一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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植物の窒素吸収とその動態について

質問者:   一般   しょうた
登録番号6080   登録日:2025-01-17
植物が窒素を吸収する特性について教えてください。
植物が吸収する窒素は、有機態よりも無機態の方が優先的に吸収されますが、有機態の窒素(アミノ酸等)を与えた場合も直接吸収されることが多く報告されています。
もし無機態窒素が少ない状態で、有機態窒素だけを与えた場合、植物は有機態の窒素を優先的に吸収する様になるのでしょうか。
つまり、アミノ酸などの有機態窒素が直接吸収され、それがタンパク合成にまわることで、植物の光合成同化産物は有効に糖やビタミンに誘導される様になるのでしょうか。

植物には光合成による同化産物と無機態の窒素が結びつくことでアミノ酸・タンパク質が合成されるという機能がもともと備わっていますが、有機態窒素だけを吸収し続けると、同化産物と結びつく無機態窒素がないということなり、植物の代謝バランスが崩れてしまうということにはならないのでしょうか。

宜しくお願い致します。

しょうた 様

本コーナーへの質問、ありがとうございました。

ご指摘のように、植物は有機体窒素も利用できるとされていますが、完全な無菌状態での研究は少なく、与えた有機体窒素が分解されて無機態となった後に吸収されているとも考えているグループもいます。植物は、一般には畑状態(酸化状態)では硝酸イオン、水田状態(還元状態)ではアンモニウムイオンを吸収利用しています。硝酸イオンはアンモニウムイオンに還元されたあと、グルタミンに有機化され、種々の窒素化合物に代謝されます。有機体窒素では、アミノ酸や核酸、尿素などがすぐに考えつきますが、仮に植物がこれらを吸収したとしても、植物体内で同じ構造を保っているとは考えにくく、長距離輸送に適した形態(例えばグルタミンとかアスパラギン等が道管液や師管液の主要な窒素形態です)に変換して目的地まで輸送されます。従いまして、代謝バランスが大きく崩れることはないと思われます。

山谷 知行(JSPPサイエンスアドバイザー)
回答日:2025-01-25