質問者:
高校生
ゆーたやん
登録番号6088
登録日:2025-01-22
上手い栽培家の動画を見ると空芯菜の根元にたくさん茎があります。特に塚原農園さんなどは、9本ほどあります。仮に脇芽だとしても主軸含め3本なはず。一株であそこまでたくさんの茎が出てくるのが不思議に思ったため、質問しようと思いました。空芯菜について調べてみると、茎が地面からでているので地下茎の植物なのかなと思ったら、どうやら違うようで、いろいろ調べてみると「ひこばえ」、「不定芽」というワードに出会いました。ひこばえは切り株の根元または根から出ているので主軸の成長点を失った場合に出る脇芽のような役割であり、空芯菜は主軸を切り脇芽を伸ばしたりするので状況的には一致します。そのため、ひこばえと何か関係があるのかと思い質問しました。また、私が特に不思議と思うのは根から生えてくる場合です。普通の植物の根には地下茎における節や、脇芽となる脇の部分がないはず。にもかかわらず芽が生えてくるのはなぜかと思いました。
みんなのひろば
空芯菜における土から出てくる茎はひこばえなのか
ゆーたやん 様
回答が遅れてしまい申し訳ありません。興味深い質問、ありがとうございます。さて、クウシンサイの株ですが、私も当該のYouTubeの動画を見てみました。複数の茎が地面の近くから出てきてるように見えるので、ご指摘の通り、脇芽から伸びた茎ではないと思われます。おそらく土と接触したことによって茎に発生した不定芽が伸びたものでしょう。実際、茎から不定芽と不定根が伸びているように見えるクウシンサイの苗の写真をネットで見つけました。とはいえ、本件の茎(不定芽)が茎と根のどちらに由来するかを最終的に判断するには、掘り出して詳しく観察する必要があるかもしれません。
「ひこばえ」と本件の関係ですが、確かに株の根元から芽が出るという点では樹木で見られる「ひこばえ」と似た現象に見えます。しかし「ひこばえ」は、一見すると茎から発生した不定芽のように見えますが、実は若い時に葉の根元でつくられ休眠していた脇芽(潜伏芽)から生じる場合が多いとされます(登録番号4781, 4508, 3844, 1931など)。従って、不定芽に由来する本件のような現象とは異なるものと考えるのが良いでしょう。
さて、根に形成される不定芽の身近な例にサツマイモの種芋があります。そもそもサツマイモの芋はつる(茎)の節にできた不定根が肥大したものということでややこしいのですがあくまでも根の一種です(登録番号3731)。ご存じかもしれませんが、サツマイモの種芋は土に植えたり水に漬けておくと沢山の芽が出ます。これらの芽は芋(=根)に形成された不定芽が成長したものということになります(登録番号1757)。
根から芽が出るという現象について考えてみます。根にどのようにして芽(不定芽)が付くかというと、根の特定の組織の細胞が分裂をはじめ、できた細胞の塊から複雑な発生の過程を経て芽が分化します。根のどの組織が不定芽になるかについては、根の表面に近い細胞層から分化する場合もあれば、かなり内部の組織から分化する場合もありますが、これは植物種によって決まっています。なお、上に述べた細胞塊が芽に分化する仕組みは、種子で胚が発生したり、茎頂で茎や葉が作られる仕組みと共通するところが多いと考えられています。
ご指摘の通り、正常な植物の発生において芽がつくのは葉の付け根(節)に限られます。従って、不定芽が形成されることは「異常」な現象と言えなくもありません。とはいえ、少なくない植物種(樹木が多いようです)で根から不定芽が形成されることを考えると、植物は根の組織から芽を作り出す「潜在能力」を持つが、この成長様式にはなんらかの不利な点があり、多くの植物はこの戦略を選択していないと考えた方が良いのかもしれません。
さて、根に不定芽をつくることがその植物の生存にどのように役立つかというと、まずは、脇芽と同様、植物の個体を大きくする意義があることが考えられます。また、子孫の生息域を無性的に広げるという意味もあるでしょう。加えて、森林などにおいて地上で大きな攪乱(例えば山火事)があった際に、芽を地下に隠しておけば素早く生息域を回復することができると言われています。このような働きをするものとして地下茎が良く知られていますが、生態学的な研究を見ると、根の不定芽を利用している植物も意外と多いようです。
回答が遅れてしまい申し訳ありません。興味深い質問、ありがとうございます。さて、クウシンサイの株ですが、私も当該のYouTubeの動画を見てみました。複数の茎が地面の近くから出てきてるように見えるので、ご指摘の通り、脇芽から伸びた茎ではないと思われます。おそらく土と接触したことによって茎に発生した不定芽が伸びたものでしょう。実際、茎から不定芽と不定根が伸びているように見えるクウシンサイの苗の写真をネットで見つけました。とはいえ、本件の茎(不定芽)が茎と根のどちらに由来するかを最終的に判断するには、掘り出して詳しく観察する必要があるかもしれません。
「ひこばえ」と本件の関係ですが、確かに株の根元から芽が出るという点では樹木で見られる「ひこばえ」と似た現象に見えます。しかし「ひこばえ」は、一見すると茎から発生した不定芽のように見えますが、実は若い時に葉の根元でつくられ休眠していた脇芽(潜伏芽)から生じる場合が多いとされます(登録番号4781, 4508, 3844, 1931など)。従って、不定芽に由来する本件のような現象とは異なるものと考えるのが良いでしょう。
さて、根に形成される不定芽の身近な例にサツマイモの種芋があります。そもそもサツマイモの芋はつる(茎)の節にできた不定根が肥大したものということでややこしいのですがあくまでも根の一種です(登録番号3731)。ご存じかもしれませんが、サツマイモの種芋は土に植えたり水に漬けておくと沢山の芽が出ます。これらの芽は芋(=根)に形成された不定芽が成長したものということになります(登録番号1757)。
根から芽が出るという現象について考えてみます。根にどのようにして芽(不定芽)が付くかというと、根の特定の組織の細胞が分裂をはじめ、できた細胞の塊から複雑な発生の過程を経て芽が分化します。根のどの組織が不定芽になるかについては、根の表面に近い細胞層から分化する場合もあれば、かなり内部の組織から分化する場合もありますが、これは植物種によって決まっています。なお、上に述べた細胞塊が芽に分化する仕組みは、種子で胚が発生したり、茎頂で茎や葉が作られる仕組みと共通するところが多いと考えられています。
ご指摘の通り、正常な植物の発生において芽がつくのは葉の付け根(節)に限られます。従って、不定芽が形成されることは「異常」な現象と言えなくもありません。とはいえ、少なくない植物種(樹木が多いようです)で根から不定芽が形成されることを考えると、植物は根の組織から芽を作り出す「潜在能力」を持つが、この成長様式にはなんらかの不利な点があり、多くの植物はこの戦略を選択していないと考えた方が良いのかもしれません。
さて、根に不定芽をつくることがその植物の生存にどのように役立つかというと、まずは、脇芽と同様、植物の個体を大きくする意義があることが考えられます。また、子孫の生息域を無性的に広げるという意味もあるでしょう。加えて、森林などにおいて地上で大きな攪乱(例えば山火事)があった際に、芽を地下に隠しておけば素早く生息域を回復することができると言われています。このような働きをするものとして地下茎が良く知られていますが、生態学的な研究を見ると、根の不定芽を利用している植物も意外と多いようです。
長谷 あきら(JSPPサイエンスアドバイザー)
回答日:2025-02-07