質問者:
一般
フィカス大好き
登録番号6127
登録日:2025-03-20
趣味でフィカスを栽培しているものです。みんなのひろば
オオイタビが成葉となる条件は何か
登攀して成木となると、幼木の時とは全く異なる大きな葉を展開するつる性のフィカスがいくつかありますが、どのように成葉を出すかを決めているのでしょうか?
どうなれば「成木になった」と判断しているのでしょうか?
単に幹の太さ、年齢によって決まるのでしょうか。
Wikiでは、「植木鉢では成葉は生じない」と書いてありました。
植木鉢は、何十年経っても成葉は生じないのですか?
フィカス大好き様
みんなのひろば、植物Q&Aのコーナーへご質問いただきありがとうございました。ご質問への回答は、葉の形作りやその進化をご研究されている東京大学大学院理学系研究科 教授 塚谷裕一先生にお願いいたしました。
【塚谷先生の回答】
フィカス大好きさん
質問をありがとうございます。
幼葉と成葉との使い分けは、大多数の植物で多かれ少なかれ見られる現象なので、多くの研究者が取り組んでいます。最も理解の進んでいるシロイヌナズナやトウモロコシなどでは、その制御に関わる遺伝子の解明も進んでいます。その結果、そういう制御遺伝子がどういうきっかけではたらきを変えるのかについては、最近、植物が自分で稼いだ光合成産物(糖とかデンプンで貯めている分ですね)の蓄積量が鍵となっているという報告が、出ています。これは、植物が光合成で栄養源を獲得する生き方をしていることからすると、大変理屈にあった仕組みですよね。からだの大きさ(幹の太さ)とか、タネから芽生えて何日経ったか(年齢)といった単純な基準で成熟のタイミングを決めてしまうと、環境による栄養状態の違いが反映されなくなってしまいますから。そうではなく、光合成の実績とその蓄積を基準にしているというわけです。実際に自然界でいろいろな植物の幼葉と成葉との作り分けを見ていると、やはり単なる体の大きさや古さで決まっているのではなさそうです。それよりは、生きてきてこれまでにどれだけ光合成で稼げてきたか、その実績でおとなになるかどうかが決まるというのは、植物らしい仕組みだと思います。おそらくシロイヌナズナで見つかってきたこうした仕組みは、多くの植物が共通して持っているのではないでしょうか。
ですのでフィカスも同じだろうと思います。植木鉢でも、しっかり光合成をさせ、体を太らせてやれば鉢植えでも成葉ができると思います。
ちなみにツル性で似たことをする日本在来の植物にテイカカズラがありますね。あれは私自身、子どもの頃に林から幼葉をつけた小さい個体を採ってきて育てたことがあります。幼葉をつけるツルは地面を這いつづけ、たしかになかなか成葉にはなりませんでしたが、あるとき突然、上に向かって伸びるツルが出始め、そこには成葉ができました。また別のときに、成葉で花を咲かせている枝を挿し木して、鉢植えで育てていたことがありますが、それは毎年成葉をつけて花を咲かせていたのに、ある年に地面におろしたところ、根本から続々と幼葉をつけたツルを出して地面を這い始めました。
このように、成葉をつける枝と幼葉をつける枝は、環境次第で実は交互に入れ替わることも可能なのです。そのような「可塑性」についても念頭に置いてぜひ大事に育ててみてください。
==========
光合成の成果に応じて遺伝子の制御が変化し、葉の作り分けが行われているのですね。またフィカス大好きさんのフィカスでも、実際に成葉と幼葉の入れ替えが可能なのだろうか、と私も興味を持ちました。
本コーナーでは植物のふしぎに関する質問を受け付けております。また不思議に思われたことがありましたらQ&Aコーナーをお訪ねください。
みんなのひろば、植物Q&Aのコーナーへご質問いただきありがとうございました。ご質問への回答は、葉の形作りやその進化をご研究されている東京大学大学院理学系研究科 教授 塚谷裕一先生にお願いいたしました。
【塚谷先生の回答】
フィカス大好きさん
質問をありがとうございます。
幼葉と成葉との使い分けは、大多数の植物で多かれ少なかれ見られる現象なので、多くの研究者が取り組んでいます。最も理解の進んでいるシロイヌナズナやトウモロコシなどでは、その制御に関わる遺伝子の解明も進んでいます。その結果、そういう制御遺伝子がどういうきっかけではたらきを変えるのかについては、最近、植物が自分で稼いだ光合成産物(糖とかデンプンで貯めている分ですね)の蓄積量が鍵となっているという報告が、出ています。これは、植物が光合成で栄養源を獲得する生き方をしていることからすると、大変理屈にあった仕組みですよね。からだの大きさ(幹の太さ)とか、タネから芽生えて何日経ったか(年齢)といった単純な基準で成熟のタイミングを決めてしまうと、環境による栄養状態の違いが反映されなくなってしまいますから。そうではなく、光合成の実績とその蓄積を基準にしているというわけです。実際に自然界でいろいろな植物の幼葉と成葉との作り分けを見ていると、やはり単なる体の大きさや古さで決まっているのではなさそうです。それよりは、生きてきてこれまでにどれだけ光合成で稼げてきたか、その実績でおとなになるかどうかが決まるというのは、植物らしい仕組みだと思います。おそらくシロイヌナズナで見つかってきたこうした仕組みは、多くの植物が共通して持っているのではないでしょうか。
ですのでフィカスも同じだろうと思います。植木鉢でも、しっかり光合成をさせ、体を太らせてやれば鉢植えでも成葉ができると思います。
ちなみにツル性で似たことをする日本在来の植物にテイカカズラがありますね。あれは私自身、子どもの頃に林から幼葉をつけた小さい個体を採ってきて育てたことがあります。幼葉をつけるツルは地面を這いつづけ、たしかになかなか成葉にはなりませんでしたが、あるとき突然、上に向かって伸びるツルが出始め、そこには成葉ができました。また別のときに、成葉で花を咲かせている枝を挿し木して、鉢植えで育てていたことがありますが、それは毎年成葉をつけて花を咲かせていたのに、ある年に地面におろしたところ、根本から続々と幼葉をつけたツルを出して地面を這い始めました。
このように、成葉をつける枝と幼葉をつける枝は、環境次第で実は交互に入れ替わることも可能なのです。そのような「可塑性」についても念頭に置いてぜひ大事に育ててみてください。
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光合成の成果に応じて遺伝子の制御が変化し、葉の作り分けが行われているのですね。またフィカス大好きさんのフィカスでも、実際に成葉と幼葉の入れ替えが可能なのだろうか、と私も興味を持ちました。
本コーナーでは植物のふしぎに関する質問を受け付けております。また不思議に思われたことがありましたらQ&Aコーナーをお訪ねください。
塚谷 裕一(東京大学大学院理学系研究科)
JSPP広報委員長
藤田 知道
回答日:2025-04-03
藤田 知道
回答日:2025-04-03