一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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落葉時期のズレについて

質問者:   会社員   ち
登録番号6059   登録日:2024-12-05
家の近くにイチョウ並木があるのですが、落葉の仕方が場所によって大きく異なっています。
具体的には、東西に延びる道のわきにイチョウが植栽されており、南側のイチョウの落葉が北側に比べて遅いです。
(周囲のイチョウと比較して、北側は同程度の時期に落葉が起こっているようです。)
道の南側は土手のようになっており、そこに生育している植物によって南側のイチョウは多少日陰になっています。
この落葉のズレは、私が気づいた3年前から毎年起こっています。

南側の個体は陰になっているため日長をうまく感知できず、落葉が遅れているのではないか、または日射量の違いによって葉温に差があり、離層形成に差が生じるのではないかとも考えましたが、日陰になる程度で落葉時期に差が生じるでしょうか。
イチョウの葉は赤くならないため、光ストレスによるアントシアニン合成が促進されないという仮説も間違っている気がします。

葉の老化には様々な要因が絡んでいるようですが、どういったことが原因として考えられるでしょうか。
ち様

Q&Aコーナーへようこそ。歓迎いたします。よく観察しておられますね。
イチョウは一斉に落葉が起きることが多い様で、米国では「Ginkgo Day」と呼ばれています(登録番号2791を読んでください)。しかし、実際にはご質問のように一斉でないことも多いです。イチョウはたまたま黄金色の葉が散りますので目立つのかも知れませんが、紅葉する樹木では落葉が一斉に起きないないことは珍しくはありません。落葉という現象を一般的に考えれば、個々の葉が同調して一斉に老化・落葉するには、それぞれの葉が同じ環境条件で成長していることが必要です。葉の老化・落葉は様々な環境要因によって影響を受けます(登録番号3159, 5843を読んで下さい)。
ち さんが観察されたイチョウの樹も含めて、落葉が一斉に起こらない(同じ個体内でも)のは、樹が一本だけ、あるいは広い空間でお互いに、また他の樹に邪魔されないで育っていない場合が多いのではないでしょうか。 落葉が一斉に起きない場合のことは登録番号5792及びその回答の中に引用してある他の質問/回答を読んで下さい。
 
「イチョウの葉は赤くならないため、光ストレスによるアントシアニン合成が促進されないという仮説も間違っている気がします。」というのはどういう意味でしょうか。
イチョウは紅葉の場合と違って、クロロフィルが分解を始め、葉の老化が始まってもアントシアニンの合成は起きません。アントシアニンの合成には多くの酵素(従って遺伝子の発現)、反応のための基質が必要ですが、イチョウにはそれらは備わっていません。
勝見 允行(JSPPサイエンスアドバイザー)
回答日:2024-12-12