一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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白い葉

質問者:   会社員   なおきち
登録番号6246   登録日:2025-08-22
はじめまして。質問させて頂きます。
ヤトロファ パラドクサJatropha paradoxaという植物を種から育てているのですが、現在発芽して1ヶ月程経ちます。
発芽した時の双葉は緑色だったのですが、以降成長に従って出てきた葉が真っ白で心配しています。
葉緑素が無く、光合成ができないのではないか、成長できずに枯れてしまうのではないかと思っています。
そこで質問なのですが、このような場合、本来であれば光合成で生成される糖を培地に組み込む、もしくは葉に散布することで成長を促し延命することは可能でしょうか。
やっとの思いで発芽まで至った品種なので、うまく育って欲しいと思い質問させて頂きました。ご返答よろしくお願い致します。
なおきち 様

みんなのひろば、植物「Q&A」に質問をお寄せくださりありがとうございます。

ヤトロファ パラドクサJatropha paradoxa。
初めて聞く植物名なのでネットで調べたところ、南米北部の乾燥地帯の多肉植物で、種子が1個2,000円以上、小さな植物は10,000円以上で売られている希少植物なんですね。それだけ栽培が難しいということでしょう。

今、どういう状態で育てているのかわかりませんが、原因は三つ考えられます。

1)肥料不足
寄生植物ではないので、無機物だけから生育に必要な有機物を自身で合成できるはずです(独立栄養)。肥料三要素である窒素、リン酸、カリウムが含まれている培養土を使っているのでしょうか。ゆっくり成長する多肉植物は肥料負けしやすいので、サボテン・多肉植物用の培養土を使うといいでしょう。最初は肥料が少ない方がいいと思うので、サボテン・多肉植物用の培養土と肥料無しの土(あるいは園芸用バーミキュライト)を、1:1~1:3で混ぜ、水やりは最小限にして様子を見てはいかがでしょうか(水をやりすぎると培養土中の肥料が溶け出し、肥料過多になってしまう)。市販の栄養液(ハイポネックス)を1/10000程度に薄めて与えるという方法もあります。
通常、子葉は、子葉内に貯蔵されていた栄養分を使って展開します。その後、新たに出てきた本葉が緑にならないのであれば、窒素不足です。ただ、葉が真っ白になるというのは奇妙です。窒素不足の場合、葉がまず淡緑色になり、徐々に、黄緑色、黄色になっていきます。肥料不足以外の要因を考える必要があります。
なお、糖を葉面散布しても、窒素がなければ葉緑素は合成されません(葉緑体自体が発達できない)。葉面散布するのであれば、3%程度のショ糖(砂糖)の水溶液(およそ10 mM)を絵筆で葉に塗ってみてください(塗りすぎないように)。

2)光強度の問題?
ふたつ目の原因として、光が強すぎることが考えられます。ただ、光が強すぎたとしても、葉が真っ白になるのは解せません。
逆に、光が弱すぎる可能性も考えられます。子葉が緑色だったのであれば、子葉の光合成で本葉を成長させるための有機物やエネルギーが供給されるはずです。子葉は微弱光でも緑色になりますが(光受容体フィトクロムが赤色光を感知)、子葉が光合成を行うのに充分な葉緑素を蓄積するには、光が弱すぎたのかもしれません。

3)種子の状態が悪かった
肥料、光強度に問題がなければ、種子が悪かったと考えるのが妥当でしょう。子葉の発達に充分な栄養分が貯蔵されていなかった、遺伝子に変異が生じて本葉を発達させられなかった等々、色々な理由が考えられます。本葉が真っ白であれば、遺伝子変異の可能性が高いと思います。

余談ですが、ネットでヤトロファ パラドクサの種子や植物体を販売しているサイトには、育て方はまったく載っていませんね。
論文を検索しても、自生地から採取したサンプルを使っているだけでした。ヤトロファ属の植物の育て方は、NHKの「みんなの趣味の園芸」が一番参考になりました(パラドクサ に関する記載はありませんでしたが) 。

ご期待に添える回答になったか甚だ疑問ですが、色々試してみてください。
宮尾 光恵(JSPPサイエンスアドバイザー)
回答日:2025-08-28