一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

チェックリストに保存

ロウバイの葉の毒性

質問者:   その他   えいーん
登録番号6234   登録日:2025-08-07
ロウバイ(ソシンロウバイ)の葉に毒性があることを知らずに、枯葉を使って腐葉土を作成しました。
やはり毒性物質は残っていて、腐葉土として使用しないほうが良いのでしょうか。
 あと、ロウバイを剪定したりするとき素手で触ってましたが、これも良くないでしょうか。口にさえ入らなければいいのでしょうか。
教えてください、よろしくお願いします。
えいーん様

Q&Aコーナーへようこそ。歓迎いたします。
ロウバイは庭木として各所で植えられていますね。私の家の近くの公園にも沢山植栽されています。冬から早春にかけて黄色い花を咲かせるので目立ちます。学名をChimonanthus praecox (英語名:wintersweet)と言いますが、cheimonはギリシャ語で「冬」、anthosはおなじく「花」という意味です。praecox は「早咲き」です。したがって、ロウバイは学名は「冬に咲く早咲きの花」という意味です。ちなみに、早春には黄色い花が多いのはなぜかという質問が過去にありました(登録番号2524)ので、読んでみてください。
 えいーんさんはソシンロウバイを植えておられるようですが、素心ロウバイ(Chimonanthus praecox form. concolor)はロウバイの変わり種で(園芸品種)です。花が全ての点でふつうのロウバイより花やかなので、庭木には専ら「素心ロウバイ」の方が利用されているようですね。
 さて、お尋ねの毒性物質のことですが、専門ではないので資料を調べてみました。この毒はカリカンチン(calycanthine)というアルカロイド系の物質です。カリカンチンという名前は、最初いくつかのロウバイ科(Calycanthaceae)の植物からに抽出単離された時(1928年)に科名に因んでつけられた名前です。カリカンチンは葉だけでなく、枝、花、果実、種子など植物体の殆どの場所で検出できます。特に種子に多いということです。動物、特に反芻動物がこの毒素を摂取すると中枢神経系が犯され、痙攣を引き起こすなどします。しかし、ヒトには殆ど見るべき影響はないとということです。カリカリチンを直接静脈注射した時の致死量はマウスで44mg/kg、ラットで17mg/kgという報告があります。カリカンチン中毒死と推定される場合が牧場のヒツジについて1例報告されているそうです。
 カリカンチンは水に殆ど不溶性で、簡単に分解されません。したがって、地表に落ちた枯れ葉、枯れ枝、種子などにカリカンチンは残存するものと思われます。しかし、摂取しない限り毒性は現れませんし、特に人の場合多量でないと危険な影響は現れないようです。落ち葉を腐葉土にした場合は、多種類のバクテアや微生物が働いてカリカンチンも分解されると思いますが、実際に確かめた研究はありません。
 これまで、ヒトがロウバイで中毒症状を起こしたという例は報告されていないようですが、子供さんが誤って、果実や種子を口にすることもありますので注意は必要でしょう。漢方では生薬として「蝋梅花」というのがありますが、これは蕾を乾燥したもので、解熱、鎮咳、鎮痛などの抗炎剤としてつかわれます。
 以上の情報をご判断の上ロウバイと付き合ってください。
勝見 允行(JSPPサイエンスアドバイザー)
回答日:2025-08-15