一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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アオギリの粘液②

質問者:   小学生   トミー
登録番号6237   登録日:2025-08-09
僕はアオギリの葉柄や根などに含まれる酸性糖類に興味を持っています。

どんな性質があるのか、葉柄を色んな液体に漬けてみました。
水や石鹸水にはよく溶け、アオギリの粘液は緩いゲル状となります。
反対に、エタノールや油には全然溶けないことが分かりました。

アオギリの葉柄を、身近な液体20種類に漬けてみると、牛乳に漬けた時が、1番粘液が伸び、ゲルも少し固くなりました。

これは、アオギリに含まれる多糖類の水酸基が、牛乳のCa²+イオンと反応して、より粘液が固くなったのでしょうか?

色々試してみようと、牛乳を酢酸で分離したホエイや、水にL-乳酸カルシウムを溶かしてみたものに、アオギリの葉柄を漬けてみたのですが、どちらも粘液がよく伸びた為、牛乳のどの成分に1番反応するのか、イマイチ分からなくなってしまいました。

アドバイスをよろしくお願いします。
トミー君

再度のご来場を歓迎いたします。ずうっとアオギリの粘性物質のことを調べ続けているのですね。すごいです。
今度の質問の内容は粘性物質の物理化学的な性質のことなので、専門的立場からお答えするのは難しいです。このようなことに関する研究があるかどうか調べてみたところ、「アオギリ粘質物の物理化学的性質」という題の研究報告がありました。(深川由紀子他、日本化学会誌 2002 , 415-419)。しかし、質問に直接答えるようなデータはありませんでした。
 質問の中で、粘液が一番伸びると書いてありますが、それと硬くなることとはどういう関係にあるのかわかりませんが。上記論文によると、アオギリの粘性物質はpH(酸性かアルカリ性か)中性付近(pH7付近)では粘度の低下は緩やかだが、アルカリ性(pH7以上)や酸性)pH7以下)では急速な低下がみられ、特に、酸性の時にいちじるしい。彼らは酸性、アルカリ性条件では粘質物が加水分解によって、壊れている可能性が高いと言っています。また無機のイオンの影響では、Fe3+>Fe2+>Cu2+>Cr3+>Co2+>Ni2+>Mg2+(3+、2+はイオンの値)順に粘度を低下させる。陰イオンは影響なし。Fe3+ について調べると粘質物に含まれるウロン酸(糖が参加して水酸基(−OH)がアルボキシル基(−COOH)のなった物質の総称)と錯体という化合物を作ったことにより粘度の低下が起きたと思われる。
 牛乳にはCaの他にたくさんのミネラルが含まれています。100gの牛乳中にはCa:110mg、K:150mg、P: 90mg、Mg: 10mg、Na: 41mgが含まれています。牛乳の中のどの無機イオンが作用しているかはわかりません。どれもが関係しているかもしれません。また、pHは大切な実験条件です。上記論文の研究者はアオギリの粘質物は、「非電解質高分子の様相を示す」とも言っていますので、この物質は水などに溶けてもイオンの状態にはならない(つまり電気を通さない)高分子のようです。もしCaがなんらかの働きで粘質物の物理的性質をかえるのならば、カキ殻、ホタテ殻のような材料でカルシウム粉末を作ってしらべてみるとという手もありますね。
あまりお役にたてなかったかもしれませんが、上記を参考にして、いろいろ試みてください。
勝見 允行(JSPPサイエンスアドバイザー)
回答日:2025-08-16