一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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植物の老化は開花や体内時計に影響するのでしょうか?

質問者:   中学生   Minecraft
登録番号6210   登録日:2025-07-06
以前に登録番号5857 で、アサガオと光に対する開花反応(なぜキダチアサガオは明所でも開花するのか?)と、登録番号6126 で、キダチアサガオの体内時計のリセットについて質問をしたものです。いつもありがとうございます。

今年も引き続きキダチアサガオの開花の実験をしております。今年で3年目になるのですが、キダチアサガオの体内時計や明所での開花について思った事があります。
 キダチアサガオは9本を鉢植えで育てていて、冬を越して芽吹いたのは7本でした。元はインターネットで購入出来た2本だけだったアサガオを茎の横から新芽が出ると切り取り、水につけて根を出してから鉢に植えて増やしていきました。
去年の冬は屋外で育てていたためか、2本は駄目になってしまいました。枯れてしまったのかのようで乾いた木みたいな状態です。
 キダチアサガオは、純粋種のムラサキなどの一年草と違い木のような茎?で育つため多年草になると思います。新芽を育てて株数を増やしたとしても、元は同じ個体なので、年々年老いていくのでしょうか?土は毎年入れ替えてますが、光に対する反応が鈍くなり明所でも開花してしまったり、体内時計が狂って開花時間がずれているように見えるのはその影響もあったりしますでしょうか?
 枯れてしまった2本は初めから育てていた個体です。初めに手に入れたキダチアサガオは、販売者の方が新芽を切り取って根を出して増やしたものの様でした。
 去年 新芽から根を出して、鉢に植えて増やした他のキダチアサガオは元気で、すでに1つは花をつけました。
 人間も歳を重ねて高齢になると刺激に対して反応が長くなったりするのと同じような事が植物にもあるかもしれないと思いました。
 以前の質問の回答で長谷先生より同じ個体で一日3回 別の時間に開花したというキダチアサガオの報告もあると伺って、この考えでも当てはまるのかも知らないと思いました。

 実際に若いキダチアサガオと老いたものを比べられたら良いのですが、なかなか手に入る環境ではないため質問させていただきます。よろしくお願いいたします。
Minecraft 様

Q&Aコーナーに質問していただきありがとうございます。継代に伴う「加齢」に着目している質問内容、大変興味深く読ませていただきました。今回も京都大学の小山時隆先生に回答をお願いしましたので以下に掲載します。

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「新芽を育てて継代した個体は、継代する毎に老いていくか?」

【小山先生の回答】

多年草ですので、新しい年に入っても基本的には同じように育つ能力は持っていると考えられます。一方で、植物には病害菌やウィルスなどによって様々な病気にかかります。たとえ植物が死ぬようなことはなくても一度感染してしまうと、それらの病害菌が植物体や土壌を介して次の年にも病気を引き起こす場合があります。ご質問のキダチアサガオは長い期間育てられてきたようですので、病気(の要因)が蓄積してきたのかもしれません。

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「継代したことで光応答や体内時計が変化することはあるか?」

【小山先生の回答】

植物が成長している状態であれば、1日の日長を測定するのに使われる概日時計(体内時計の一種で1日24時間の時間を刻むことができます)は、、加齢してもきちんと動けることが示されています。一方で、病害や栄養不足など植物にとって好ましくない状況(ストレス)にさらされると、花成が促進される場合は多くみられます。花成現象については、成長の仕方が異なる場合は、同じ株(クローンと言います)でも異なる結果を生じる場合が多いですので、その点も含めて観察を続けてみるといいと思います。

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最後に、私(長谷)の方から、一言付け加えさせていただきます。樹木の中には非常に長寿なものが知られており、そこから出てくる新しい芽や葉が「加齢」によって劣化するということは無いようです。また、挿し木などによるクローン繁殖についても、「加齢」の影響はほぼ見られないようです。ということで、ヒトなどの動物で見られる「加齢」とか「寿命」という考え方は、植物には当てはまらないと考えた方が良さそうです。

本件とは少しずれますが、本コーナーに植物の「加齢」や「寿命」に関する記事がありますので(登録番号3702, 4641, 6034など)、少し難しいかもしれませんが目を通すと面白いかと思います。
小山 時隆(京都大学)
JSPPサイエンスアドバイザー
長谷 あきら
回答日:2025-08-09