質問者:
その他
花咲か爺
登録番号6165
登録日:2025-05-11
自家不和合性とは、まったく実を付けないことなのでしょうか、実を付けてもすぐに落果することも含むのでしょうか。自家不和合性とは
堤防上に35本のソメイヨシノの並木があり、そのうちの1本だけに、毎年多くの実が付きます。一昨年、実を拾って播種したところ、芽を出し、元気に成育しています。
不和合性の遺伝子に突然変異が起きているようなことは皆無であり、他家受粉によるものであって、その木の樹勢、栄養状態により、その木に多くの実が付くのであろうという、二、三のアドバイスをいただきました。
今年、1枝を収穫用網ネットで覆い、その枝内で開花を始めて(4月1日)から、30花くらいの満開になり(4月5日)、その後も4月10日まではネットをかけたままにしておきました。満開になるまでは、毎日、ネットを外して、筆を使って枝内で人工授粉をしました。4月14日に実が付き始め、何個か実が付きましたが、4月17日には実が2個になり、5月3日には最後まで残った2個も落果しました。覆いをしていない枝には、例年どおり、たくさんの実が付いています。
すぐに落果したものの、一旦は自家受粉で結実したのであれば、自家不和合性が崩壊していると言えないでしょうか。
花咲か爺様
こんにちは。日本植物生理学会の植物Q&Aコーナーに寄せられたあなたのご質問「自家不和合性とは」にお答えします。
結実と落果は別々の現象ですから、自家不和合性というのは実をつけないことであって、一旦実をつけてもすぐに落果することは含みません。
自家不和合性であるはずのソメイヨシノが自家受粉で結実したのであれば、この個体は自家不和合性が不完全であると言えます。しかし、そのこととすぐに落果したことは直接には関係ありません。この実験では自家不和合性が不完全であることが分かったのですから、自家不和合性というのは一旦実をつけてもすぐに落果する場合も含むのかという発想(すぐに落果した原因は自家不和合性にあるのかという発想)は出てこないように思います。
自家受粉で着いた果実が落果し、覆いをしていない枝にはたくさんの実がついたとのことですが、どちらの枝も同一個体(自家不和合性が不完全であると分かった個体)の枝であって、自家和合性の花との比較がされているわけではないので、落果と自家不和合性の関係は議論できません。すぐに落果したことに注目するならば、別の実験が必要です。
落果の問題はさて置き、この実験の重要な点は、自家不和合性であるはずのソメイヨシノが自家受粉で結実したということです。これは意外な結果であり、しっかり考察するべき問題です。この個体は毎年多くの実を着けるということでもありますから、自家不和合性が不完全だと結論してよいと思います。自家不和合性は様々な要因で打破されるようです。本Q&Aコーナーの登録番号1186, 3459, 3866, 4093, 4721などをご覧ください。これらで紹介されている要因の多くは実験処理によるものなので、人為的な処理を加えていない個体で自家不和合性が不完全になった原因はよく分かりません。一つ考えうるのは植物体の老化でしょうか。しかし、この個体は35本の並木のうちの1本だということなので、おそらく同時に植栽されたものでしょうから、この木だけが老化したとは考えにくいです。また、ソメイヨシノの老木がたくさんの果実を着けるという話は聞きません。そうすると、可能性としては突然変異によって自家和合性に変化したことが考えられます。突然変異だとすれば枝変わりしたものが接木で成木化されたものかもしれません。突然変異の可能性については自家不和合性に関与する遺伝子の構造を解析すれば検証できると思いますが、簡単ではありません。
こんにちは。日本植物生理学会の植物Q&Aコーナーに寄せられたあなたのご質問「自家不和合性とは」にお答えします。
結実と落果は別々の現象ですから、自家不和合性というのは実をつけないことであって、一旦実をつけてもすぐに落果することは含みません。
自家不和合性であるはずのソメイヨシノが自家受粉で結実したのであれば、この個体は自家不和合性が不完全であると言えます。しかし、そのこととすぐに落果したことは直接には関係ありません。この実験では自家不和合性が不完全であることが分かったのですから、自家不和合性というのは一旦実をつけてもすぐに落果する場合も含むのかという発想(すぐに落果した原因は自家不和合性にあるのかという発想)は出てこないように思います。
自家受粉で着いた果実が落果し、覆いをしていない枝にはたくさんの実がついたとのことですが、どちらの枝も同一個体(自家不和合性が不完全であると分かった個体)の枝であって、自家和合性の花との比較がされているわけではないので、落果と自家不和合性の関係は議論できません。すぐに落果したことに注目するならば、別の実験が必要です。
落果の問題はさて置き、この実験の重要な点は、自家不和合性であるはずのソメイヨシノが自家受粉で結実したということです。これは意外な結果であり、しっかり考察するべき問題です。この個体は毎年多くの実を着けるということでもありますから、自家不和合性が不完全だと結論してよいと思います。自家不和合性は様々な要因で打破されるようです。本Q&Aコーナーの登録番号1186, 3459, 3866, 4093, 4721などをご覧ください。これらで紹介されている要因の多くは実験処理によるものなので、人為的な処理を加えていない個体で自家不和合性が不完全になった原因はよく分かりません。一つ考えうるのは植物体の老化でしょうか。しかし、この個体は35本の並木のうちの1本だということなので、おそらく同時に植栽されたものでしょうから、この木だけが老化したとは考えにくいです。また、ソメイヨシノの老木がたくさんの果実を着けるという話は聞きません。そうすると、可能性としては突然変異によって自家和合性に変化したことが考えられます。突然変異だとすれば枝変わりしたものが接木で成木化されたものかもしれません。突然変異の可能性については自家不和合性に関与する遺伝子の構造を解析すれば検証できると思いますが、簡単ではありません。
竹能 清俊(JSPPサイエンスアドバイザー)
回答日:2025-05-23