質問者:
一般
森田
登録番号6221
登録日:2025-07-15
キュウリはアルカリ性であり、石鹸などと同じように、界面活性剤を含んでいるのでしょうか。実際に、キュウリの葉の柄をカッターで切り、体液が溜まるを待ち、細いストローで空気を入れたら、一瞬ですが、シャボン玉のように膨らみました。これは、キュウリには界面活性剤の物質が含まれていると理解してよいのでしょうか。または、キュウリなどのアルカリ性の野菜に多く見られる粘液性によるものでしょうか。どちらなのでしょうか。
みんなのひろば
キュウリでシャボン玉はできますか。
森田様
こんにちは。日本植物生理学会の植物Q&Aコーナーに寄せられたあなたのご質問「キュウリでシャボン玉はできますか」にお答えします。
空気を吹き込んだときシャボン玉のように膨らんだのは一瞬だけとのことですので、シャボン玉ができたとして話を進めてよいものかどうか疑問に思います。また、葉柄を切って切口から出る液を溜めたとのことですが、葉身の方からの液を集めたのでしょうか、それとも、茎の方からの液でしょうか? 前者ならば主に篩管液を、後者ならば主に導管液を集めたことになり、両者で含まれる成分は異なります。いずれにしても、これらに界面活性剤や粘液性のものが含まれるかどうかは分かりません。
仮にキュウリの篩管液または導管液を使ってシャボン玉を作ることが出来ると想定した場合を考えてみます。シャボン玉は普通は石鹸水で作りますので、石鹸のように界面活性剤として働くものを使えばシャボン玉を作れそうです。古き時代に石鹸代わりに使われたものにムクロジの果皮があります。これは、ムクロジ果皮に含まれるサポニンが界面活性剤を使えばシャボン玉を作れるでしょう。もしもキュウリにサポニンが含まれれば、同じようにシャボン玉を作れそうですが、キュウリがサポニンを含むかどうかは分かりません。しかし、同じウリ科に属すヘチマではサポニンの含有が知られています。これも古い話になりますが、ヘチマの茎を切って、根側の切口から出てくる液体を集めて化粧水として用いることが行われていました。この「へちま水」の有効成分はサポニンとされています。このことから、近縁種であるキュウリの導管液にもサポニンが含まれているかもしれないと想像できます。再度キュウリを育てて導管液を十分量集める工夫をされ、それでシャボン玉ができるかどうか試してみてはいかがでしょうか。もしシャボン玉ができれば、サポニンによる可能性が考えられます。
ところで、キュウリを「アルカリ性の野菜」と書かれていますが、食品を「アルカリ性食品・酸性食品」というように分類して考えておられるようなのが気になりました。このような分類は適切ではないと思われましたので、専門家の見解を伺いました。東北大学大学院農学研究科で栄養学をご専門にされておられる白川仁教授にお伺いし、以下のようなコメントを頂きました。
学術的には「アルカリ性食品」という用語は、きいたことがありません。ただ、学会(日本栄養・食糧学会)から出ている用語辞典には項目がありますので、一部の分野の先生方は、使用しているのかもしれません。次の2点の資料には、以下のように記載されていました。
食品灰化後の灰を酸溶液に溶解させ、これをアルカリ溶液で中和滴定したとき、加えたアルカリ溶液の量が灰を溶解させるのに用いた酸溶液よりも多い食品を酸性食品(acid ash food)、少ない食品をアルカリ性食品(alkaline ash food)としている。これとは別に、食品を構成するミネラルのうち、アルカリ性元素(Na, Ca, K, Mg)のミリグラム当量を合計した値が、酸性元素(S, P, Cl)のそれより多い食品をアルカリ性食品、少ない食品を酸性食品とする方法もある。硫黄、リン、塩素は体内で水素イオン(H+)を、ナトリウム、カルシウム、カリウム、マグネシウムは水酸イオン(OH-)を生じ、それぞれが体組織を酸性あるいはアルカリ性にするという考え方がこのような食品の区分のもとになっている。しかし、食品中の各ミネラルは吸収率が異なり、しかも体内に吸収されたミネラルのすべてが酸-アルカリ反応に関与するわけではない。食品中のミネラルによって血液や体液のpHが影響されないことは明らかであり、食品をこのように分類することは無意味である(引用元:「食品安全性辞典」監修:小野宏/小島康平/斎藤行生/林裕造 共立出版 (1998年) 26ページ?)。
食物を完全燃焼させた後に残る灰分を水に溶解すると、塩素、硫黄やリンの酸化物は塩酸、硫酸、リン酸になり、カルシウム、鉄、マグネシウム、ナトリウム、カリウムなどの酸化物はアルカリになる。この水溶液が示すpHによって、もとの食品を酸性食品、アルカリ性食品と区別することがある。含硫アミノ酸の多い食肉、鳥卵のようなタンパク質食品や、フィチン酸の多い穀類は酸性食品、野菜、果実、牛乳はアルカリ性食品ということになる。食品をこのように区別するのは、ビタミンやミネラルをバランスよく摂取させるための方便にすぎない(引用元:「食品栄養学」木村修一、吉田昭編 文永堂出版(1994年)137-139ページ)。
ネットの情報でも多くの記事が2つ目の資料の最終行に書いてあること(太字)で結んでいます。健康性については、どちらの資料でも、「アルカリ性食品」が健康によいとは書いておりません。野菜や果物がアルカリ性食品に分類されるから、健康性が高いと言われているのだと思います。この言葉を誰が、いつから使い始めたかはわかりませんが、分析技術が十分でなく、個々の野菜や果物に含まれる機能性成分が明確にわかっていなかった時代にできた分類法ではないかと思います(ここの部分は不確定です)。いまでは、それぞれの野菜や果物にどのような機能性成分がどのくらい含まれていることがわかっていますから、大雑把な分け方ではなくなっています。
こんにちは。日本植物生理学会の植物Q&Aコーナーに寄せられたあなたのご質問「キュウリでシャボン玉はできますか」にお答えします。
空気を吹き込んだときシャボン玉のように膨らんだのは一瞬だけとのことですので、シャボン玉ができたとして話を進めてよいものかどうか疑問に思います。また、葉柄を切って切口から出る液を溜めたとのことですが、葉身の方からの液を集めたのでしょうか、それとも、茎の方からの液でしょうか? 前者ならば主に篩管液を、後者ならば主に導管液を集めたことになり、両者で含まれる成分は異なります。いずれにしても、これらに界面活性剤や粘液性のものが含まれるかどうかは分かりません。
仮にキュウリの篩管液または導管液を使ってシャボン玉を作ることが出来ると想定した場合を考えてみます。シャボン玉は普通は石鹸水で作りますので、石鹸のように界面活性剤として働くものを使えばシャボン玉を作れそうです。古き時代に石鹸代わりに使われたものにムクロジの果皮があります。これは、ムクロジ果皮に含まれるサポニンが界面活性剤を使えばシャボン玉を作れるでしょう。もしもキュウリにサポニンが含まれれば、同じようにシャボン玉を作れそうですが、キュウリがサポニンを含むかどうかは分かりません。しかし、同じウリ科に属すヘチマではサポニンの含有が知られています。これも古い話になりますが、ヘチマの茎を切って、根側の切口から出てくる液体を集めて化粧水として用いることが行われていました。この「へちま水」の有効成分はサポニンとされています。このことから、近縁種であるキュウリの導管液にもサポニンが含まれているかもしれないと想像できます。再度キュウリを育てて導管液を十分量集める工夫をされ、それでシャボン玉ができるかどうか試してみてはいかがでしょうか。もしシャボン玉ができれば、サポニンによる可能性が考えられます。
ところで、キュウリを「アルカリ性の野菜」と書かれていますが、食品を「アルカリ性食品・酸性食品」というように分類して考えておられるようなのが気になりました。このような分類は適切ではないと思われましたので、専門家の見解を伺いました。東北大学大学院農学研究科で栄養学をご専門にされておられる白川仁教授にお伺いし、以下のようなコメントを頂きました。
学術的には「アルカリ性食品」という用語は、きいたことがありません。ただ、学会(日本栄養・食糧学会)から出ている用語辞典には項目がありますので、一部の分野の先生方は、使用しているのかもしれません。次の2点の資料には、以下のように記載されていました。
食品灰化後の灰を酸溶液に溶解させ、これをアルカリ溶液で中和滴定したとき、加えたアルカリ溶液の量が灰を溶解させるのに用いた酸溶液よりも多い食品を酸性食品(acid ash food)、少ない食品をアルカリ性食品(alkaline ash food)としている。これとは別に、食品を構成するミネラルのうち、アルカリ性元素(Na, Ca, K, Mg)のミリグラム当量を合計した値が、酸性元素(S, P, Cl)のそれより多い食品をアルカリ性食品、少ない食品を酸性食品とする方法もある。硫黄、リン、塩素は体内で水素イオン(H+)を、ナトリウム、カルシウム、カリウム、マグネシウムは水酸イオン(OH-)を生じ、それぞれが体組織を酸性あるいはアルカリ性にするという考え方がこのような食品の区分のもとになっている。しかし、食品中の各ミネラルは吸収率が異なり、しかも体内に吸収されたミネラルのすべてが酸-アルカリ反応に関与するわけではない。食品中のミネラルによって血液や体液のpHが影響されないことは明らかであり、食品をこのように分類することは無意味である(引用元:「食品安全性辞典」監修:小野宏/小島康平/斎藤行生/林裕造 共立出版 (1998年) 26ページ?)。
食物を完全燃焼させた後に残る灰分を水に溶解すると、塩素、硫黄やリンの酸化物は塩酸、硫酸、リン酸になり、カルシウム、鉄、マグネシウム、ナトリウム、カリウムなどの酸化物はアルカリになる。この水溶液が示すpHによって、もとの食品を酸性食品、アルカリ性食品と区別することがある。含硫アミノ酸の多い食肉、鳥卵のようなタンパク質食品や、フィチン酸の多い穀類は酸性食品、野菜、果実、牛乳はアルカリ性食品ということになる。食品をこのように区別するのは、ビタミンやミネラルをバランスよく摂取させるための方便にすぎない(引用元:「食品栄養学」木村修一、吉田昭編 文永堂出版(1994年)137-139ページ)。
ネットの情報でも多くの記事が2つ目の資料の最終行に書いてあること(太字)で結んでいます。健康性については、どちらの資料でも、「アルカリ性食品」が健康によいとは書いておりません。野菜や果物がアルカリ性食品に分類されるから、健康性が高いと言われているのだと思います。この言葉を誰が、いつから使い始めたかはわかりませんが、分析技術が十分でなく、個々の野菜や果物に含まれる機能性成分が明確にわかっていなかった時代にできた分類法ではないかと思います(ここの部分は不確定です)。いまでは、それぞれの野菜や果物にどのような機能性成分がどのくらい含まれていることがわかっていますから、大雑把な分け方ではなくなっています。
竹能 清俊(JSPPサイエンスアドバイザー)
回答日:2025-08-01