質問者:
会社員
フーちゃん
登録番号6217
登録日:2025-07-10
バラにクラウンゴールができ困っています。アグロバクテリウムは植物の細胞にプラスミドを挿入し、植物細胞を増殖させ、そこから出てくるアミノ酸の誘導体を利用しているらしいのですが、そうであるのなら、アグロバクテリウムはクラウンゴールの表面よりも中にたくさんいるのでしょうか。コメントいただけると幸いです。
みんなのひろば
アグロバクテリウムの居場所について
フーちゃん様
Q&Aコーナーへようこそ。歓迎いたします。
クラウン・ゴールを形成するアグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefascince)のことについては、本コーナーの登録番号2514, 2540をお読みいただくと、詳しいことが書かれていますが、ここでも簡単に説明しておきます。
アグロバクテリウム(Agrと省略)は通常、農作業時の際に物理的に生じた傷、昆虫などの喰み傷などの傷口から感染ます。この時、植物が発散するある種の化学物質が菌を誘因する原因にもなります。Agrの細胞には遺伝子の一部(T-DNA)を含んだTi -プラスミドがあり、感染すると、このT-DNAが植物細胞内に入り、最終的に植物細胞核のDNAの一部として挿入されてしまいます。T-DNAに含まれる遺伝子は植物ホルモンであるオーキシンとサイトカイニンの合成に関わる遺伝子で、両ホルモンが異常に合成される結果、細胞が異常に増殖されて、腫瘍が形成されます。T-DNAには別にオパインという特別なアミノ酸誘導体の合成に関わる遺伝子があります。オパインはAgrのための栄養源となるので、植物組織の中で繁殖することができます。いわば、Agrが植物細胞の遺伝子組換えして、植物を部分的に乗っ取り、子孫を増やしていくという生存繁栄のための戦略でもあるといってよいでしょう。
さて、ご質問に入りますが、Agr は感染した場所に留まっているわけではなく、茎や他の器官と繋がっている維管束系を使って他の場所へも輸送されますので、植物体内で広く分布することが出来ます。また、雨水などに混じって、外部から植物体の他の部分に感染することもあります。Agrは自然では土壌中に存在し、根系に付着して生息している様ですが、勿論クラウン・ゴールの表面にも存在します。クラウン・ゴールの内部はオパインも供給されることですし、理論的に考えればAgrが生存・繁殖するのに最適の環境です。したがって、クラウン・ゴール内には非常に多くのAgrがいるでしょう。
Q&Aコーナーへようこそ。歓迎いたします。
クラウン・ゴールを形成するアグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefascince)のことについては、本コーナーの登録番号2514, 2540をお読みいただくと、詳しいことが書かれていますが、ここでも簡単に説明しておきます。
アグロバクテリウム(Agrと省略)は通常、農作業時の際に物理的に生じた傷、昆虫などの喰み傷などの傷口から感染ます。この時、植物が発散するある種の化学物質が菌を誘因する原因にもなります。Agrの細胞には遺伝子の一部(T-DNA)を含んだTi -プラスミドがあり、感染すると、このT-DNAが植物細胞内に入り、最終的に植物細胞核のDNAの一部として挿入されてしまいます。T-DNAに含まれる遺伝子は植物ホルモンであるオーキシンとサイトカイニンの合成に関わる遺伝子で、両ホルモンが異常に合成される結果、細胞が異常に増殖されて、腫瘍が形成されます。T-DNAには別にオパインという特別なアミノ酸誘導体の合成に関わる遺伝子があります。オパインはAgrのための栄養源となるので、植物組織の中で繁殖することができます。いわば、Agrが植物細胞の遺伝子組換えして、植物を部分的に乗っ取り、子孫を増やしていくという生存繁栄のための戦略でもあるといってよいでしょう。
さて、ご質問に入りますが、Agr は感染した場所に留まっているわけではなく、茎や他の器官と繋がっている維管束系を使って他の場所へも輸送されますので、植物体内で広く分布することが出来ます。また、雨水などに混じって、外部から植物体の他の部分に感染することもあります。Agrは自然では土壌中に存在し、根系に付着して生息している様ですが、勿論クラウン・ゴールの表面にも存在します。クラウン・ゴールの内部はオパインも供給されることですし、理論的に考えればAgrが生存・繁殖するのに最適の環境です。したがって、クラウン・ゴール内には非常に多くのAgrがいるでしょう。
勝見 允行(JSPPサイエンスアドバイザー)
回答日:2025-07-17