一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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タンポポの観察

質問者:   自営業   浦部勝彦
登録番号0622   登録日:2006-04-30
私は、ボランティア活動としてカントウタンポポの保護活動をしていますが、先日私達の活動フィールドで、ある小学校の6年生約100名を対象にした野外学習が行われました。
私は講師としてタンポポについての説明をしましたが、小学生から出た質問に答えられなかったものがあります。
その質問は「タンポポの葉や花茎をちぎると白い液体が出ますが、あれは何ですか?」というものです。
子供たちに回答をするため、ぜひお教えいただく質問をするしだいです。
浦部勝彦 さん

登録番号0622に対する回答をお送りします。

タンポポの花茎や葉を切ると出る白い粘性のある液体を乳液(ラテックス)と呼びます。乳液を出す植物は珍しくなく身近なものではタンポポのほかレタス、イチジク、ヒナゲシなどがあります。キク科(レタスのほかニガナ、ノゲシ、アキノノゲシなど)クワ科(イチジクのほかインドゴムノキ、イヌビワなど)、トウダイグサ科(ナツトウダイ、コニシキソウなど多数)ガガイモ科(トウワタなど)などに多く見られます。乳液は植物体内を血管のように発達した乳管と呼ばれる特別な管状構造(その出来方には二通りありますが)の中に排出されており、この管状構造を切断する滲出するものです。乳液にはタンパク質、糖質、脂質、アルカロイド、テルペノイドなどが含まれており植物種によってその主成分は違いますが、高分子テルペノイド、タンパク質、蝋やトリテルペノイドなどが微細な粒子となって懸濁した乳濁液です。タンポポ乳液の成分を調べた文献を見つけることはできませんでしたが、その乳液がタンポポの薬効成分を含むことはよく知られているようです。乳液には重要な産業原料となっているものがあり、ゴムノキの乳液が弾性ゴム(生ゴム)、サポヂラの乳液がチューインガムの基材チクル、またケシの未熟果実の乳液がモルヒネの原料となっているのは良い例と言えます。
植物側にとってどんな役に立っているのかは難しい問題ですが、傷がついたときに出たラテックス成分が酸化重合して傷口を素早く閉じ微生物の侵入を防ぐ役割があると言われています。
レタス乳液成分についての質問が登録番号0259番にありますので参考にして下さい。
JSPPサイエンスアドバイザー
今関 英雅
回答日:2012-08-25
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