一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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アサガオの土壌成分による花の色の変化について

質問者:   高校生   ゆうき
登録番号6142   登録日:2025-04-18
こんにちは、ある高校3学年の生徒です。質問させていただく内容は今回課題研究でアサガオの土壌成分によって花の色が変わることについて調べることにしました。期間は役8ヶ月ほどしかなく播種してから育てるとなると間に合わないことがわかりました。土壌がアルカリ性なのか中性なのか酸性なのかと言うことで花がどの色を吸収してどの色を反射するのかと言うところまで調べて理解しました。実際にこれを行い研究結果を出すと言うものなのですが播種してからでは間に合わないので苗や実際に咲いた花の土壌成分を少しずつ変えてやってみようと思うのですがこれでできるのですか?それとほかにもし良いやり方がありましたら教えていただけるとありがたいです。ご返答お待ちしております、よろしくお願いします。
ゆうきさん

ご質問ありがとうございます。

土壌の酸性度の違いによって花色が変わる現象は、アジサイでよく知られています。
その理由として、土壌が酸性(pH5以下)だと土壌中のアルミニウムイオンが水に溶ける形で存在し、根から吸収され、それがガク片(アジサイは装飾花で実際にはあれはガクです)まで移動してそこで、アントシアニンや助色素を青色の錯体を形成するからです。
通常、アルミニウムイオンは植物にとっては毒で、酸性土壌では生育が不良となる植物が多いのですが、アジサイはアルミニウムに耐性を持つ植物であるため、酸性土壌でも生育します。
中性土壌(pH5.5以上6.5程度まで)では、アルミニウムイオンは、水酸化アルミニウムとなって水に不溶となります。そのため、根から吸収されませんので、ガクでも錯体を形成できなくなり、赤色となります。

一方、アルカリ性土壌では、鉄イオンが水酸化鉄となり、水に不溶となるため、生物に必須の成分である鉄イオンが不足して、生育不良が起きます。

すなわち、土壌にはたくさんの無機、有機成分が含まれていますが、土壌の酸性度の違いによって大きく変わるのは、無機イオン類の水溶性で、水に溶けない成分は基本的には、吸収されないため、その有無の影響がでることになろうかと思います。

アサガオの花色は、白、赤、紫、青とありますが、色のあるものは、ほぼアントシアニンによって発色しています。
ただし、ほとんどが、色素そのものの色であり、金属イオンが影響することは稀と思います。
ツボミが赤くて咲くと青くなるアサガオの場合も、色素が溶けている液胞のpHが変化しているのであり、金属イオンの影響ではありません。

もちろん、他の成分、窒素、リン酸、カリウムの土壌中の量やバランスによって、あるいは、土壌中の微生物や有機成分の違いによって、植物の成長が影響を受け、それが色素の生合成になんらか影響がある場合には、色の変化もあるかもしれませんが、私自身は、あまり経験がありません。むしろ、成長する際の温度や日照条件が花色素の生合成に影響するという研究結果はあるかと思います。

どのような花色の変化、色が変わることを考えておられるのか、色の濃淡が変わることを期待しておられるのか不明ですが、予備実験やこれまでの観察なしで、いきなり花の色の変化を期待することは、難しいのではないでしょうか。
なにしろ、花は、植物の生活環で最後の方のステージで、そこまで育てるのに時間がかかりますから。芽生えや双葉までの成長の観察とくらべて、うんと時間がかかります。
そこは大変ではないかなと思います。

アサガオとアジサイの花色、および土壌の酸性度については、みんなのひろばの植物Q&Aにもたくさん質問と返答が掲載されていますので、
それも検索してみてください。
吉田 久美(JSPPサイエンスアドバイザー)
回答日:2025-04-22