質問者:
教員
コツメカワウソ
登録番号6125
登録日:2025-03-17
生物の教科書では,『光発芽種子は,フィトクロムによる赤色光の受容によってジベレリンの増大,アブシシン酸の減少により,発芽が促進される。』とある。みんなのひろば
発芽と光受容体について
しかし,インターネットで調べると,青色光も発芽を促進するという内容も見つかる。青色光も発芽を促進するのなら,青色光を受容する光受容体も関与しているのでしょうか?
その場合,光受容体はフォトトロピンとクリプトクロムのどちらで,どのような作用を引き起こしているのでしょうか?
コツメカワウソ様
こんにちは。日本植物生理学会の植物Q&Aコーナーに寄せられたあなたのご質問「発芽と光受容体について」にお答えします。
仰る通り、一般には「光発芽種子はフィトクロムによる赤色光の受容によってジベレリンの増大とアブシジン酸の減少により発芽が促進されます」 多くの場合、青色光は、逆に、ジベレリンの増加を抑制しアブシジン酸の増加を誘導することで種子発芽を抑制します。この青色光作用にはクリプトクロムが光受容体として機能しています。
しかし、青色光が種子発芽を促進する例も見つかっています。
Stawska<https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/?term=Stawska+M&cauthor_id=31771191>
とOracz<https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/?term=Oracz+K&cauthor_id=31771191>
が2019年に報告したシロイヌナズナの種子発芽は青色光照射で促進されます。このときクリプトクロム遺伝子CRY1 とCRY2 の発現は光条件で変化せず、CRY1 とCRY2を欠損しているcry1cry2二重変異体では青色光による発芽促進は正常に起こるものの、フィトクロム遺伝子PHYBを欠損しているphyB変異体は青色光に応答しません。さらに、青色光照射の後に遠赤色光を照射すると発芽促進効果は低下します。これらのことから、青色光による発芽促進に関与するのはクリプトクロムではなくフィトクロムphyBであることが明らかになりました。また、この青色光の効果はアブシジン酸やジベレリン生合成阻害剤パクロブトラゾールで抑制されました。
フィトクロムは赤色と遠赤色の領域に吸収極大があるのですが、青色光領域にも吸収帯を持ちますので、フィトクロムは青色光受容体 としても機能することができます。上記の例では、この領域で吸収された青色光が働いて十分な量の活性型フィトクロムPfrが生じたものと思われます。また、青色光照射効果がアブシジン酸やパクロブトラゾールで抑制されることはフィトクロムを介した発芽促進の場合と同じですので、青色光受容から先の作用過程は赤色光による発芽の場合と同じと言ってよいでしょう。
青色光が種子発芽を促進する例はワタやサクラソウの仲間キバナノクリンザクラなどでも報告されています。
こんにちは。日本植物生理学会の植物Q&Aコーナーに寄せられたあなたのご質問「発芽と光受容体について」にお答えします。
仰る通り、一般には「光発芽種子はフィトクロムによる赤色光の受容によってジベレリンの増大とアブシジン酸の減少により発芽が促進されます」 多くの場合、青色光は、逆に、ジベレリンの増加を抑制しアブシジン酸の増加を誘導することで種子発芽を抑制します。この青色光作用にはクリプトクロムが光受容体として機能しています。
しかし、青色光が種子発芽を促進する例も見つかっています。
Stawska<https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/?term=Stawska+M&cauthor_id=31771191>
とOracz<https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/?term=Oracz+K&cauthor_id=31771191>
が2019年に報告したシロイヌナズナの種子発芽は青色光照射で促進されます。このときクリプトクロム遺伝子CRY1 とCRY2 の発現は光条件で変化せず、CRY1 とCRY2を欠損しているcry1cry2二重変異体では青色光による発芽促進は正常に起こるものの、フィトクロム遺伝子PHYBを欠損しているphyB変異体は青色光に応答しません。さらに、青色光照射の後に遠赤色光を照射すると発芽促進効果は低下します。これらのことから、青色光による発芽促進に関与するのはクリプトクロムではなくフィトクロムphyBであることが明らかになりました。また、この青色光の効果はアブシジン酸やジベレリン生合成阻害剤パクロブトラゾールで抑制されました。
フィトクロムは赤色と遠赤色の領域に吸収極大があるのですが、青色光領域にも吸収帯を持ちますので、フィトクロムは青色光受容体 としても機能することができます。上記の例では、この領域で吸収された青色光が働いて十分な量の活性型フィトクロムPfrが生じたものと思われます。また、青色光照射効果がアブシジン酸やパクロブトラゾールで抑制されることはフィトクロムを介した発芽促進の場合と同じですので、青色光受容から先の作用過程は赤色光による発芽の場合と同じと言ってよいでしょう。
青色光が種子発芽を促進する例はワタやサクラソウの仲間キバナノクリンザクラなどでも報告されています。
竹能 清俊(JSPPサイエンスアドバイザー)
回答日:2025-04-07