一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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夏の化成肥料について

質問者:   一般   ビオラとねこ
登録番号6262   登録日:2025-09-25
夏に化成肥料を与えると根が傷む事について知りたいです。とくに鉢植えだと良くないと聞くのですが、それがなぜなのかわからないのです。
化成肥料と根の関係と即効性液肥との関係が知りたいです。
よろしくお願いいたします。
ビオラとねこ さま

みんなのひろば、植物Q&Aに質問をお寄せくださりありがとうございます。

市販されている化成肥料のほとんどが、粒状です。農業用のものは直径3-4mmで、機械で散布できるように粒の大きさが揃っています。家庭菜園や鉢植え用はもっと大粒の直径4-7mmで、必ずしも粒の大きさは揃っていません。両者ともに、肥料三要素である窒素、リン酸、カリウムに加え、多くの場合、苦土(マグネシウム)が含まれています。また、肥料を粒状にするため、粘結剤が添加されています。粒状にするのは、肥料から栄養素が急激に溶け出すのを抑えるためです。使用上の注意事項に、植物の根元から離れたところに置くように、とされています。これは、根の近くで化成肥料が急激に溶け出すと、局所的に土壌溶液の浸透圧が上がり、根が水分を吸えなくなるためです(肥料負け)。植物によっては、植え付けるときに肥料を与えます(元肥、基肥)。このときも、根に肥料が当たらないよう、土壌を深く掘って肥料を入れ、その上に土壌をかぶせます。鉢植えの場合は、土壌の下半分に肥料を入れます。これらは、できるだけ根を肥料の粒に近づけないための工夫です。

粒状の化成肥料から栄養素が溶解する速度は、温度が高くなると大きくなります。鉢植えの場合、直接日光が当たると鉢全体の温度がかなり上がります。真夏だと、鉢を触ると暖かく感じる位まで温度が上がります。その結果、栄養素の溶解が進み、肥料負けが起こりやすくなります。室内栽培の観葉植物のように、気温がそれほど上がらず、直射日光が当たらなければ、夏でも化成肥料が使えます。

速効性の液体肥料は、通常250~2000倍に希釈して植物に与えます。鉢植えの場合、大量に与えても、土壌に保持されなかった分は鉢から流れ出すので、根の周りの栄養素の濃度はそれほど高くなりません。(あまりお勧めできませんが)鉢から流れ出た肥料溶液を鉢置きに貯めたままでも、植物の吸水に伴って少しずつ吸われるだけなので、肥料負けは起こりにくいでしょう。ただし、液体肥料でも濃すぎると、当然植物は肥料負けします。使用濃度と使用頻度に気をつけることが重要です。
宮尾 光恵(JSPPサイエンスアドバイザー)
回答日:2025-10-13