一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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ポリポットで育苗に関して

質問者:   会社員   まほろ
登録番号6138   登録日:2025-04-14
私は独学で草木染に使用する染料植物の栽培と自家消費での野菜を栽培してきましたが、野菜の栽培方法を正しく学ぼうと思い、とある農業大学に入校しました。

先日、授業で野菜の苗のポリポットの鉢替え実習がありました。サイズアップするポリポットには鉢底ネットなどを利用せず、底穴がそのままの状態に育苗培土を入れて鉢替えをするよう指示がありました。

私が過去、行ってきた野菜のポリポットでの育苗では、必ず鉢底ネットをしてきましたので、とても驚きました。
冷静に考えてみると、お店で販売されている野菜のポリポットの苗にも鉢底ネットが無いということに気づきました。

ですが、なぜ、培土が底の穴から流れ出ないのか理由がわからなかったため、学校の先生に質問したところ、明確な理由を教えてはいただけませんでした。
そこで質問させていただきたいのですが、ポリポットでの栽培においては鉢底ネットは必要無いのでしょうか?
理由を教えて頂けると幸いでございます。
何卒よろしくお願い申し上げます。
まほろ 様

本コーナーへの質問、ありがとうございました。
種苗会社サカタのタネお客様相談室長の村松伸一さまから、下記の回答を頂きました。

【村松伸一さまからの回答】

 一般的な丸型で底に円形の穴がひとつだけ開いているポリポットを想定して回答いたします。
 培養土は適度に湿っていると粘り気があり、粒子がお互いにくっつき合って、大量に流出することはありません。逆に、乾燥しているとサラサラの砂のように大量に流出してしまいます。とは言え、湿っていても多少の流出は起こります。
 そこで、培養土が流れ出ないことを最優先にするのであれば、鉢底ネットを敷くことは非常に効果な方法です。しかし、鉢底ネットを敷くことで水はけが悪くなり、根傷みのために生育が悪くなるという事例が発生したため、一般的には培養土流出防止よりも根痛みを防ぐことを優先し、ポリポットに鉢底ネットは不要とされています。また、鉢底ネットを敷く労力を考えると少しの流出には目をつむるという考えもあるようです。
 なお、大きめの鉢であれば、鉢底ネットの上に鉢底石を数センチ入れることで培養土流出と根痛みの両方を防ぐことが可能ですが、ポリポットの場合は鉢底石を入れることで培養土量がかなり少なくなってしまうため、現実的な方法ではありません。ポリポットの構造を改良して、培養土流出と根痛みを軽減できる商品がいくつか販売されております(例えば、弊社「Yポット」など)ので、そのような商品の利用も選択肢のひとつです。
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村松 伸一(サカタのタネ)
JSPPサイエンスアドバイザー
山谷 知行
回答日:2025-04-28