質問者:
その他
S
登録番号6141
登録日:2025-04-16
5年目くらいになる鉢植えの梅の木があるのですが、毎年2月頃に花が咲き、今新しく葉が出てきています。2回目の梅の花?
S様
こんにちは。日本植物生理学会の植物Q&Aコーナーに寄せられたあなたのご質問「2回目の梅の花?」にお答えします。
これは難しい問題で、確かなことは分かりませんが、考えられることをいくつか列挙してみます。
季節外れの狂い咲きならばしばしばあることで、最も考えやすいのですが、それならば本来の2月の花と同じ花が咲くはずです。しかし、写真を拝見すると、2月と4月の花は同じ花のようには見えません。4月の花は2月の本来の花の倍ほどもあるということですし、花弁の色は薄ピンクなのに対して純白、萼は赤色に対して緑色、花の中心部はオレンジ色に対して白色という違いがあります。異なる形質の花が咲いたということになり、単なる狂い咲きではないようです。
本来のものとは違う花が咲いたのだとすれば枝変わりの可能性が考えられます。芽の茎頂分裂組織で突然変異が起こり、その芽から発達した枝に変異した花が咲いたのかもしれません。しかし、遺伝子に変異が起こる頻度は非常に低いものですから、このウメのように開花時期や花の大きさと多様な形質が同時に変異することは考えにくいです。枝変わりでもないようです。
他に考えられることとしては、このウメは接木されたものであって、台木に発生した枝が伸びて花を着けたのではないかということがあります。接木では穂木とは異なる品種または種を台木として使いますから、台木からたまたま伸び出した枝に花が咲いたとすれば、穂木とは違う花が咲くことになります。4月の花は花の特徴から見てウメではないように見えますので、近縁のバラ科植物を台木とした接木が行われて台木由来の花が咲いたとすれば辻褄が合います。ウメの接木苗は市販されていますので、一般的に使われる台木が何であるかが分かればヒントになるのですが、そのような情報は見つかりませんでした。
接木であるならば、接木部位を境にして台木と穂木の間に幹の太さなどの差があるでしょうから、それと分かると思います。4月に花を着けた枝は新しく伸びた枝だということですので、その枝が台木から伸び出したものならば台木植物の花が咲いたということになります。接木部位らしい所が見つからない場合でも、問題の枝が株の下の方、根際付近から出ていれば台木由来の枝である可能性が高いと思います。接木かどうか、接木なら問題の枝はどこから出ているかを調べてみてください。
<追加の質問>
ご見解をありがとうございます。
考えられる最有力の接木ですが、素人目では判断が難しいですが、そのような箇所が見当たらず違うような気がします。
木全体の写真を添付いたします。
赤◯で囲っている枝が今回の花がついた枝です。<写真省略>
ちなみに、この梅の木は4〜5年ほど前に大きな門松の鉢植え(本物の竹が入っているような大きなもの)を花屋さんに頼んだ際に、一緒に植えてあったものを小さい鉢に植え直したものです。
<追加の質問への回答>
確かに接木の有無の判断は難しいですね。しかし、問題の枝が出ている場所より下の幹の部分に注目した時、その部分の地際から上2/3位の辺りに何となく不連続があるように見え、そこから上の方が下の方より太いようですので、この辺りで接木されたように見えないでもないです。ただし、そうであったとしても、枝が発生しているのはこの辺りより上の穂木(かもしれない部分)からなので、問題の枝が台木由来だとは言えません。しかし、接木されたとして、その接木部分でキメラが生じ、キメラ部分から枝が発生したという可能性も排除できません。キメラについてはQ&Aコーナーの登録番号0465, 4405をご覧ください。
接木に拘っているのは、この現象をうまく説明できる合理的な仮説を他に思いつかないからです。接木であることを証明できなかったとなると、接木説を検証するには、逆に、これを否定できるかどうかを調べれば良いことになります。そのためには、接木であるとすれば間違いなく台木由来と言える枝が着ける花が穂木と同じ本来のウメの花であるかどうかを確かめればいいです。地際からたくさんのひこばえが発生していますから、これらがそのような枝に該当します。これらのひこばえを大事に育ててどのような花が咲くか調べるとよいと思います。随分丁寧に剪定されているようですので、ひこばえも切られてしまいそうですが、見栄えが悪くなるのを少し我慢して花芽が着くまで待ってみてはどうでしょうか?
また、今回の不思議な花の枝も切らずに保持して、来年どんな花が咲くか見てみることをお勧めします。今年と同じ花が咲けば、接木が否定されなければキメラ説、接木が否定されれば前回答で否定した枝変わり説が有力になり、今年とは違って本来のウメの花が咲けば、今年は原因不明の異常が起こったということになります。
簡単には解決出来ない問題だと思いますが、それ故楽しい話ではあります。
こんにちは。日本植物生理学会の植物Q&Aコーナーに寄せられたあなたのご質問「2回目の梅の花?」にお答えします。
これは難しい問題で、確かなことは分かりませんが、考えられることをいくつか列挙してみます。
季節外れの狂い咲きならばしばしばあることで、最も考えやすいのですが、それならば本来の2月の花と同じ花が咲くはずです。しかし、写真を拝見すると、2月と4月の花は同じ花のようには見えません。4月の花は2月の本来の花の倍ほどもあるということですし、花弁の色は薄ピンクなのに対して純白、萼は赤色に対して緑色、花の中心部はオレンジ色に対して白色という違いがあります。異なる形質の花が咲いたということになり、単なる狂い咲きではないようです。
本来のものとは違う花が咲いたのだとすれば枝変わりの可能性が考えられます。芽の茎頂分裂組織で突然変異が起こり、その芽から発達した枝に変異した花が咲いたのかもしれません。しかし、遺伝子に変異が起こる頻度は非常に低いものですから、このウメのように開花時期や花の大きさと多様な形質が同時に変異することは考えにくいです。枝変わりでもないようです。
他に考えられることとしては、このウメは接木されたものであって、台木に発生した枝が伸びて花を着けたのではないかということがあります。接木では穂木とは異なる品種または種を台木として使いますから、台木からたまたま伸び出した枝に花が咲いたとすれば、穂木とは違う花が咲くことになります。4月の花は花の特徴から見てウメではないように見えますので、近縁のバラ科植物を台木とした接木が行われて台木由来の花が咲いたとすれば辻褄が合います。ウメの接木苗は市販されていますので、一般的に使われる台木が何であるかが分かればヒントになるのですが、そのような情報は見つかりませんでした。
接木であるならば、接木部位を境にして台木と穂木の間に幹の太さなどの差があるでしょうから、それと分かると思います。4月に花を着けた枝は新しく伸びた枝だということですので、その枝が台木から伸び出したものならば台木植物の花が咲いたということになります。接木部位らしい所が見つからない場合でも、問題の枝が株の下の方、根際付近から出ていれば台木由来の枝である可能性が高いと思います。接木かどうか、接木なら問題の枝はどこから出ているかを調べてみてください。
<追加の質問>
ご見解をありがとうございます。
考えられる最有力の接木ですが、素人目では判断が難しいですが、そのような箇所が見当たらず違うような気がします。
木全体の写真を添付いたします。
赤◯で囲っている枝が今回の花がついた枝です。<写真省略>
ちなみに、この梅の木は4〜5年ほど前に大きな門松の鉢植え(本物の竹が入っているような大きなもの)を花屋さんに頼んだ際に、一緒に植えてあったものを小さい鉢に植え直したものです。
<追加の質問への回答>
確かに接木の有無の判断は難しいですね。しかし、問題の枝が出ている場所より下の幹の部分に注目した時、その部分の地際から上2/3位の辺りに何となく不連続があるように見え、そこから上の方が下の方より太いようですので、この辺りで接木されたように見えないでもないです。ただし、そうであったとしても、枝が発生しているのはこの辺りより上の穂木(かもしれない部分)からなので、問題の枝が台木由来だとは言えません。しかし、接木されたとして、その接木部分でキメラが生じ、キメラ部分から枝が発生したという可能性も排除できません。キメラについてはQ&Aコーナーの登録番号0465, 4405をご覧ください。
接木に拘っているのは、この現象をうまく説明できる合理的な仮説を他に思いつかないからです。接木であることを証明できなかったとなると、接木説を検証するには、逆に、これを否定できるかどうかを調べれば良いことになります。そのためには、接木であるとすれば間違いなく台木由来と言える枝が着ける花が穂木と同じ本来のウメの花であるかどうかを確かめればいいです。地際からたくさんのひこばえが発生していますから、これらがそのような枝に該当します。これらのひこばえを大事に育ててどのような花が咲くか調べるとよいと思います。随分丁寧に剪定されているようですので、ひこばえも切られてしまいそうですが、見栄えが悪くなるのを少し我慢して花芽が着くまで待ってみてはどうでしょうか?
また、今回の不思議な花の枝も切らずに保持して、来年どんな花が咲くか見てみることをお勧めします。今年と同じ花が咲けば、接木が否定されなければキメラ説、接木が否定されれば前回答で否定した枝変わり説が有力になり、今年とは違って本来のウメの花が咲けば、今年は原因不明の異常が起こったということになります。
簡単には解決出来ない問題だと思いますが、それ故楽しい話ではあります。
竹能 清俊(JSPPサイエンスアドバイザー)
回答日:2025-04-28