一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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ツブラジイ(?)の不思議な葉っぱ

質問者:   小学生   はるくん
登録番号6277   登録日:2025-11-01
小学校一年生の子どもの授業の宿題で色々な葉っぱを観察するというものがありました。宿題に取り組む最中にとても不思議な葉っぱを見つけたので問い合わせさせていただきました。インターネットで調べてみると恐らくツブラジイの葉っぱだと思われるのですが、その中の一枚だけ不思議なものがありました。葉っぱが途中で二股に別れてハート型のようになっています。あまり見かけないと思ったのですが、よくあることでしょうか?
もしかすると奇形のようなものでしょうか?
はるくん 様

 興味深い質問、ありがとうございます。葉の形について専門的に研究されている京都産業大学の木村成介先生に回答をお願いしました。なお、小学生には難しいとは思いますが、YouTubeで”多葉性”(造語です)で検索すると、木村先生がご自身の研究について説明されている動画が見つかりますので、合わせて御覧いただければ幸いです。

【木村先生からの回答】

 お子さんがとても珍しい葉を見つけられましたね。とても幸運な発見だと思います。
 葉の形を見るかぎり、これは一枚の葉ができる途中で先端が二つに分かれてしまった奇形の一種と考えられます。このような形ができる理由を理解するために、まず葉がどのように作られるかを簡単に説明します。
 植物の茎(枝)の先端には、「茎頂分裂組織(けいちょうぶんれつそしき)」という部分があり、ここで新しい細胞がつくられ、茎が伸びていきます。葉は、その茎頂分裂組織のすぐ横の部分がふくらんで「葉原基(ようげんき)」という葉のもとができ、それが成長して大きくなることで作られます。成長の過程で葉原基はしだいに平らになり、やがて種ごとに特徴的な形の葉が出来上がります。
 今回のような葉の先が二つに分かれた形は、この葉原基の先端部分に、発生の途中で小さな傷が入り、そこから二つに分かれて成長したものだと考えられます。傷の原因ははっきりとはわかりませんが、たとえば風でこすれたり、小さな虫や鳥につつかれたりといった外的な要因によるものかもしれません。
 学術的に確定したわけではありませんが、四つ葉のクローバーも同じように、葉原基にできた傷が原因で生じるという説があり、似た現象といえるかもしれません。ちなみに、クローバーの葉は3枚あるように見えますが、実は3枚セットで1枚の「複葉(ふくよう)」であり、1つの葉原基からつくられます。
 ふつうは、葉原基が傷ついても自然に修復されたり、発生が止まってしまったりするため、変わった形の葉ができることはほとんどありません。今回のようにきれいに二股に分かれた葉ができるのは、発生のごく限られた時期に、偶然ちょうどよい加減の傷が入った場合だけと考えられます。私自身も、ここまで整った形の二股の樹木の葉はほとんど見たことがありません。とても貴重なものですので、押し葉標本などにしてぜひ保存しておかれるとよいでしょう。

 今回の発見をきっかけに、お子さんが植物の成り立ちや自然の不思議にさらに関心をもってくださることを願っています。
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木村 成介(京都産業大学)
JSPPサイエンスアドバイザー
長谷 あきら
回答日:2025-11-12