一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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くだものや枝豆が緑色の理由

質問者:   小学生   たまこ
登録番号6241   登録日:2025-08-13
果物の実(マスカット、メロン、キウイ)や枝豆の豆が
葉緑体を含んで緑色であることを自由研究で調べています

これらはなぜ光に当たらない場所なのに緑色のままなのでしょうか?

他の質問への答えも見たのですが、難しくて良く分かりませんでした。

よろしくおねがいします。
たまこ 様

日本植物生理学会 みんなのひろば 植物Q&Aに質問をお寄せくださり有難うございます。

夏休みの自由研究としてとりくんでおいでなのかもしれません。回答が遅れてごめんなさい。

果実やその中の種子が緑色をしているのはどうしてだろうか?という問題ですね。しかし、これらの場合、「光の当たらない場所」とはいっても真っ暗ではないです。たしかに、通常の葉よりは暗い場合が多いですけれども。

たとえば、キュウリも緑色ですね。キュウリでは、果実の呼吸で生じたCO2の大部分は果実の光合成によって「再」固定されるそうです。光合成のための工場である葉緑体などを作って維持するにはそれなりコストが必要です。しかし、コスト以上に稼ぎがある場合には、光を利用して光合成をする方が得です。また、光合成というと、二酸化炭素と水から糖やデンプンをつくり酸素を発生するという、原料と最終産物とを考えがちですが、葉緑体は、光合成以外のさまざまな代謝反応を駆動するエネルギーを供給できますし、そのさまざまな代謝の「もと」となるような物質を作っています。これらが役にたっているようです。

リンゴを切って眺めてみてください。芯のまわりの維管束が緑色をしているでしょう?これらは葉脈で行われているエネルギーを使った物質輸送に貢献しているようです。リンゴだけではなく多くの植物の維管束に葉緑体があります。また、樹木の樹皮にも緑色のものがありますし、茶色系統の薄い樹皮を剥くとその下が緑色のものもあります。このような緑の部分を対象とした、「葉の細胞以外で行われる光合成」についても多様な研究がなされています。しかし、どれだけ役にたつのか?ということを数値的にきちんと調べて議論するのは、今後の課題のようです。

暗いところで種子を発芽させると黄色い芽生えになります。これはヒントになりませんか?果実を真っ暗な状態で育ててみると面白いかもしれませんね。テープはべたべたして困るかもしれませんが、アルミ箔などで厳重に覆うことはできると思います。通気性は確保した方がよいでしょう。どうなるでしょうか? 

真っ暗な場所にあることが多い「根」の光合成については、小林康一先生が論文なども引用しながら回答してくださっています。登録番号6092です。5年生にはちょっと難しかったでしょうか?

今回の回答も、小林康一先生の書かれたものを参考にして書きました。

小林康一(2021)葉肉細胞以外で行われる光合成. 日本光合成学会編「光合成」3章 16-19ページ. 朝倉書店
寺島 一郎(JSPPサイエンスアドバイザー)
回答日:2025-08-21