一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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紅葉したヤマモミジから抽出したアントシアニンについて

質問者:   教員   見習い教員
登録番号6056   登録日:2024-12-02
先日、高校生物の授業にて、紅葉の仕組みやメカニズムを調べてみようというテーマで実験を行いました。
紅葉したヤマモミジからアントシアニンを抽出し、ph1〜14に調整した溶液に滴下して色の変化を見る、といった内容です。
アントシアニンは中性下では紫色を呈すると思いますが、なぜか中性下では薄い赤色を呈してしまいました。
溶液を調整し直し、phメーターでも確認をしていますが、同様の結果になってしまいました。溶液の調整は純水、塩酸、水酸化ナトリウムで行いました。

何故このような結果になってしまったのか原因がわからず、質問させていただきました。
お時間がある時で構いませんので、ご回答よろしくお願い致します。
見習い教員 様

この度は、日本植物生理学会、みんなのひろばへのご質問をありがとうございました。
いただきましたご質問に対する回答を植物の色素研究がご専門の愛知淑徳大学食健康科学部・教授 吉田久美先生にお願いいたしました。

【吉田先生の回答】
ご質問ありがとうございます。
実際にどのような色の葉をお使いで抽出の詳細な条件が不明ですので
一般的な返答になりますが、筆者は下記のような理由ではないかと考えております。

1)色素の抽出条件についてですが、紅葉のアントシアニンは主にはシアニジン3-グルコシドと考えられます。
構造が単純なアントシアニンは中性では不安定です。一般的には強酸性で抽出します。
たとえば1%程度の塩酸水溶液や塩酸メタノールがよく使用されます。
ただし、その際にpHを変えて発色を調べる実験の際に、緩衝液できちんとpHをコントロールする必要があります。

2)紅葉によっては、アントシアニンの量がすくなく、むしろ赤褐色のフロバフェンの方が多いと言われています。
構造としては、フラバン3-オールの重合体やクロロゲン酸などの重合体とされます。
フロバフェンはpHで色変化がおきません。

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以上、ご参考になりましたでしょうか。
植物のふしぎに関する疑問がありましたら今後またご利用ください。
吉田 久美(愛知淑徳大学食健康科学部)
JSPP広報委員長
藤田 知道
回答日:2024-12-18