一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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ニオイスミレの花色について

質問者:   大学院生   照留セレン
登録番号6252   登録日:2025-08-30
8年ほど前に濃い紫色のニオイスミレの苗を購入し、育てていました。その株は枯れてしまいましたが、残っていた種が翌年発芽し、翌々年に藤色で花芯の周りだけが白い花が咲きました。それ以来、種を取りながら育て続けていますが、藤色の花しか咲かなくなりました。種は開放花・閉鎖花両方から取っています。
たまには別の色が出てもおかしくないと思ったのですが、毎年藤色ばかりなので、ニオイスミレの花色の遺伝の仕組みが気になりました。何が顕性で何が潜性なのでしょうか。
照留セレン様

Q&Aコーナーへご質問をいただきありがとうございます。

紫色のスミレの花の色は、アントシアニンです。
たとえばパンジーでは、ビオラニンという色素が含まれていることが随分昔から明らかにされています。
花の色の濃さや色合いは、アントシアニンの構造や含まれている量、さらには、アントシアニンが存在する細胞内顆粒である液胞の環境によっても左右されます。
基本的には遺伝情報によって制御されていますが、当該遺伝子の発現が、さまざまな要因によって抑えられたり、亢進することもあります。
有性生殖で得られた種子は、雌蕊と花粉の両親の遺伝子を半分づつもらっていますので、親とは異なる遺伝形質を持つことになります。
したがって、元の株と同じ色にならなかったことは、別段不思議ではないと思います。
また、その後、種子を採取して蒔いておられるようですが、何代かその中で交配が繰り返されると、遺伝情報は固定されて同じ色の花が咲くことになるかと思います。
園芸植物では違う形質がでてくると困りますから、固定化させてから種子は販売されていると思います。
しかし、野生種や、交配を人的に行っていない場合は、都度、遺伝子は雌蕊と花粉の両親からもらいうけ、都度、形質は変わるかとおもいます。
さらには、遺伝子には顕性と潜性があり、その組み合わせによって、現れる形質は決まります。
ただ、何が顕性で何が潜性かは、それぞれの植物で異なりますから、それこそ、きちんとした交配実験を行うなりしないと、判明しないと思います。

どの理由で、同じ藤色ばかりになったかは、私には判断がつきかねますが、花色を決定する要因、遺伝子はたくさんあることを、了解いただければと思います。

Q&Aコーナーの
登録番号4415, 4394も参考になさってください。
吉田 久美(JSPPサイエンスアドバイザー)
回答日:2025-10-07