質問者:
教員
雷太
登録番号6251
登録日:2025-08-28
イチョウの幹の枝分かれの付け根に、大量の白い泡が洗剤の泡のように付き、大量のカナブンが集まると同時に、地面には、樹液らしきものが落ちており、その上、アブかハチが数匹死んでいます。これはいったい何でしょうか。匂いは銀杏の匂いがします。イチョウの幹に泡
雷太様
Q&Aコーナーへようこそ。歓迎いたします。
樹木を含めて植物体が泡を吹いたような状態が見たれるのは珍しいことではありません。泡が形成される場合は大きく分けて2つの原因があります。一つはアワフキムシによるものです。草本によく見られますが、樹木でもあります。この場合は昆虫の寄生による結果なので、泡の中に小さなアワフキムシがいます。確かめてみてください。もう一つは樹幹流(stem flow)と呼ばれる樹木の幹で観察されることに関わるものです。樹幹流は雨水が幹を伝わって樹下に流れ落ちる現象で、この雨水には樹皮に付着していた様々な物質、空気中の微粒子などなどが溶け込んでいます。
その結果、タンパク質など高分子のものが混じると、表面張力が低下して、泡立つようになります。樹幹流の場合は殆どは樹下に泡の塊ができます。しかし、写真によると中には幹の途中で泡ができる場合もあるようです。雷太様の場合は木の股(太い枝の分技基部)に泡があるとのことでので、この場合はその場所が樹幹流の一時的な停滞場所となって泡ができているのかもしれません。「樹幹流と泡」については本コーナーの登録番号2065(樹幹流と泡の関係について)を参照してください。ネット上で調べられても、いくつかの情報が得られます。また、樹幹流の成分など化化学的な分析は以下の文献を読んでください。(タイトルで検索)。因みに、いくつか調査した樹の種類の中でイチョウが一番目立つようです。
もう一つ、泡が樹幹流によるのでなく、樹液(sap, tree sap)による場合もあり得ます。樹液は体内の維管束組織(水分とそれに溶けている主としてミネラルを輸送する木部の道管と光合成産物などの有機物質をを輸送する師部の師管がある)を通って運ばれてくる栄養分を含んだ液体で、植物体が傷ついてたり、昆虫や動物に喰まれたりすると、組織から滲み出てきます。これは傷口を保護・修復するためだといわれています。
その樹液が表面張力を低下させるような物質をん含んでいたり、樹皮に付着する様々な微粒子が混じったりすると、何かの機械的力で泡立つこともあるようです。また、樹液は栄養リッチな液体なので、微生物が繁殖しやすく、その結果発生するCO2の圧力で樹液は泡となって噴き出すこともあります。ネット上に載せられた各種の写真をみると、コガネムシの他に、カブトムシ、クワガタムシ、蝶(ゴマダラチョウなど)も泡に集まるようです。
地表に落ちた泡の上で蜂やアブが死んでいたということですが、イチョウの樹液そのものには致死性の有毒成分は含まれていないようなので、これらの死んだ昆虫は、石鹸の泡の中で死んだ虫のように、物理的な理由で泡から脱出できなくなり、死んでしまったように思えますが、間違っているかもしれません。
結論として、ご質問の内容から判断して、おそらく樹液が泡立ったものだと推測いたします。
諌本 信義・森崎 澄江 「数種の樹種における樹幹流の化学的性状と季節変動」大分県、林試研報 12、1−44(1994)
Q&Aコーナーへようこそ。歓迎いたします。
樹木を含めて植物体が泡を吹いたような状態が見たれるのは珍しいことではありません。泡が形成される場合は大きく分けて2つの原因があります。一つはアワフキムシによるものです。草本によく見られますが、樹木でもあります。この場合は昆虫の寄生による結果なので、泡の中に小さなアワフキムシがいます。確かめてみてください。もう一つは樹幹流(stem flow)と呼ばれる樹木の幹で観察されることに関わるものです。樹幹流は雨水が幹を伝わって樹下に流れ落ちる現象で、この雨水には樹皮に付着していた様々な物質、空気中の微粒子などなどが溶け込んでいます。
その結果、タンパク質など高分子のものが混じると、表面張力が低下して、泡立つようになります。樹幹流の場合は殆どは樹下に泡の塊ができます。しかし、写真によると中には幹の途中で泡ができる場合もあるようです。雷太様の場合は木の股(太い枝の分技基部)に泡があるとのことでので、この場合はその場所が樹幹流の一時的な停滞場所となって泡ができているのかもしれません。「樹幹流と泡」については本コーナーの登録番号2065(樹幹流と泡の関係について)を参照してください。ネット上で調べられても、いくつかの情報が得られます。また、樹幹流の成分など化化学的な分析は以下の文献を読んでください。(タイトルで検索)。因みに、いくつか調査した樹の種類の中でイチョウが一番目立つようです。
もう一つ、泡が樹幹流によるのでなく、樹液(sap, tree sap)による場合もあり得ます。樹液は体内の維管束組織(水分とそれに溶けている主としてミネラルを輸送する木部の道管と光合成産物などの有機物質をを輸送する師部の師管がある)を通って運ばれてくる栄養分を含んだ液体で、植物体が傷ついてたり、昆虫や動物に喰まれたりすると、組織から滲み出てきます。これは傷口を保護・修復するためだといわれています。
その樹液が表面張力を低下させるような物質をん含んでいたり、樹皮に付着する様々な微粒子が混じったりすると、何かの機械的力で泡立つこともあるようです。また、樹液は栄養リッチな液体なので、微生物が繁殖しやすく、その結果発生するCO2の圧力で樹液は泡となって噴き出すこともあります。ネット上に載せられた各種の写真をみると、コガネムシの他に、カブトムシ、クワガタムシ、蝶(ゴマダラチョウなど)も泡に集まるようです。
地表に落ちた泡の上で蜂やアブが死んでいたということですが、イチョウの樹液そのものには致死性の有毒成分は含まれていないようなので、これらの死んだ昆虫は、石鹸の泡の中で死んだ虫のように、物理的な理由で泡から脱出できなくなり、死んでしまったように思えますが、間違っているかもしれません。
結論として、ご質問の内容から判断して、おそらく樹液が泡立ったものだと推測いたします。
諌本 信義・森崎 澄江 「数種の樹種における樹幹流の化学的性状と季節変動」大分県、林試研報 12、1−44(1994)
勝見 允行(JSPPサイエンスアドバイザー)
回答日:2025-09-08


