質問者:
中学生
ただの中学生
登録番号6030
登録日:2024-10-08
理科の授業で植物の分類について習っているときに、セイヨウタンポポとニホンタンポポの見分け方について触れた際、セイヨウタンポポはがくが反り返っていて、ニホンタンポポはがくが反り返っていないぐらいしか相違点がない。みんなのひろば
セイヨウタンポポとニホンタンポポの原産地と類似性
と聞き、なぜヨーロッパ原産のセイヨウタンポポと日本の在来種であるニホンタンポポがこれほどまで似ているのかと疑問に思い質問しました。ヨーロッパと日本は距離も離れ、気候も違うのになぜその程度の違いしかないのか。ネットで聞いた収斂進化でもしたのかと思いましたがセイヨウタンポポが日本に伝来してから200年程度しか経っていないので考えにくく、なぜ似たような見た目になっていたのか気になります、教えてください。
ただの中学生君
Q&Aコーナーへようこそ。歓迎いたします。タンポポの種類については、通常大まかに在来タンポポとセイヨウタンポポとに区別していますが、分類の上ではもっとこまかく別れています。在来タンポポには20種近くあり、外来タンポポも、セイヨウタンポポとアカミノタンポポの他にもあるようです。一般に在来タンポポとセイヨウタンポポの区別としては、あなたが学校で教わったように、萼の外部形態が指標になります。しかし、他にも特徴的な相違点はあります。生活型をみると、在来タンポポは夏には葉はほとんど枯れてしまい、秋になると再び葉が成長を始めますが、セイヨウタンポポは1年を通じて成長を続けます。次世代の繁殖につながる種子の生産様式についても違いがあります。在来タンポポは自家不和合(自分の花粉では受精できない:「自家不和合」については本コーナーでこれまでに沢山の関連質問/回答がありますので、その説明はここでは省きます。googleで「Q&Aコーナーみんなのひろば自家不和合」と検索して下さい。)なので、他の個体の花の花粉が必要です。これに対して、セイヨウタンポポはアポミクシス(無融合種子形成)で種子を作ります。つまり、受粉しなくても種子を作ってしまいます。その結果、繁殖には有利となります。また、在来タンポポは2倍体であるが、セイヨウタンポポは3倍体が主であるとかの違いもあります。(倍数性については、本コーナーで「倍数体」で検索してみてください。)
さて、ご質問の本題に入ります。在来タンポポとセイヨウタンポポがどうしてこんなに似ているのかということですが、地球上の遠隔の地でそれぞれ外部形態がきわめて類似している植物が存在するのは特に不思議でもありせん。在来の日本のタンポポが遠い遠い大昔に日本列島で独自に誕生したとは考えられません。想像するに、日本に人が住み始める前にか、その頃に、他地域から日本列島に何らかの経路で持ち込まれたまれ、現在のように変化したのではないでしょうか。ある文献によると、日本に分布する約20種類の在来タンポポはモウコタンポポ節(*)とミヤマタンポポ節に分けられ、前者は東アジア低地の温暖帯の仲間で、後者は北半球の北部の寒冷地帯に広く生育するということなので、日本の在来タンポポはすくなくとも他の2地域から移ってきたとおもわれます。
(*)リンネ式分類体系による、節は属の下位種の上位に分類される、
タンポポ属(Taraxacum)の植物の遺伝子解析がすすめば、それらの種の系統的関係が明らかになり、日本のタンポポの出自についてはもっと確かな情報が得られると思います。
なお、収斂進化のことも考えたということですが、収斂進化は類縁性の低い種の間での相似性の説明に使われますが、近縁の種間の相似性について使われません。
Q&Aコーナーへようこそ。歓迎いたします。タンポポの種類については、通常大まかに在来タンポポとセイヨウタンポポとに区別していますが、分類の上ではもっとこまかく別れています。在来タンポポには20種近くあり、外来タンポポも、セイヨウタンポポとアカミノタンポポの他にもあるようです。一般に在来タンポポとセイヨウタンポポの区別としては、あなたが学校で教わったように、萼の外部形態が指標になります。しかし、他にも特徴的な相違点はあります。生活型をみると、在来タンポポは夏には葉はほとんど枯れてしまい、秋になると再び葉が成長を始めますが、セイヨウタンポポは1年を通じて成長を続けます。次世代の繁殖につながる種子の生産様式についても違いがあります。在来タンポポは自家不和合(自分の花粉では受精できない:「自家不和合」については本コーナーでこれまでに沢山の関連質問/回答がありますので、その説明はここでは省きます。googleで「Q&Aコーナーみんなのひろば自家不和合」と検索して下さい。)なので、他の個体の花の花粉が必要です。これに対して、セイヨウタンポポはアポミクシス(無融合種子形成)で種子を作ります。つまり、受粉しなくても種子を作ってしまいます。その結果、繁殖には有利となります。また、在来タンポポは2倍体であるが、セイヨウタンポポは3倍体が主であるとかの違いもあります。(倍数性については、本コーナーで「倍数体」で検索してみてください。)
さて、ご質問の本題に入ります。在来タンポポとセイヨウタンポポがどうしてこんなに似ているのかということですが、地球上の遠隔の地でそれぞれ外部形態がきわめて類似している植物が存在するのは特に不思議でもありせん。在来の日本のタンポポが遠い遠い大昔に日本列島で独自に誕生したとは考えられません。想像するに、日本に人が住み始める前にか、その頃に、他地域から日本列島に何らかの経路で持ち込まれたまれ、現在のように変化したのではないでしょうか。ある文献によると、日本に分布する約20種類の在来タンポポはモウコタンポポ節(*)とミヤマタンポポ節に分けられ、前者は東アジア低地の温暖帯の仲間で、後者は北半球の北部の寒冷地帯に広く生育するということなので、日本の在来タンポポはすくなくとも他の2地域から移ってきたとおもわれます。
(*)リンネ式分類体系による、節は属の下位種の上位に分類される、
タンポポ属(Taraxacum)の植物の遺伝子解析がすすめば、それらの種の系統的関係が明らかになり、日本のタンポポの出自についてはもっと確かな情報が得られると思います。
なお、収斂進化のことも考えたということですが、収斂進化は類縁性の低い種の間での相似性の説明に使われますが、近縁の種間の相似性について使われません。
勝見 允行(JSPPサイエンスアドバイザー)
回答日:2024-10-22