一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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トランスポゾンについて

質問者:   小学生   トミー
登録番号6178   登録日:2025-05-23
平戸ツツジの観察している時に、白い花弁の一部が濃いピンク色に(アサガオの雀斑や条斑絞りのように)なっていました。
こちらのQ&Aでも、度々トランスポゾン(動く遺伝子)について取り上げられていて、ツツジの咲き分けにも、トランスポゾンが関係していると分かりました。

僕がトランスポゾンについて調べていて
疑問に思ったのは、

トランスポゾンが遺伝子に入り込むと、色素合成酵素遺伝子が不活化されて機能を失って白い花となり、またトランスポゾンが移動すると、色素合成酵素遺伝子の機能が復活して、その部分だけに色がつくとありましたが、 
一度不活化された機能が、どのようにして復活して、また色がつくのか気になりました。
よろしくお願いします。

トミー様、

こんにちは。日本植物生理学会の植物Q&Aコーナーに寄せられたあなたのご質問「トランスポゾンについて」にお答えします。
まず、「トランスポゾンが遺伝子に入り込むと、色素合成酵素遺伝子が不活化されて機能を失って白い花となる」ことを、少し具体的に(ただし、簡単に)お話しします。
遺伝子の本体であるDNAは、4種類の塩基(アデニン、チミン、グアニン、シトシン)がたくさんつながったものです。長い塩基の鎖の中に、塩基が特定の並び方をしている部分があり、その特定の並び方に応じて特定のタンパク質(酵素など)が作られます。この塩基が特定の並び方をしている部分が遺伝子です。遺伝子として働くには、この塩基の並び方が一続きにつながっている必要があります。途中の部分が無くなったり、他のものが入り込んだりすると、塩基の並び方が元の一続きではなくなってしまうので、遺伝子として働くことができなくなってしまいます。トランスポゾンも遺伝子の一種で、DNAの中で特定の塩基が並んだ部分です。この部分はDNAの鎖から切り出されて抜け出したり、抜け出したものがまたDNAの中に入りこんだりできます。このトランスポゾンが入りこんだ場所が、赤い色素の合成にかかわる酵素の遺伝子であれば、この部分の塩基の並び方が元の一続きではなくなってしまうので、遺伝子として働くことができなくなります。その結果、花は赤くなれずに白くなります。
こうして赤い色素の合成にかかわる酵素の遺伝子の中に入り込んだトランスポゾンは抜け出すこともできます。抜け出せば、塩基の並び方は元どおりに戻りますので、また遺伝子として働くことができるようになります。その結果、花はまた赤くなります。これが、「一度不活化された機能が復活して、また色がつく」しくみです。もし、花の一部だけでトランスポゾンが抜け出せば、その部分だけが赤くなります。「ヒラドツツジの観察で、白い花弁の一部が濃いピンク色になっていた」のは、このように、花弁の一部だけでトランスポゾンが抜け出したからです。
竹能 清俊(JSPPサイエンスアドバイザー)
回答日:2025-06-04