一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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なぜ峨眉山イヌビワはイヌビワコバチの介在無しで発芽する種子が出来るのか?

質問者:   一般   フィカス大好き
登録番号6129   登録日:2025-03-20
どこを探しても、イヌビワはイヌビワコバチの介在無しでは受粉しないと書いてありますが、峨眉山イヌビワの種子を撒くと発芽しました。
これは下記の説明における「餌として利用されなかったから」が理由なのでしょうか?ご教授願います。

登録番号0228
もし雄株のなかにある雌花が不稔性だったら,花粉を運ぶイヌビワコバチを育てることができず,イヌビワもコバチも次世代を維持できません.雄株の雌花はコバチによって運ばれた花粉で受精し,種子形成を開始します.でも雄株の種子の中身はコバチの餌として利用されるため,種子まで成長できません.従って,イヌビワ雄株の雌花は不稔ではないが,ふつう種子はできません.
フィカス大好き様

 Q&Aコーナーへようこそ。歓迎いたします。
 峨眉山イヌビワという名前は知りませんでしたので、調べたところ、中国四川省の峨眉山で採集され、日本にもたらされました。果実がイヌビワに似ているので峨眉山イヌビワと呼ばれているようです。また、葉がヒイラギに似ているので、ヒイラギイヌビワともいうようですね。この植物は米国でも日本と同じように園芸植物として人気があり、クリスマスフィグ(figはイチジクのこと)といいます。

 質問で引用されているように、イヌビワハは雌雄異株で、受粉にはイヌビワコバチが必要です。峨眉山イヌビワも名前からして同じような現象があると思い、いろいろ調べたところ、イヌビワ(Ficus erecta Thumb)と峨眉山イヌビワとは種が異なることがわかりました。同じFicus 属ではありますが、峨眉山イヌビワは Ficus gasparriniana var. laceratifolia(H.Lév. & Vaniot) Corner という植物で、最初の分類学上の記載はGard. Bull. Singapore 17: 428 (1960)にあります。同意語(シノニム)にはFicus bhotanica
<https://powo.science.kew.org/taxon/urn:lsid:ipni.org:names:852492-1> があります。
 峨眉山イヌビワは両性花で、コバエの仲介がなくても受粉・結実・種子形成が見られます。したがって、フィカス大好き様の峨眉山イヌビワに種子ができて、蒔けばそれが発芽するのは全く自然なことです。<http://www2.kobe-c.ed.jp/shimin/shiraiwa/ichijiku/jiku5.html>
勝見 允行(JSPPサイエンスアドバイザー)
回答日:2025-03-29