質問者:
高校生
わさび
登録番号6109
登録日:2025-02-17
授業でサイクリック電子伝達系を学びました。そのとき、素朴なのですが疑問に思ったことがあるので教えていただきたいです。みんなのひろば
サイクリック電子伝達系
光合成をするとき、電子は光化学系II→膜状のタンパク質→光化学系Iを通り、電子と水素イオンとNADP+でNADPHになると習いました。
サイクリック電子伝達系では電子がリサイクルされるため、NADPHになるときに水素イオンと電子との数が合わず、NADPHが作られずにNADP+が蓄積したり、細胞内の水素イオン濃度が上がってしまうのでは無いかと疑問に思ったので教えてください。
わさび様
みんなのひろば、植物「Q&A」に質問をお寄せくださりありがとうございます。
サイクリック電子伝達の仕組みを研究されている、鹿内利治・京都大学教授から回答をいただきました。
【鹿内先生の回答】
どうも、わさびさんの頭の中で、電子の動きが絡まっているようです。光化学系ⅡからNADP+への電子伝達(リニア電子伝達)とサイクリック(循環的)電子伝達を、独立の電子の流れと想像してみてください。京浜東北線(リニア電子伝達)と山手線(サイクリック電子伝達)みたいなものです。実際は、電子伝達系の一部を共有していて、また、電子に印がついているわけではないので、二つの経路は完全に独立ではありません(添付図参照)、光化学系Ⅱから入ってくる電子の速度と、NADP+の還元に使われて出ていく電子の速度が一緒なら(実際ほぼ一緒です)、電子伝達系のバランスが崩れることはなく、電子伝達はリニアに進みます。おそらく授業で習ったように、リニア電子伝達では、NADP+の還元と連動して、決まった数の水素イオンをチラコイドの内側(チラコイドルーメン)に取り込むことで、ATP合成のための水素イオン勾配をつくります。一方、サイクリック電子伝達は、タンパク質複合体(膜に埋め込まれたシトクロムb6f複合体)と光化学系Ⅰを経由して循環的に電子を移動するので、NADP+を還元することなく、水素イオン勾配のみをつくります。
「細胞内の水素イオン濃度が上がってしまう」というのは、このことを考えていたのでしょうか? 細胞内をチラコイドルーメンに置き換えれば、正しいです。しかし、ルーメンに貯まった水素イオンはATP合成に消費され、サイクリック電子伝達はNADPHとATPの合成のバランスを調整する役割を担っています。C4植物では、C4光合成により多くのATPが必要なので、サイクリック電子伝達の活性が強くなります。
チラコイドルーメンに水素イオンが貯まりすぎると電子伝達にブレーキがかけられ、過剰な電子伝達による傷害を回避します。この過程にサイクリック電子伝達が関与しています。話が複雑になるので、この話に興味があれば、また質問してください。
みんなのひろば、植物「Q&A」に質問をお寄せくださりありがとうございます。
サイクリック電子伝達の仕組みを研究されている、鹿内利治・京都大学教授から回答をいただきました。
【鹿内先生の回答】
どうも、わさびさんの頭の中で、電子の動きが絡まっているようです。光化学系ⅡからNADP+への電子伝達(リニア電子伝達)とサイクリック(循環的)電子伝達を、独立の電子の流れと想像してみてください。京浜東北線(リニア電子伝達)と山手線(サイクリック電子伝達)みたいなものです。実際は、電子伝達系の一部を共有していて、また、電子に印がついているわけではないので、二つの経路は完全に独立ではありません(添付図参照)、光化学系Ⅱから入ってくる電子の速度と、NADP+の還元に使われて出ていく電子の速度が一緒なら(実際ほぼ一緒です)、電子伝達系のバランスが崩れることはなく、電子伝達はリニアに進みます。おそらく授業で習ったように、リニア電子伝達では、NADP+の還元と連動して、決まった数の水素イオンをチラコイドの内側(チラコイドルーメン)に取り込むことで、ATP合成のための水素イオン勾配をつくります。一方、サイクリック電子伝達は、タンパク質複合体(膜に埋め込まれたシトクロムb6f複合体)と光化学系Ⅰを経由して循環的に電子を移動するので、NADP+を還元することなく、水素イオン勾配のみをつくります。
「細胞内の水素イオン濃度が上がってしまう」というのは、このことを考えていたのでしょうか? 細胞内をチラコイドルーメンに置き換えれば、正しいです。しかし、ルーメンに貯まった水素イオンはATP合成に消費され、サイクリック電子伝達はNADPHとATPの合成のバランスを調整する役割を担っています。C4植物では、C4光合成により多くのATPが必要なので、サイクリック電子伝達の活性が強くなります。
チラコイドルーメンに水素イオンが貯まりすぎると電子伝達にブレーキがかけられ、過剰な電子伝達による傷害を回避します。この過程にサイクリック電子伝達が関与しています。話が複雑になるので、この話に興味があれば、また質問してください。
鹿内 利治(京都大学)
JSPPサイエンスアドバイザー
宮尾 光恵
回答日:2025-03-26
宮尾 光恵
回答日:2025-03-26