一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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光発芽種子の光の当て方による発芽の違い

質問者:   高校生   みかん
登録番号6123   登録日:2025-03-15
光発芽種子が赤色光に反応しジベレリンが合成され発芽が促進されるという現象を利用した実験を行いたいと考えています。
その際に、独立変数として光の当て方を変えるという手段をとりたいと考えました。
私が考えたものとして、ストロボ発光(断続的な光照射)を行いたいと考えました。そこで、

①似たような実験を行った例や予測される仮説について現在の知見から言えること
②光発芽種子の性質が顕著に出やすい植物や品種

について教えていただけませんでしょうか。
みかん 様

 ご質問をありがとうございます。

 質問の趣旨が良く分からないところもありますが、あえて回答いたします。ストロボ発光をどのように使うのか定かでは無いのですが、一発の閃光で発芽を誘導するということでしたら、「相反則」がなりたつため、与えた光量に応じた反応が起こると予想されます。適度な間隔(例えば1秒以上)で複数回の照射を行った場合、効果は回数に比例して大きくなります。このような応答は、連続的に発光する電球や、高速(100もしくは120Hz)で点滅している蛍光灯に対する応答と基本的に同じです。ただし、ストロボ光の強度やパルス幅を測定することはとても難しく、光発芽誘導が何回のストロボ照射で起こるかはやってみないと分かりません。

 一方、赤と遠赤色光を短時間(ミリ秒単位)の間隔で交互あるいは順番に当て光可逆性を確かめるということであれば話は変わります。とはいえ、2つの波長をミリ秒間隔で照射するのは非常に難しく簡単にできる実験ではありません。仮にこれが実現できた場合、赤色光パルスの後に十分な光量の遠赤色光を照射しても、まだPfrへの変換が完了する前の中間体が大部分を占めるため、Prへの逆変換が十分に見られないという結果になると予想されます。なお、秒~分単位の照射を行った場合でも中間体は生じますが、その相対量は小さいため無視できます。フィトクロムの光変換の中間体について詳しく知りたい場合は、ネット等でお調べください。

 光発芽の実験に適した植物材料については、過去の回答(登録番号2647, 2895など)を参照ください。一つ、私自身の経験を付け加えさせていただくと、園芸店で手に入りやすい種子としては、ハーブ類の種子で良い結果となる傾向が見られました。想像ですが、品種改良された野菜よりはハーブ類の方がより野性味を残しているのかもしれません。

 最後に、本回答を用意するにあたり、大阪府立大名誉教授の徳富哲先生からフィトクロムの光変換に関する様々な助言をいただきました。この場を借りて感謝いたします。
長谷 あきら(JSPPサイエンスアドバイザー)
回答日:2025-03-26