質問者:
中学生
やまかわ
登録番号6228
登録日:2025-07-27
学校の校門にある八重桜が満開で少し散り始めている頃に家のマンショの近くに植えてあるソメイヨシノはまだ蕾が多く開花していませんでした。八重桜の咲き始めるのはいつ頃なのか調べてみると「ソメイヨシノに比べて開花期が1~2週間ほど遅く、ちょうどソメイヨシノが散るのと同じ時期に開花を始める」と書いてありました。ソメイヨシノが遅く咲いたのは冬の寒さを経験できず休眠打破が上手くできなかったからですか?その場合八重桜も環境が同じところのはずだからソメイヨシノと同じように休眠打破が上手くできないはずなのに(遅咲きでもあるし…)なぜ八重桜はソメイヨシノより早く咲き始めたのか。教えて欲しいですお願いします。みんなのひろば
ソメイヨシノより八重桜が早く咲くことはある?
やまかわ様
こんにちは。日本植物生理学会の植物Q&Aコーナーに寄せられたあなたのご質問「ソメイヨシノより八重桜が早く咲くことはある?」にお答えします。
これは状況がつかみにくいので難しい問題です。正しい答えは見つからないかもしれませんが、可能性のあることを一つ一つ考えてみたいと思います。
まず、学校の八重桜がマンションのソメイヨシノより早く咲いたのは今年だけのことですか? それとも、毎年のことですか? もし、毎年のことであるならば、次のようなことが考えられます。確かに、八重桜の開花期はソメイヨシノより遅いのが普通ですが、生物のことですから、個体差というものがあります。学校の八重桜はたまたま開花期が早い個体で、マンションのソメイヨシノはたまたま開花期が遅い個体なのかもしれません。例えば、静岡市の私の自宅にあるソメイヨシノの開花は、近くの公園のソメイヨシノや静岡市の標本木の開花より遅いです。特に公園の木とは1週間ぐらいの差があり、拙宅のソメイヨシノは開花が遅い個体のようです。八重桜にも同じように開花が遅い個体や早い個体があるでしょう。また、八重桜とは八重咲のものが一括してそう呼ばれるもので、実際には多くの栽培品種があります。多くの八重桜の開花期は4月上旬から中旬や4月中旬から下旬ですが、八重紅枝垂という栽培品種の開花期は3月下旬から4月上旬だそうです。この栽培品種は広く栽培されているようですので、学校の八重桜も八重紅枝垂かもしれません。もし、学校の八重桜が開花の早い八重紅枝垂であって、あるいは、他の八重咲品種であっても開花の早い個体であって、マンションのソメイヨシノが開花の遅い個体であれば、八重桜の方がソメイヨシノより早く咲くことはありうることです。
一方、もし、今年だけ八重桜の方がソメイヨシノより早く咲いたのならば、少し難しい問題になります。今年は、ソメイヨシノが平年よりも遅く咲いたか、八重桜が平年よりも早く咲いたかのどちらか、または、その両方ということになります。ソメイヨシノが平年よりも遅く咲いたのならば、おっしゃる通り、冬の寒さが足りずに休眠打破が上手くできなかったのかもしれません。その場合八重桜も同じように休眠打破が上手くできないはずというのも、その通りと思います。しかし、事実として八重桜の方が早く咲いたのですから、八重桜は休眠打破が上手くできたのかもしれません。休眠打破には一定以下の温度が一定期間続く必要があり、これらの条件はソメイヨシノでは詳しく解析されています。しかし、八重桜など他のサクラの仲間については研究が進んでいないと思います。もし、八重桜はソメイヨシノよりも休眠打破に必要な温度が高いとか、その温度条件の必要日数が短いとかいうことがあれば、今年の気候条件下ではソメイヨシノは休眠打破が上手くできず、八重桜は上手くできたということがありえます。そうであれば、八重桜の方がソメイヨシノより早く咲くことになります。
日本気象協会は今年のソメイヨシノの開花について「2024年の11月は高温となったものの、その後の寒さで休眠打破の遅れの影響は小さいとみられ、開花はおおむね平年並みとなるでしょう」との予測を発表していたので、ソメイヨシノは遅く咲いたわけではないのかもしれません。もしそうならば、上での考察はそもそも前提が間違っていたことになります。八重桜が今年は平年よりも早く咲いたと仮定して、考え直さなければなりません。休眠が打破された後の蕾の生長は気温が高いほど速く進みます。ソメイヨシノについては開花までに必要な積算温度がわかっていて、開花日の予測に使われていますが、八重桜については同じような解析が進んでいないようです。もし、八重桜の開花までに必要な積算温度がソメイヨシノよりも低いならば、八重桜の方がソメイヨシノより早く咲くことになります。
その他には、ソメイヨシノが何らかの障害を受けて開花が遅れた可能性も排除できません。一方、何らかの障害で開花が早まるということはあまり無いように思います。
以上、いくつかの可能性を考えてきましたが、どれが正しいか、あるいは、どれも正しくないかはわかりません。しかし、あなた自身で自分の疑問に答えるヒントにはなったと思います。まず、学校の八重桜がマンションのソメイヨシノより早く咲いたのは今年だけのことか、それとも、毎年のことかを思い出してください。それから、今年のソメイヨシノの開花は平年よりも遅かったのか、八重桜の開花は平年よりも早かったのかを思い出してください。これらがはっきりしてから上の文章を読み直してくれれば答えがあるかもしれません。できれば八重桜の栽培品種は何かがわかるといいです。
これをきっかけに、学校の八重桜とマンションのソメイヨシノの開花日と秋から春の気温変化を毎年調べてみると、正しい答えが見つかると思います。休眠打破に必要な温度条件、開花に必要な温度条件について調べるのは少々難しいですが、長期の記録を取れば、おのずと見えてくると思います。そうすれば、自分で開花予測が出来るようになるかもしれません。それは、上述の日本気象協会などが発表する予測とは別の、「私の八重桜」「私のソメイヨシノ」の開花日の予測になります。
こんにちは。日本植物生理学会の植物Q&Aコーナーに寄せられたあなたのご質問「ソメイヨシノより八重桜が早く咲くことはある?」にお答えします。
これは状況がつかみにくいので難しい問題です。正しい答えは見つからないかもしれませんが、可能性のあることを一つ一つ考えてみたいと思います。
まず、学校の八重桜がマンションのソメイヨシノより早く咲いたのは今年だけのことですか? それとも、毎年のことですか? もし、毎年のことであるならば、次のようなことが考えられます。確かに、八重桜の開花期はソメイヨシノより遅いのが普通ですが、生物のことですから、個体差というものがあります。学校の八重桜はたまたま開花期が早い個体で、マンションのソメイヨシノはたまたま開花期が遅い個体なのかもしれません。例えば、静岡市の私の自宅にあるソメイヨシノの開花は、近くの公園のソメイヨシノや静岡市の標本木の開花より遅いです。特に公園の木とは1週間ぐらいの差があり、拙宅のソメイヨシノは開花が遅い個体のようです。八重桜にも同じように開花が遅い個体や早い個体があるでしょう。また、八重桜とは八重咲のものが一括してそう呼ばれるもので、実際には多くの栽培品種があります。多くの八重桜の開花期は4月上旬から中旬や4月中旬から下旬ですが、八重紅枝垂という栽培品種の開花期は3月下旬から4月上旬だそうです。この栽培品種は広く栽培されているようですので、学校の八重桜も八重紅枝垂かもしれません。もし、学校の八重桜が開花の早い八重紅枝垂であって、あるいは、他の八重咲品種であっても開花の早い個体であって、マンションのソメイヨシノが開花の遅い個体であれば、八重桜の方がソメイヨシノより早く咲くことはありうることです。
一方、もし、今年だけ八重桜の方がソメイヨシノより早く咲いたのならば、少し難しい問題になります。今年は、ソメイヨシノが平年よりも遅く咲いたか、八重桜が平年よりも早く咲いたかのどちらか、または、その両方ということになります。ソメイヨシノが平年よりも遅く咲いたのならば、おっしゃる通り、冬の寒さが足りずに休眠打破が上手くできなかったのかもしれません。その場合八重桜も同じように休眠打破が上手くできないはずというのも、その通りと思います。しかし、事実として八重桜の方が早く咲いたのですから、八重桜は休眠打破が上手くできたのかもしれません。休眠打破には一定以下の温度が一定期間続く必要があり、これらの条件はソメイヨシノでは詳しく解析されています。しかし、八重桜など他のサクラの仲間については研究が進んでいないと思います。もし、八重桜はソメイヨシノよりも休眠打破に必要な温度が高いとか、その温度条件の必要日数が短いとかいうことがあれば、今年の気候条件下ではソメイヨシノは休眠打破が上手くできず、八重桜は上手くできたということがありえます。そうであれば、八重桜の方がソメイヨシノより早く咲くことになります。
日本気象協会は今年のソメイヨシノの開花について「2024年の11月は高温となったものの、その後の寒さで休眠打破の遅れの影響は小さいとみられ、開花はおおむね平年並みとなるでしょう」との予測を発表していたので、ソメイヨシノは遅く咲いたわけではないのかもしれません。もしそうならば、上での考察はそもそも前提が間違っていたことになります。八重桜が今年は平年よりも早く咲いたと仮定して、考え直さなければなりません。休眠が打破された後の蕾の生長は気温が高いほど速く進みます。ソメイヨシノについては開花までに必要な積算温度がわかっていて、開花日の予測に使われていますが、八重桜については同じような解析が進んでいないようです。もし、八重桜の開花までに必要な積算温度がソメイヨシノよりも低いならば、八重桜の方がソメイヨシノより早く咲くことになります。
その他には、ソメイヨシノが何らかの障害を受けて開花が遅れた可能性も排除できません。一方、何らかの障害で開花が早まるということはあまり無いように思います。
以上、いくつかの可能性を考えてきましたが、どれが正しいか、あるいは、どれも正しくないかはわかりません。しかし、あなた自身で自分の疑問に答えるヒントにはなったと思います。まず、学校の八重桜がマンションのソメイヨシノより早く咲いたのは今年だけのことか、それとも、毎年のことかを思い出してください。それから、今年のソメイヨシノの開花は平年よりも遅かったのか、八重桜の開花は平年よりも早かったのかを思い出してください。これらがはっきりしてから上の文章を読み直してくれれば答えがあるかもしれません。できれば八重桜の栽培品種は何かがわかるといいです。
これをきっかけに、学校の八重桜とマンションのソメイヨシノの開花日と秋から春の気温変化を毎年調べてみると、正しい答えが見つかると思います。休眠打破に必要な温度条件、開花に必要な温度条件について調べるのは少々難しいですが、長期の記録を取れば、おのずと見えてくると思います。そうすれば、自分で開花予測が出来るようになるかもしれません。それは、上述の日本気象協会などが発表する予測とは別の、「私の八重桜」「私のソメイヨシノ」の開花日の予測になります。
竹能 清俊(JSPPサイエンスアドバイザー)
回答日:2025-08-12