)
JSPP広報委員長
藤田 知道
回答日:2024-12-23