質問者:
一般
だい
登録番号6223
登録日:2025-07-18
趣味で植物(花)のイラストを描き始めました。みんなのひろば
各植物の形態の調べ方
イラストを描く際、ただ見たままをスケッチするだけではなく、構造をきちんと把握したいと思い、植物形態学について勉強しました。そこで各々の植物には葉序(対生・互生やその開度等)や分枝(単軸や仮軸等)・花式図などの特徴の分類や図があることを知りました。
そして、ある植物を描くために特徴を調べようとネットや図鑑を調べたのですが、前述した分類・図について記載されているものを中々見つけられません。
植物について詳しい方とお話しする機会があり、そのことについて伺ったのですが、「残念ながらそういった各植物の分類・図の記載は論文などニッチな所にあるか無いか程度だと思う」との回答でした。
それが本当だとしたら、これだけ形態についての研究なされているのに、肝心の各植物の分類・図の提示がどこにもなされていない、というのは有り得るのだろうか?とモヤモヤとした疑念があります。
自分で植物の現物を観察し特徴を掴むのが一番なのでしょうが、身近にあったり手に入れられるものばかりではなく、なかなかそういう訳にも参りません。
そこで先生方にお伺いしたいのですが、前述した分類・図について、本当に記載やまとめられている所が殆ど存在しないものなのでしょうか。
もし存在するとしたら、どこなのか・適切な調べ方 などをご教授いただけませんでしょうか。
何卒宜しくお願いいたします。
だい 様
この度は日本植物生理学会・みんなのひろばにご質問をお寄せくださりありがとうございました。また回答までお待たせいたしました。
いただきましたご質問は、植物の発生や形作りの仕組み、それらの進化をご研究されている東京大学大学院理学系研究科 教授 塚谷裕一先生にお引き受けいただきました。以下、回答になります。
【塚谷先生からの回答】
だいさん
ご質問ありがとうございます。
端的にお答えすると、ご質問の通りでそうした書物はありません。
まず花式図については、花器官の配置について突っ込んだ議論をする論文においてこそ使われますが、その他の場面ではまず作成されること自体がありません。
一方で葉序については、種の特徴として記述されることが普通なので、ちゃんとした図鑑であれば読み取り可能です。ただし、一般にはらせん葉序を示す種が多いので、記述としては対生、互生、輪生、コクサギ型などの場合に限ることもしばしばです。またらせん葉序の開度に関しては、同一個体でも植物の発生段階生理条件、環境等でも変化するため、そもそも単純な記述ができません。
また単軸分枝か仮軸分枝かは、多くの種が単軸分枝なので、仮軸分枝の場合において記述されますが、これも特定の場所でだけ起きるなど、パターンが複雑なケースも少なくないため、種の特徴として記述されるとしてもかなり簡略化された形にとどまります。また解釈に議論がある場合もあって、たとえばヤブカラシのシュートについてはまきひげの位置で仮軸分枝し、花序の部分でも仮軸分枝するという解釈がわりと一般だと思いますが、これもその分野での議論においてのみ詳細な記述がなされる程度です。
というわけで上記のように、葉序、分枝、花式図をまとめた書物はないのです。
なお植物の形態にはいろいろな例外が多く、解釈に困るケースも多々あります。逆に言えば、そうした例外的な形態をかなり広く解説した良書ならあります。私のおすすめは、熊澤正夫著の『植物器官学』(裳華房、1979年)です。とっくに絶版ですが、図書館には時々ありますし、古書店ではよく出回っています。これをご覧になると「ああ、たしかに普通に図鑑にまとめて書くのは無理だな」とおわかりになるかと思いますし、植物の形を理解するのにとても良く役に立つかと思います。上記のヤブカラシの話などもこの本で解説されています。ぜひ手にとってみてください。
=====
以上、ご参考になりましたでしょうか。ご紹介いただけました「植物器官学」、ぜひご覧いただけると良いですね。
本コーナーでは植物のふしぎに関する質問を受け付けております。また不思議に思われたことがありましたらお気軽にQ&Aコーナーをお訪ねください。
この度は日本植物生理学会・みんなのひろばにご質問をお寄せくださりありがとうございました。また回答までお待たせいたしました。
いただきましたご質問は、植物の発生や形作りの仕組み、それらの進化をご研究されている東京大学大学院理学系研究科 教授 塚谷裕一先生にお引き受けいただきました。以下、回答になります。
【塚谷先生からの回答】
だいさん
ご質問ありがとうございます。
端的にお答えすると、ご質問の通りでそうした書物はありません。
まず花式図については、花器官の配置について突っ込んだ議論をする論文においてこそ使われますが、その他の場面ではまず作成されること自体がありません。
一方で葉序については、種の特徴として記述されることが普通なので、ちゃんとした図鑑であれば読み取り可能です。ただし、一般にはらせん葉序を示す種が多いので、記述としては対生、互生、輪生、コクサギ型などの場合に限ることもしばしばです。またらせん葉序の開度に関しては、同一個体でも植物の発生段階生理条件、環境等でも変化するため、そもそも単純な記述ができません。
また単軸分枝か仮軸分枝かは、多くの種が単軸分枝なので、仮軸分枝の場合において記述されますが、これも特定の場所でだけ起きるなど、パターンが複雑なケースも少なくないため、種の特徴として記述されるとしてもかなり簡略化された形にとどまります。また解釈に議論がある場合もあって、たとえばヤブカラシのシュートについてはまきひげの位置で仮軸分枝し、花序の部分でも仮軸分枝するという解釈がわりと一般だと思いますが、これもその分野での議論においてのみ詳細な記述がなされる程度です。
というわけで上記のように、葉序、分枝、花式図をまとめた書物はないのです。
なお植物の形態にはいろいろな例外が多く、解釈に困るケースも多々あります。逆に言えば、そうした例外的な形態をかなり広く解説した良書ならあります。私のおすすめは、熊澤正夫著の『植物器官学』(裳華房、1979年)です。とっくに絶版ですが、図書館には時々ありますし、古書店ではよく出回っています。これをご覧になると「ああ、たしかに普通に図鑑にまとめて書くのは無理だな」とおわかりになるかと思いますし、植物の形を理解するのにとても良く役に立つかと思います。上記のヤブカラシの話などもこの本で解説されています。ぜひ手にとってみてください。
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以上、ご参考になりましたでしょうか。ご紹介いただけました「植物器官学」、ぜひご覧いただけると良いですね。
本コーナーでは植物のふしぎに関する質問を受け付けております。また不思議に思われたことがありましたらお気軽にQ&Aコーナーをお訪ねください。
塚谷 裕一(東京大学大学院理学系研究科)
JSPP広報委員長
藤田 知道
回答日:2025-08-08
藤田 知道
回答日:2025-08-08