一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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無機質用土の主成分における植物への影響について

質問者:   一般   jojo
登録番号6184   登録日:2025-06-01
赤玉土や軽石に含まれる主成分、ケイ酸、鉄、二酸化ケイ素などの要素は植物にとっても必要な微量要素だと認識しておりますが、
赤玉土や軽石などを主とした用土、またはそれらを適度に配合した用土などに植物を植えこんだ場合、
植物は、用土に含まれる要素から得られる栄養素をどの程度、吸収しているものなのでしょうか?
用土の割合などにより違いは生じると思いますが、
植物が必要とする微量要素として、それらの用土を使用することで十分まかなえる可能性があるのか?それとも、補助的な量しか吸収できないのか?ほとんど吸収できないものなのか?
無機質の用土の主成分に含まれる要素を、植物がどの程度吸収していけるものなのか教えて頂きたいです。
jojo 様

本コーナーへの質問、ありがとうございました。
植物栄養学をご専門とされている京都大学名誉教授の間藤徹先生から、下記の回答を頂きました。

【間藤先生の回答】

高等植物(被子植物、裸子植物)の生育には光と水と温度、そして無機元素が必要です。これまでの植物栄養研究から、17種類の元素、水素、酸素、炭素、窒素、リン、カリウム、硫黄、カルシウム、マグネシウム(ここまで多量必須元素)、鉄、マンガン、銅、亜鉛、ホウ素、塩素、モリブデン、ニッケル(微量必須元素)が生育に必須であることがわかっています。元素必須性の証明は水耕栽培試験によって行われ、これらの元素が一つでも欠乏すると欠乏症状が発生して正常に生育することができず、その欠乏症状は当該元素の添加によってのみ回復します。

ここで注意していただきたいのは、多くの植物でケイ素の必須性は証明されていないということです。とはいえ日本人にとって馴染みの深いイネではケイ素が欠乏すると生育が劣ることが知られており、ケイ素はイネにとって有用な元素、農学的有用元素とされ、実際に水稲用にケイ酸肥料が市販されています。

一方、土壌を構成する主要な元素は、多い順に、酸素、ケイ素、鉄、アルミニウム、カルシウムです。ですから土に生育する植物は鉄やケイ素を限りなく吸収できそうですが、土壌中のケイ素の主要な形態であるケイ酸は難溶性で植物がたくさん吸収できる濃度には溶け出しません。ケイ素を好むイネは、その低い濃度のケイ素(ケイ酸)を好んで吸収し、体内に蓄積しますが、多くの植物にはケイ素の必須性はなく、それほど大量に吸収しません。鉄は土壌中に酸化された形態で存在しますが、酸化鉄は難溶性なので植物はほとんど吸収できません。土壌を酸素がない状態に置くと酸化鉄は還元されて溶解度の高い二価鉄となって溶け出し、植物は吸収できるようになります。ちょうど水田のような状態です。また、根は水素イオン(プロトン)を放出して根圏のpHを下げることができるので、赤玉土などで栽培した場合には、ある程度は土壌中の鉄を吸収できるだろうと思います。

赤玉土、鹿沼土、日向土、軽石、黒土、まさ土など多くの栽培用の用土が市販されています。鹿沼土、日向土や軽石は溶岩起源、赤玉土、黒土などは火山灰土起源、まさ土は花崗岩起源です。それぞれ起源が異なるので、植物栄養素の供給力も異なりますが、植物の栄養必須元素はほとんど含まれていないだろうと思います。サイエンスとしてこれらの培土の肥料要素供給力を検討するのはとても楽しいですが、植物を健全に育てることが目的ならば微量必須要素を含む肥料成分の供給は期待せず、別途与えたほうが良いと思います。特に微量必須元素それぞれを与えるのは大変ですから、生物起源の資材、すなわち油粕や魚粕、家畜糞堆肥が有用です。
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間藤 徹(京都大学名誉教授)
JSPPサイエンスアドバイザー
山谷 知行
回答日:2025-06-16