質問者:
その他
QQ木村
登録番号6031
登録日:2024-10-09
アルソミトラはつる植物とありますが、ネット上ではアルソミトラの木、と表示されていることが多く、いろいろ調べると、みんなのひろば
アルソミトラは木?草木?植物?
つる植物には、草本(いわるゆ草花)と木本(樹木)があります。
そして、
草本:地上部の生存期間が短く、通常は一年以内に開花・結実して枯死します。形成層を持たず、ある程度以上は太くなりません
とあります。
形成層は持っていないということでしょうか?
そして、ただ、アルソミトラの木という表現は間違いで、アルソミトラは草木と書くのが正しいのでしょうか?
おしえていただけると嬉しく存じます。
QQ木村 様
日本植物生理学会の「みんなの広場」にご質問いただき有難うございます。
アルソミトラ、飛行機の翼のような種子をもつ植物ですね。実際に見たことはありませんが、見て、そして種子を飛ばしてみたいです。
ウィキペディアでアルソミトラを調べるとウリ科のつる植物とあります。英語版 Alsomitra macrocarpa ではウリ科の「liana」と出て来ます。日本語ではつる植物とひとまとめで言ってしまいますが、英語だと一般のつる植物はvine、木本のつるは特にlianaと言います。vineは木本も含んだ総称です。vineを英語系の辞書を引くと「ブドウのつる」が出て来ます。米語だとブドウのつるはgrapeをつけて「grapevine」だそうです。以下に説明しますが、ブドウは木本のつる植物です。
アサガオやキュウリは一年生草本のつる植物です。一年生植物とは「発芽から開花結実までが1年以内の植物」が定義で、種子としては長生きするものもたくさんあります。地下部(地下茎など)が生き残り毎年地上部につるが出てくるものは多年生草本です。ヤマノイモやビールの原料のホップなどがその例です。ホップと同属で日本各地の河原などで猛威をふるうカナムグラは、一年生草本のつる植物です。木本のつる植物の代表は、フジ、ブドウ、ツタ、サルナシ、マタタビなど。サルナシやマタタビはキウイと同属、小さな果実ですが、断面も味もキウイにそっくりです。
木本の定義は意外と難しくネットで探すといろいろと出てきます。岩波の生物学辞典では「形成層の活動によって肥大成長した茎および根が大量の木部を形成し、その細胞壁の多くが木化して強固になっている植物」、福岡教育大の福原達人先生のHPには「地上に出ている茎が二次成長で太り続け長い間存続する植物」としてあります。
さてご質問にあります形成層についてです。形成層というと、木本植物の幹や枝(どちらも茎です)や根に円筒状に存在する分裂組織で、内側に木部の細胞を、外側に篩部の細胞を生産する(切りだす)ものが思い浮かびます。しかし、これだけが形成層ではありません。草本の双子葉植物の維管束の中にも存在して、内側に木部の細胞を外側に篩部の細胞を生産して維管束を大きくします。これが維管束内形成層です。草本植物でも茎が太くなってくると、維管束間にも形成層(維管束間形成層)ができて茎を一周します。こうして内側に木部の細胞、外側に篩部の細胞を生産することを二次成長とよびます。草本植物でも太りますから二次成長を行うことになります。これと区別するために木本の定義には「形成層」と言う用語だけではなく、「大量の木部(材)を形成する」、「太り続け長い間・・・」、などが必要なのです。
ご質問にある、「草本植物が形成層をもたない」という説明は誤りです。「ブドウの木」とは言うと思います。南フランスなどでは、ワイン用のブドウを腰あたりの高さに仕立てますのでつるのイメージがわきません。一方でフジの木とはあまり言わないのではないでしょうか。「アルソミトラの木」は間違いではないでしょう。「草木」はおかしな表現です。やはり「木本のつる」と表現するのが一番よいと思います。
図鑑などをご覧になる際にも正確な形態学の知識は必要です。福原先生のHPは、形態学全般に関して大変優れていると思いますので、ご覧になってください。
https://staff.fukuoka-edu.ac.jp/fukuhara/index.html
より詳しくは、もう古くなってしまいましたが、以下をおすすめします。
原襄(1994)植物形態学 朝倉書店
日本植物生理学会の「みんなの広場」にご質問いただき有難うございます。
アルソミトラ、飛行機の翼のような種子をもつ植物ですね。実際に見たことはありませんが、見て、そして種子を飛ばしてみたいです。
ウィキペディアでアルソミトラを調べるとウリ科のつる植物とあります。英語版 Alsomitra macrocarpa ではウリ科の「liana」と出て来ます。日本語ではつる植物とひとまとめで言ってしまいますが、英語だと一般のつる植物はvine、木本のつるは特にlianaと言います。vineは木本も含んだ総称です。vineを英語系の辞書を引くと「ブドウのつる」が出て来ます。米語だとブドウのつるはgrapeをつけて「grapevine」だそうです。以下に説明しますが、ブドウは木本のつる植物です。
アサガオやキュウリは一年生草本のつる植物です。一年生植物とは「発芽から開花結実までが1年以内の植物」が定義で、種子としては長生きするものもたくさんあります。地下部(地下茎など)が生き残り毎年地上部につるが出てくるものは多年生草本です。ヤマノイモやビールの原料のホップなどがその例です。ホップと同属で日本各地の河原などで猛威をふるうカナムグラは、一年生草本のつる植物です。木本のつる植物の代表は、フジ、ブドウ、ツタ、サルナシ、マタタビなど。サルナシやマタタビはキウイと同属、小さな果実ですが、断面も味もキウイにそっくりです。
木本の定義は意外と難しくネットで探すといろいろと出てきます。岩波の生物学辞典では「形成層の活動によって肥大成長した茎および根が大量の木部を形成し、その細胞壁の多くが木化して強固になっている植物」、福岡教育大の福原達人先生のHPには「地上に出ている茎が二次成長で太り続け長い間存続する植物」としてあります。
さてご質問にあります形成層についてです。形成層というと、木本植物の幹や枝(どちらも茎です)や根に円筒状に存在する分裂組織で、内側に木部の細胞を、外側に篩部の細胞を生産する(切りだす)ものが思い浮かびます。しかし、これだけが形成層ではありません。草本の双子葉植物の維管束の中にも存在して、内側に木部の細胞を外側に篩部の細胞を生産して維管束を大きくします。これが維管束内形成層です。草本植物でも茎が太くなってくると、維管束間にも形成層(維管束間形成層)ができて茎を一周します。こうして内側に木部の細胞、外側に篩部の細胞を生産することを二次成長とよびます。草本植物でも太りますから二次成長を行うことになります。これと区別するために木本の定義には「形成層」と言う用語だけではなく、「大量の木部(材)を形成する」、「太り続け長い間・・・」、などが必要なのです。
ご質問にある、「草本植物が形成層をもたない」という説明は誤りです。「ブドウの木」とは言うと思います。南フランスなどでは、ワイン用のブドウを腰あたりの高さに仕立てますのでつるのイメージがわきません。一方でフジの木とはあまり言わないのではないでしょうか。「アルソミトラの木」は間違いではないでしょう。「草木」はおかしな表現です。やはり「木本のつる」と表現するのが一番よいと思います。
図鑑などをご覧になる際にも正確な形態学の知識は必要です。福原先生のHPは、形態学全般に関して大変優れていると思いますので、ご覧になってください。
https://staff.fukuoka-edu.ac.jp/fukuhara/index.html
より詳しくは、もう古くなってしまいましたが、以下をおすすめします。
原襄(1994)植物形態学 朝倉書店
寺島 一郎(JSPPサイエンスアドバイザー)
回答日:2024-10-28